これもジャケットで損をしているアルバムだ。
なぜ藪の中に椅子を持ち込んで、そこでポーズをとる必要があるのかわからない。リバーサイドは時々こういう致命的なミスをする。中身を聴いてみればわかることだが、この作品はジャケットさえ良ければもっともっと売れたはずだし、大名盤としてジャズ史上に燦然と輝いたはずである。返す返すも残念だ。
しかしジョニー・グリフィンという人は、もともとそうした星回りにある人なのかもしれない。彼のファンには申し訳ないが、何となくツキがない、或いは幸薄いといった印象がつきまとう人なのだ。
その分、応援したくなるテナーマンの筆頭に彼がいることには間違いない。
それはなぜか。
とにかくまじめで一生懸命なのである。身体全体からパワーを絞り出して精一杯ブローするタイプだ。
生き方だってヨーロッパに逃避行したデクスター・ゴードンと同じ。要に思い切りがいいのだ。
さてこのアルバムだが、最初から最後までリラックスした好演が続いている。
有名な「Hush-a-bye」もいいが、「Black is the color of my true love's hair」や「The londonderry air」などのバラードは絶品だ。
このアルバムがいいのはリズム・セクションの出来がいいからともいえる。
当時リバーサイドのお抱えだったバリー・ハリスの軽快なピアノと、これがほんとにロン・カーターかと思えるような強靱なベースは実に見事である。周りがこれだけいいサポートをしてくれたら、ジョニー・グリフィンだって本気になって当然だ。
ジャケットの裏を見ると、ジャケットデザインはKEN DEARDOFF、写真はSTEVE SCHAPIROとある。
彼らがなぜ本気にならなかったか、それだけが不思議なのだ。