SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ERIC ALEXANDER 「Gentle Ballads」

2007年05月11日 | Tenor Saxophone

エリック・アレキサンダーはなぜこんなに人気があるのか。
その答えは簡単、音が他のテナー奏者より何倍も太いからだ。
テナーだから太いのは当たり前と思うかもしれないが、テナーでも細い音を出す奏者はいくらでもいる。その代表選手がジョン・コルトレーンだ。彼はテナーなのにアルトのような吹き方をする。つまり高音域を中心に鳴らすからシーツ・オブ・サウンドのようなハイスピードなテクニックが生まれるわけだ。トリッキーなトーンにしてもそのほとんどが高音域での変化であり、フリージャズは細い音が生んだ音楽シーンだともいえる。
その点、このエリック・アレキサンダーはめちゃくちゃ重厚だ。テナーらしいブワッ~~!とくる音に誰もが魅力を感じているのである。しかもその音はいつもしっとりしていて弾力性のあることが特徴だ。

このアルバムは往年の名曲を中心に集めたバラード集になっている。
レフト・アローンにハーレム・ノクターン...もうその曲名を聞くだけでファンなら飛びつくだろう。私個人的には1曲目の「The midnight sun will never set」が大本命である。
コルトレーンも「バラード」という名盤を持っているが、このアルバムを聴くと、エリック・アレキサンダーもバラードの名手であると断言できる。伸びのある太く優しい音が、強弱・緩急を交えて私たちの心の中に入り込んでくる。
ちょっとムーディすぎるというご意見もあるだろうが、こんなに気持ちよく酔えるアルバムも少ないのではないだろうか。
これは紛れもなく現時点で彼の最高傑作だ。