今年の総括。
現在パリ市立ジャックイベール音楽院/即興科で行っている、演劇芸術科との共同授業は、思っていたより凄かった!
このプロジェクトは始まりからして凄くて、ことの始めは我が音楽院の演劇科の先生と私の大喧嘩。
その後仲直りして、なんとお互いの分野で「即興」を追求していると知った私たちは、共同授業をするに至ります。
最初はほんと、始まっちゃったは良いけど、こんな知らない分野にどうアプローチしたら良いのかと、悩んでいたのは事実です。
自分は音楽の世界でこれまでどっぷり浸かって来た訳だけれど、(若い頃ダンスカンパニーで働かせていただいた貴重な体験をを除いて)、自分の全く知らない分野の著名なフランス俳優、エリック・フレー先生とその生徒たちが、最初は戸惑いつつも、何事にも囚われず非常に自由に表現するのを見て、ものすごく挑発されたし、脳の中が総入れ替わってしまうな思いの毎週火曜日。
あまりに面白いので、プロジェクトを2ヶ月延長。
エリック先生の開かれていて、また同時に自分に対して謙虚で、自信にあふれながら臨機応変な教え方も素晴らしいです。
芸術を教えるのって、本当に微妙なことですね。
音楽では、どうしても性質上技術主体になりがちだけれど、やはり芸術として、クリエーションとしての側面を教えることの、いかに大切かを思い知らされます。
音楽、詩の両面でのクラシックの金字塔のテクスト解釈に対し、私たちの感性を全開にした自由即興という鏡を通して、ゲーテ、シューベルト、シュトックハウゼンやドビュッシーといった歴代の芸術家がどれだけ時代を超えるクリエイティブな感性を持っていたのかを痛感させられます。
きっと、あの厳格なテクストを通して、彼らはここまで自由なイマジネーションを想定していたんですね。
テクストが厳格だからこそ、無限大に飛翔する自由。
それこそが私の考える新しいプロジェクト「インタープレテーション(解釈)とインプロヴィゼーション(即興)」。
言い換えると、アーチスト個人が厳密に規定した芸術から、どれだけの自由を他に与えられるのか。
今日は我が音楽院の「ジャズのアトリエ」のコンサートを聴かせていただいたのだけれど、ジャズを学ぶということに関しては、それは素晴らしい結果だった。しかし私自身はもう、イディオム内に留まって、それをなぞる事には興味がない、やっとそう言えるところまで来られたんだなと思った。長い道のりだった。
11月に「らるちぇにっつぁトリオ」としての活動を終了するという、苦渋の決断をせざるを得なかった時を経て、それが一番私の中で大きな進歩であり、驚異的なアコーディオン奏者ペーター・ラルチェフとの壮絶な演奏体験を経て、今はついに、クリエーションのために生きられるのだと。それを確認した今日が、今年の締めくくりとなりました。
始まりがあれば、終わりがある。
その節目に私たちは、悲しみや痛みを残して行くのでしょう。
年明けには、それを象徴するように、主催する自作自演「スパイラルメロディープロジェクト」のコンサートがパリと南仏タルブにて行われます。
らるちぇにっつぁトリオを経て大きく成長した「ウルクズノフ・デュオ」も年明け本格的に、フランスはトゥールーズ、タルブ、ベルギーのブリュッセルにて活動再開!
トリオで日本に行くという夢はついに叶いませんでしたが、私たちは日本万博基金の助成をいただけるという名誉に預かり、素晴らしいCDと録画の記録を残すことができました。
このトリオの音楽の軌跡は事実であり、本物であり、どのような影の卑怯な力を持っても、この美しい記録を消し去ることは出来ません。
私はペーターとアタナスと3年半やって来た仕事を、本当に誇りに思います。
らるちぇにっつぁトリオの演奏は、これからもYouTube上でお楽しみいただけます。
次はウルクズノフ・デュオとして日本に一年以内に行きたいと思います!もうなんやかやで、日本には5年も行ってないので。
また師匠ピエール・イヴ・アルトー主催の「フランス・フルートオーケストラ」の企画では、去年に引き続きカリブの大フルート奏者、マックス・シラさんに加え、オーストラリアの楽器ディジェリドゥ奏者、シルベストル・ソレイユさんを迎え、とんでもない編成のコンサートを2月に開催予定致します。
今回は私のスパイラルメンバー(ベースとパーカッション)や生徒たちも参加してくれるので、ますます面白くなりそう。それに、去年作曲、編曲上で失敗したと思われること、今修正に必死になっています。自分に聴こえている音楽を如何に他人に分かりやすく楽譜に書くかということ、私には本当に難しい。勉強の真っ只中です。
このコンサートで演奏される自曲の中から一曲「あなたはこの春を知らない」。YouTube上にUPしました。この曲は来年度イベール音楽院=ベルリオーズ音楽院混成の学生オーケストラで演奏される予定もあります!いよいよ本格的にオーケストレーションの勉強を始めなければ。
また、私事ですが、パリ市全域の「フルート科教授正規国家公務員試験」で、なんと一次試験通過7名のリストに残ることが出来ました。年明けの最終面接試験で1名のみが席を得られる狭き門ですが、他国出身の私が、多数の応募の中ここまで残れただけでも大変に光栄なことです!!
改めまして、これまで「らるちぇにっつぁトリオ」を応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
実り多い一年でした。来年色々な種から芽が出ることを祈って。