SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

WALTER LANG 「Smile(The Music of Charlie Chaplin)」

2008年04月03日 | Piano/keyboard

全曲チャップリンの曲で占められたアルバムというのも数少ない。
どの曲にもウォルター・ラングのチャップリンに対する敬愛の念が感じられる。心静かにじっくり聴きたいピアノトリオである。

このアルバムは名作モダンタイムスの主題歌であった「Smile」で始まる。
ライムライトと並んでおそらくチャップリンの曲では最も有名なナンバーだろう。優しく誰にもわかりやすいメロディである。
囁くようなイントロからテーマを経てアドリヴに入ると鍵盤の上をラングの指が踊り跳ねていく。この軽いピアノタッチがとても心地いい。またリック・ホランダーのブラシも利いている。
この曲を聴いているとゆったりと時が流れるのを楽しめる。この感覚がピアノトリオの一番美味しい部分だと思う。

このアルバムは全10曲で構成されているが、どの曲も実に美しく切ないメロディラインを持っている。この琴線に触れる優しさに、改めてチャーリー・チャップリンという人の偉大さを感じるのである。天才とは彼のような人を差す言葉なのだ。
彼は私たちの心の奥底に秘めた真の喜びや哀しみを引き出してくれる。彼の曲にはそんな力があるのだと思う。
ウォルター・ラングはその力を最大限に生かしてメロディを奏でていく。
そういう意味でこの作品はどこにでもあるような映画音楽集ではない。立派な作曲家の作品集という位置づけが相応しいと思うのである。

ライムライトのテーマがニコラス・タイズ(b)の弾くアルコで響き渡る。ぱぁっと広がる暖かい夢世界。
人はこんなに優しくなれるのかと思ってしまう。癒される一枚だ。