SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

カオスの中の真珠

2023-04-19 10:23:00 | Essay-コラム

昨年のマルティニーク島の偉大な伝統フルート奏者、マックス・シラさんに続き、今年の即興アトリエへの招待者は、フランスで飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍されているアーチストでミュージシャンでもある、シャルリ・オブリーさん。


フランスはトゥールーズの美大を出てから数年間というもの、まだ若いというのに彼のアートは大成功を収め、ローマのヴィラメディチ召喚に抜擢されるなど、多忙を極めている。


こういう人もいるんだねー。

前世で修行を積んだんだろうか。


先日は授業の最初に彼のアートと音楽を紹介していただく時間をとって貰った。


なんとも、彼は並外れて視点が大きいのだ。


アートとテクノロジーの融合する巨大なビー玉回路装置、ローマの道端に落ちているごみを拾い集めて創ったアート、わざとギターのネックを折って、テープで貼り付け、ワイパー運動で音を出させて壊れても音を奏つづける装置、テーブルの下に磁石をくっつけてテーブル上でスプーンが踊って音を出す音楽装置、、、子供たちは彼の作品にすぐに釘付けになった。



子供たちに自分のアートを紹介するシャルリさん



このような人のエネルギーに触れると、すーっと頭の中のモヤモヤが晴れて意識がクリアーになる。




子供たちは、老人たちの描いた絵を見せると早速やる気満々で即興し始めた。



老人ホームの人たちにインスパイアされて絵を描くグループ

しかしそれは、ちょっとめちゃくちゃで、とにかく音を各自の欲求で吹き散らしている、そんな印象の即興だった。しかも一人かなりワガママな子がいて、その子がめちゃくちゃに弾き散らすと、他の子も音楽ではなくエゴで応酬してしまうのだ。


騒然とした30分経過、そんなカオスの応酬のなかで、3人だけ全く参加出来ないでただ、聴いている子たちがいた。私は他の子たちに完全なサイレンスの指示を出し、その3人の前に絵を提示した。


するとここでミラクルが起こったんである。


この3人の即興の素晴らしかったこと!

まるでカオスの海から掬われた真珠のようにピュアだった。



本当に音楽って面白い、、、

私にとっても、いつも完全に予想外の展開となる。


その後の大きい子達のグループでは、一つ一つの絵の前でどういう印象かディスカッションさせ、そのアイデアから即興させてみた。


先週エゴの衝突で大クラッシュしたばかりの思春期の難しいこのグループが、なんと次々と素晴らしい音楽を奏でた。



シャルリさんも


「本当にあなたのアトリエと仕事ができて嬉しい。僕のいうことはもしかしてナイーブかも知れない。でも本当に時々フィリップ・グラスの音楽みたいに聴こえたんだ」


と、感動していた。


人間って音楽って本当に分からないものだ。

人の音の裏側に迫るのは並大抵の仕事じゃない。おしゃれな部屋でお茶を飲みながら好みの音楽を聴いているのとは違う。格闘あり、失望あり、ストレスあり、エゴの海あり、でも美しい真珠をこうやって産みだせるのであれば、本当に即興を続けていて良かった、と心から思う。


ゴミから宝物を拾い出す。


これこそシャルリさんのアートの真髄ではないのか?


それは彼のアートや人となりに触れることで私たちが気づいたことなのではないかと思う。


彼は人工知能などの「表面や既成の概念から判断する」ことに対して危惧を抱いてる、とも話していて、それは驚くことに、先日書いたばかりのブログ、続・音の裏にある存在~試験シーズン と完全にリンクしている。


このプロジェクトは第2回目、そして音楽院の近くの運河に停泊する前衛ライブハウス船にて、実際の彼の作品を囲んで屋外で即興する、6月の最終コンサートまで続きます。


お楽しみに!



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