渓流で逢いましょう 
フライフィッシングつれづれ日記
 





今年もイチイは赤い実を付けている


イチイは(オンコ)
子供のころからとっても身近だった

何処の家の庭にも一本はあって

子供のころよく摘んで食べていた。

後味が少しだけ苦いけど
甘くて素朴な味

かくれんぼの時にイチイの植え込みの陰に隠れているあいだ
食べていたことを思い出した。

イチイの種は有毒だそうで
でも薬にもなるそうで
毒にも薬にもならないの言い回しからすると
やっぱりイチイは良い樹木だなあ・・と一人納得

僕の父は無類のオンコ好きで(あえてオンコ)
庭中オンコだらけにしては剪定ばさみで枝を整えていた

もう10数年前の話だけど
父が知り合いのおばあさんから古いイチイの飯台を貰った
昔、(おそらく戦前戦後あたり)稲刈りが終わった後に
その年の収穫した新米を炊いて一年に一度だけ、そのイチイの飯台に乗せて
みんなに振る舞い、ソノ年の労をねぎらったと教えてくれた

イチイは今も昔も特別なものだったんだろうなあ・・

考えてみれば
僕が初めてランディングネットを作ったときに
そのグリップ材はイチイだった。
その頃から僕にとって身近な材だった。

父親も細工好きで、よくイチイでテーブルを作ったり
花台を作ったりしていたのでガレージに行くと端材があったからだ。

初めは何気なく使っていたイチイ
でも作り続けていくうちにその魅力にすっかり見せられていった。
エンジュ、黒檀、樺瘤、カリン、楓杢、、
素晴らしい材料に出会って尚更地味なイチイの魅力が見えてきた。
軽く、腐りにくく、適度な硬さと弾力、密な木目・・滑らかな手触り
さっくりとした刃物の掛かり方。

僕がフライフィッシングと出会ったのは次女が生まれた年
その子が今年1年生になったので
僕のフライ暦は丸7年ということになるのかな?
ランディングネットを作り始めたのはその年の秋の終わり
そう考えるとランディングネット製作暦も7年ということになるみたい。

7年も立っているのにやっぱりイチイに心惹かれている
というか
益々その魅力に取り付かれているみたい。

削りだして磨き上げていくうちに
段々とイチイの絹のような滑らかな手触りが指先から伝わってくる
ニスで隠すにはもったいなすぎるので
今ではイチイは基本的にオイルフィニッシュで仕上げることにしている
質感を損なわないためにイチイには最良の方法だと思う。



焼印を押すと、イチイのオイルが材の中から沸騰して湧き上がってくる。
1000年生きて、そして枯れて
板に挽いてからもう10年以上も経つのに
材の中にはイチイのエネルギーがこんなに詰まっているのかと改めて実感する
この油分がイチイを 生きて1000年枯れて1000年 と言わしめるチカラの源
おそらくランディングネットとして使うくらいでは
オイルフィニッシュすら必要ないかもしれない



思い切ってフレームの内側をルーターで削ってみた。
額縁の飾りのように角をつけてフレームに変化を付けてみたかったから。
角と陰影が欲しかった。

何日もかけて張り合わせて
ようやくココまでこぎつけたフレームの原石にトリミングするのは勇気が必要だった。
はぜて失敗したらその瞬間今までの苦労は水の泡
材料は元には戻らない
でも、イチイはちゃんと答えてくれた
気持ちよく、でもしっかりした手ごたえを感じさせてくれながら
シュルシュルと小気味よい音を立てて削れてくれた。

角はしっかり立って
削り口は綺麗に滑らかに仕上がった

イチイはいつも僕の期待を裏切らない

というより
イチイの奥深さに僕の拙い腕が救われているだけのことなんだけどね。








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