SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

TERRY MOREL 「Songs of a Woman in Love」

2007年07月08日 | Vocal

いかにもベツレヘムのヴォーカル盤といえる内容だ。
何がベツレヘムらしいかというとこのレーベルの看板娘であったクリス・コナーによく似ているからだ。
伴奏も私の大好きなラルフ・シャロントリオが務めている。
このアルバムは、クラブ・モントクレアでのライヴ録音であるが、よく聴いていると会場内に熱狂的なファンがいることに気がつく。それほど大きなステージではないので拍手の数も数えられる程度だが、その中に一生懸命拍手する人間がいる。ひょっとするとクラブの人なのかもしれないが、ここは熱狂的なファンだと思いたい。
懸命に拍手する彼の気持ちはよくわかる。
テリー・モレルの歌声はさりげなく思わせぶりで、どことなく投げやりだ。この一見距離を置いたようなスタンスがたまらない魅力になって観客を虜にしているのだ。
またラルフ・シャロンのピアノが相変わらずいい。歌伴をやらせたらおそらく彼の右に出る者はいないだろうと思う。決して自己主張をせず、小気味のいいフレーズを転がる指で弾き流す。これは明らかに職人芸である。
バックにはもう一人、フルートのハービー・マンがいる。
彼もまたベツレヘムの代名詞のような人だが、シャロンのピアノややや重いモレルの歌声にジャストフィットしている。彼のバッキングのうまさも特筆したい。

テリー・モレルは知る人ぞ知るという存在だ。ヴォーカリストとしては短命に終わった人だからそれも頷ける。
但し売れなかかったために身を引いたのではなく、おそらく一身上の都合で舞台裏から消えた人なのだと思う。
その後の消息は知らない。
タイトル通りに、「恋する女の歌」をさらりと歌って消えたあたりが、いかにも彼女らしいともいえる。そんな歌声なのだ。