ちあの散歩道

輝いてアラカンヌ☆ありがとうの言葉を添えて暮らしのドアをそっと開けると今日も豊かな感動と新しい気づきが待っています。

「我が谷は緑なりき」

2007年03月11日 | 映画・芝居・芸術など

映画「我が谷は緑なりき」をDVDで観ました。
1941年に作られたジョン・フォード監督作品で、同年のアカデミー賞受賞作品です。映画は白黒映画です。
イギリスのウエールズ地方の炭坑町が舞台となり、そこで働く炭坑夫とその家族、そして炭坑のある場所に建てられた教会に赴任してきた若い牧師が主人公です。

炭坑労働の過酷さ、賃金闘争、炭坑事故などを描きながらも、炭坑夫の重鎮で長老とも言えるモーガン一家の暮らしを通して家族のきずなの深さや人間模様が気高く描かれていて心を打ちます。人としての尊厳や気品が丁寧に描かれていて感動しました。モーガン家の7人兄姉の末息子ヒューを中心に、ヒューに寄せる父母の愛情の表し方など音楽で言えば上質なクラッシック音楽を聴いているようなそんな気分に駆り立ててくれました。
5人の兄の1人を炭坑事故で無くし、最後には父も落盤事故で命を落としますが、父を探しに坑内に入ったヒューが父を捜し当てたとき、動けなくなっていた父は一言まだ幼さを残す末息子に向かって「お前は立派だ」と声をかけ抱きかかえ、そのまま息を引き取りました。
また若き牧師とヒューの姉とのプラトニックな恋も心をときめかせてくれます。

白黒映画の良さを存分に生かしたような光の扱い方にも目を見張りました。
光によって輝く一面の水仙畑や山の木々、窓越しに射し込む光の窓の向こうにきらめく木々のさざめきなどどの場面も気の抜けない美しさが漂っていました。
イギリスの暮らしや家具に憧れを抱くわたしは、画面に映し出されるチェストや机、テーブル、ソファーや揺り椅子など、また窓に掛けられたアンティークレースの繊細な模様にもため息をつきながら見つめました。
イギリス紳士の象徴でもあるパイプやステッキ、また女性の長いワンピースの柄がペーズリー柄だったり、独特の縞模様だったり、また衿元に飾られた白いレースの衿などもうっとりするほど素敵でした。

賛美歌や聖歌など流れる音楽の心地よさにも心を奪われました。
日本の炭坑を描いたドキュメンタリー映画なども観ましたが、「我が谷は緑なりき」は当時の日本の上流階級をも上回るような家具や暖炉、ランプ、そしてレンガの家なども映画の中では美しく描かれていましたし、背景に映し出される台所道具なども垂涎もののピッチャーやマグカップなどがさりげなく配されていました。

ジョン・フォードの手によるとても美しくいい映画を観ることが出来てうれしい!とひとり悦に入りました。
ジョンフォードの「駅馬車」ももう一度、DVDで観たいなと思ったほどです。