SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ART PEPPER 「the art of pepper」

2007年07月05日 | Alto Saxophone

ひどいジャケットだ。だが中身は極上、長年の愛聴盤である。
この当時(50年代中期)のアート・ペッパーはどの作品でも輝いているが、これはその中でも群を抜いている。
彼の代表作といわれる「モダン・アート」や「ミーツ・ザ・リズム・セクション」よりも、個人的にはこの作品の方が好きだ。
特にここに収録されている「BEGIN THE BEGUINE」や「SUMMER TIME」は、多くのジャズマンの演奏と比べても1,2を争う出来だと思う。嘘だと思ったら聴いてみるといい。決して大袈裟な話ではないのだ。
彼のどこがいいかを言葉で説明するのは難しい。
もう天才的なひらめきの連続であるアドリヴ展開にはまったく隙がない。高いところから低いところへ流れ落ちたかと思うと、時々魚が跳ねるようにジャンプする。この見事なイントネーションが彼一番の持ち味である。
このアルバムではそんな彼のアルトが全編において堪能できる。これを聴かずしてペッパーのことは語れないといっていい。

もう一人忘れてはいけない存在がいる。カール・パーキンスである。
わずか1枚しかリーダー作を残さずに亡くなった彼のベストプレイがここに収録されている。
リズムに乗って飛び跳ねる彼の強靱な指先は、リアルな録音にも助けられて一層たくましさを感じる。
ペッパーを相手に一歩もひけをとらない彼の堂々としたピアノを聴くにつれ、もっともっと聴きたかったという思いが一層強くなってくる。
この2人の天才が私たちにウエストコーストジャズの楽しさ、明るさ、自由さを教えてくれた。
私はこんな彼らに出会えたことをいつまでも幸せに思うだろう。