夏に似合う音楽をかけたくなるのは必ずしも盛夏とは限らない。
今日のように気持ちよく車の窓を開けて走れるようになった頃が一番聴きたくなる季節だ。
それにしてもなぜボサノヴァはこれほどまでに夏を感じさせるのだろう。
潮騒のようなリズムだからだろうか。はたまた吹き抜ける風のようなメロディだからだろうか。
今日はそんなことを意識しながらこのアルバムを聴いた。
最初の曲はボサノヴァの大定番「イパネマの娘」である。
曲を書いたのはもちろんアントニオ・カルロス・ジョビン。
ここでのテンポはちょっと早めだ。メロディラインはジャック・マーシャルによる爽やかな口笛で綴られており、そこにローリンド・アルメイダが弾くナイロン弦のギターと、カツンカツンと響くパーカッションがいかにも夏らしいリズムを醸し出している。
この他にも「黒いオルフェ」や「クワイエット・ナイツ・クワイエット・スターズ」といったボサノヴァの定番曲が納められているが、そこには口笛の代わりにフルートやハーモニカが使われており、アルバムを通しても一貫性が感じられる。
但しボサノヴァのアルバムで一番有名であろう「ゲッツ/ジルベルト」と比べると、全体にはやや軽めである。ここが好き嫌いの分かれ道になるかもしれない。
ボサノヴァにギターはつきものである。演奏スタイルとしては決してストロークせず、基本的には親指と残り3本の指とで交互にリズムを取りながら弾いていくフィンガー・ピッキングが中心だ。
この単純な繰り返しによってワールドワイドな音楽スタイルが生み出されたのだ。
ローリンド・アルメイダは1917年ブラジルのサンパウロ生まれということだから、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの先輩に当たる。
彼はL・A・フォアのメンバーとしてもジャズ界にも君臨したが、元々はクラシック・ギターの名手でもあり、ジャンルを超えた活躍の結果、グラミー賞を何と10回、アカデミー賞も1回受賞した巨人である。また作・編曲家としても有名だ。
このアルバムはそんな彼が後輩の作り出したボサノヴァを極々早い時期に取り上げ、一大ブームになるきっかけの一つになった記念すべき作品なのだ。
よし、連休はこれを聴きながら海岸線をドライヴするぞ!