ここのところの暖気のおかげで 家の周りの雪も随分目減りした
駐車場の雪の表面は日差しの力で粗目になって脆くポロポロと崩れだした
冬の間何度も何度も降っては踏まれた雪は分厚い氷の板になっていても
とけた水は染みて大地に届いて氷と地面の間を走り、その間にほんの少しの隙間を作る
上を歩くとパカパカと鳴って、そうなっているのだと感じる事が出来る
そうなると、そろそろ氷割りの次期だ
あれほど頑固に大地にへばりついていた氷が氷割りでたたくだけで簡単に割れてはがれてくる
汗水たらして氷をたたき、春を早くに呼び寄せる
今日も暇を見つけては氷を割って隅に運んで、を繰り返していた
そんな事をしていると斜向いの娘さんが声をかけて来た
先日お母さんのお葬式に参列したのだが
そのお礼だとビニールぶくろに入った缶コーヒーとジュースを差し出された
斜向いのおじさんおばさんは長年雑貨店を営んで来たのだが
昨年おじさんが亡くなり、先日おばさんが後を追うように逝ってしまったので
住居を整理する中で、店の商品をご近所に配っているのだそうだ
ありがたく頂いて、氷割りを一旦止めて缶コーヒーのプルトップを引き上げた。
お向かいの洋裁屋のおじさんおばさん 卵やのおばちゃん お肉やのおじさん
鉄工所のおじさんもおばさんも ラーメン屋のおじさんも 酒屋のおばちゃん
文房具屋のおばちゃん、おもちゃやのおばちゃんも
改めて思えば子供の頃迷惑かけたご近所の大人達は随分亡くなってしまった
この町に生まれて生きて来たのだから当たり前と言えば当たり前だけど
改めて思えば なんとなく寂しい気持ちになってしまった
人は生まれて生きて やがて老いて死んでいくものだ
生まれるという事はそれと同時に死ぬ事を約束されたという事
自分もそうやって入れ替わり立ち替わりの道中
親は老いて子供達は日々成長してる
平均寿命から言えばそろそろ真ん中、少し出た辺りかな。
出来れば子供達がちゃんと成長するまでは、何とか何とか生きていたいものだ
年の近い知人が大病で余命幾ばくも無いと聞かされて 人ごととは思えなかった
来年もちゃんと冬を越して、こうやって氷割りに汗を流さねばと
お向かいさんから頂いた缶コーヒーの甘さに誓う中年男の昼下がり。
津波から逃げて過ごした一夜。
あれから一年
僕らは今日も生きている。
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