ジャケットに問題があると思う。
どういう意味で問題があるかといえば、中身のほのぼのした優しさや楽しさを全く伝えきれていないからだ。
このジャケットだけ見たら、もっとシリアスでハードボイルドな演奏を連想してしまう。
それもそのはず、ここに写っているジミー・ネッパーという人は見るからに怖い。写真が暗い上にモノクロだから余計にその怖さが強調されてしまう。
せめてタバコなんかくわえてなけりゃいいのにと思う。
これじゃあ、「とにかくいいから聴いてみて」と初めての人には差し出しにくい。残念至極である。
先日私の家でジャズを聴く会を催した。
何のことはない、ジャズが好きな人が集まって持ち寄ったCDなどを聴きながら飲むという単純な会である。
その中の一人が「トロンボーンには興味がないなぁ」と呟いた。
この人はもっぱらサックスかピアノトリオ専門のようだ。彼にいわせると「トロンボーンのモコモコした感じの音が野暮ったい」ということらしい。
何となくわかる気もするが、ここは反論しなければ気が済まない。
しばらく数人ですったもんだの議論が続いたが、よくよく彼の話を聞いてみるとトロンボーンに関してはどうやら食わず嫌いだということがわかった。
とはいっても一度嫌いになったものは理屈で簡単に回復は出来そうにない。彼のイメージを払拭させるためにもここはいいものを聴かせるに限る。
で、考えたあげく取り出したのがこのアルバムである。
1曲目から順に聴いていって4曲目の「HOW HIGH THE MOON」あたりで彼の様子が変わってきた。知っているメロディが出てくるとやはり嬉しいらしい。但しここではアルトのジーン・クイルやピアノのビル・エヴァンスのソロに惹かれていたようだ。
続く5曲目の「GEE BABY AIN’T I GOOD TO YOU」。
優しいトロンボーンの音色が部屋中に充満する。そしてジーン・ローランド(tp)の意表を突くヴォーカルが登場すると「お、いいね~!」ときた。その後の各プレイヤーのソロも見事に決まっていることに全員拍手喝采。
ヴォーカルに反応するとは予想外だったが、結果的にはうまくいったわけだ。
それ以後私も調子に乗ってヴィック・ディッケンソンなどをかけてみたが、こちらは残念ながら空振りだった。
「こういう古くさいのも、たまに聴くにはいいけどねぇ~」だそうだ。
う~む、今度は中間派のよさをわかる人とじっくり飲みたいものだ。