SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

HAROLD MABERN TRIO 「DON'T KNOW WHY」

2007年05月23日 | Piano/keyboard

ハロルド・メイバーンは熱い。
私の場合ピアノトリオというと、ゆったりしたい時、癒されたい時などに聴くことが多い。しかし彼が奏でる音は人とちょっと違う。まるでホーン・アンサンブルを聴いているかのような分厚さだ。よって彼のアルバムを聴く時は気合いを入れ直したい時となる。

彼の演奏を季節に例えると真夏だ。カーッと照りつける太陽の下、ちょっと湿った生暖かい風が勢い良く吹いている。彼の演奏を聴いているとついついそんな情景を連想してしまう。
それもそのはずハロルド・メイバーンといえば、ハンク・モブレーの大ヒット作「ディッピン」の「リカード・ボサノヴァ」が有名である。夏の代名詞のような曲だ。一頃はどこに行ってもこの曲が流れていた。今だって夏になればきっとどこかで流れているはずだ。この曲を聴いて燃えない人を私は信用しない。
そういえば前作「キス・オブ・ファイヤー」の出来も上々だった。
彼が育てたといっても過言ではないエリック・アレキサンダーと一緒に、またひと味違った夏の情景を創り出してくれた。やっぱり夏はこれくらい情熱的なのがいい。
今回のアルバムではエリック・アレキサンダーの分も一人で大ハッスルしている。
ラストの「マイ・シャイニング・アワー」を聴いてほしい。ナット・リーヴスのベースもジョー・ファンズワースのドラムスも懸命になってメイバーンに食らいついていく。正に3人の汗がほとばしるようだ。

最近は北欧トリオなどの冷静沈着な演奏を聴くことが多いが、「どっこい、歳はとっても情熱だけは若いもんに負けねぇぜ」といわんばかりのこのピアノタッチ、まだ青いへなちょこピアニストには出せるはずもない音と執念だ。