SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

SPIKE ROBINSON 「Spring can really.....」

2007年05月26日 | Tenor Saxophone

スパイク・ロビンソン。ジャズ通を唸らせる渋くも暖かみのあるテナーマンだ。
日本での知名度は低いが、個人的にもっと多くの人に聴いてもらいたい筆頭格だと思っている。
ただ最近惜しくも亡くなってしまった。ここに収録されている「SHADOW OF YOUR SMILE」などを聴いていると、もう涙がこみ上げてきそうだ。もうこの音色が聴けないかと思うと本当に残念で仕方がない。
彼のテナーはズート・シムズをさらに軽快にした感じだというとわかってもらえるかもしれない。音にも艶があってしっとりとした趣がある。つまり音色で聴かせるタイプなのだ。

このアルバムは85年、イギリス国内におけるライヴを収録したものだ。
拍手を聞く限り会場はそれほど広くない。聴衆との距離が近い分だけ感情も伝わりやすい環境だ。
最初からじっくり聴いてみる。
出だしはまだ少し硬い。空気の出し入れにサックスそのものが馴染んでいないからかもしれない。
ただ5曲目の「LOVER COME BACK TO ME」のあたりから彼本来の音色が出てくる。それまでの音が伸びずにスッと消えてしまう感じがなくなる。テナーが暖まってきた証拠だ。そうなってくるともう彼の独壇場だ。周囲の空気まで柔らかく変化させるこんな美しいテナーを、あなたは聴いたことがあるだろうか。
とろけるようなメロディーラインに甘さをこらえて吹き続ける。それがスパイク・ロビンソンという男だ。
私はどんなことがあっても彼を忘れない。