SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

RAY BRYANT 「LITTLE SUSIE」

2008年04月11日 | Piano/keyboard

レイ・ブライアントはリスナーの掴みがいい人だ。
有名な「Ray Bryant Trio」も、1曲目の「Golden Earrings」でリスナーを虜にする。
このアルバムも1曲目の「LITTLE SUSIE」から彼の独壇場だ。
これだけウキウキするブギウギ調の曲を何の違和感もなく弾けるのは、ジャズ界広しといえど彼だけではないかと思ってしまう。
私たちはこの明快さ・ノリの良さで一気に引き込まれてしまうのだ。
この曲は途中から絶妙なタイミングで手拍子が入ってくる。これがまた何ともいえず快感だ。
クレジットには載っていないが叩いているのはどうやらボビー・ティモンズらしい。さすがにファンキーの権化、ツボを押さえた演奏へのスマートな関与である。

レイ・ブライアントは人なつっこい性格だと思う。
来日数も非常に多い人で私も何度かステージを観たことがあるが、彼は常にサービス精神旺盛で観客をどうしたら喜ばせることができるかに気を配るタイプの人だ。
そんな彼も最近はめっきり歳をとってしまって歩く姿もぎこちないが、それがむしろ愛嬌となって親近感を覚えさせる。全盛期の頃の彼を知らなくても、ステージでそんな彼を見てファンになる若い人もいるだろう。
その存在感は現役で活躍する残り少ない大物の一人であることを実感させる。

彼の演奏はいい意味で大衆的だ。
彼はメロディアスでわかりやすく肩肘張らない雰囲気づくりを得意とする。ブルース・テクニックもかなりのものだ。
72年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでオスカー・ピーターソンの代役に選ばれたこともそうした意味で極々自然なことだったのだと思う。なかなかオスカー・ピーターソンの代役をはれる人なんていないはずだ。
そんな中、彼はたった一人ステージの上でピアノに向き合って魂のこもった演奏を繰り広げた。
観客は拍手喝采。
これがレイ・ブライアントの底力である。