SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

LEM WINCHESTER 「ANOTHER OPUS」

2008年04月14日 | Violin/Vibes/Harp

アナザー・オパスとはなかなか思い切ったタイトルだと思う。
というのも、ジャズファンならおそらくほとんどの人が知っているであろうミルト・ジャクソンの傑作「オパス・デ・ジャズ」の向こうを張ったタイトルだからだ。
ヴァイヴ奏者にとってミルト・ジャクソンの存在は計り知れないものがあるようだ。
いわば目の前にそびえ立つ大きな壁のような存在である。
モダンジャズの中でこれほどまでに一つの楽器の代名詞になった人はいないだろう。ヴァイヴといえばミルト・ジャクソンといっても過言ではないくらいのビッグネームなのだ。
もちろん私がこのブログでご紹介した中にもヴィクター・フェルドマンやデイヴ・パイク、カル・ジェイダー、ゲイリー・バートンなどいいヴァイヴ奏者はたくさんいる。しかしその影響力からいってもミルト・ジャクソンには残念ながらかなう人がいない。好き嫌いはともかくだ。
そうしたことを悟ったか、彼らの多くはミルト・ジャクソンとの真っ向勝負を避けてきた。否、いい方が悪かったかもしれない、それぞれがミルトとは違うスタイルを取って生き残ったのだ。
但し、このレム・ウィンチェスターだけは違った。このアルバムで真正面からミルトに挑戦したのである。
それはこのアルバムのメンバー構成を見てもわかる。
ピアノにハンク・ジョーンズ、フルートにフランク・ウェス、ベースにエディ・ジョーンズ。この3人は「オパス・デ・ジャズ」の時のメンバーである(ドラムスだけがケニー・クラークからガス・ジョンソンに替わっている)。
これを見ただけでもレム・ウィンチェスターがいかにミルトを意識していたかがわかろうというものだし、彼の自信もかいま見られて面白い。
結果はどうだったろう。
フルートとヴァイヴの相性の良さはミルトが生み出した功績だったろうが、私はここでのレム・ウィンチェスターが叩き出す硬めのヴァイヴも、適度な緊張感がありとてもいい出来だと思っている。少なくとも大きな壁にぶち当たって跳ね返されたとは思えない見事な演奏だ。

彼はロシアン・ルーレットで死んだというのも有名な話である。
正に若気の至り。惜しいことをしたものだ。