ピーター・アースキンにアラン・パスクァとくればもう何が何でも買いだ。
この二人と私の相性がいいのだ。
ただこの取り合わせによるアルバムを友人に聴かせると、たいてい「どこがいいの?」とくる。
がっかりする気持ちと共に、そんな簡単にわかるはずがない、わかってもらっては困る、という気持ちもある。
で、なぜわからないのかを自分なりに考えてみた。
まず二人の知名度の低いことが挙げられる。ピーター・アースキンを紹介する時は、「ウェザーリポートのドラマーだった人だよ」というのが日課になってしまった。「ウェザーリポートって何?」っていう人には処置の施しようがない。「とにかくベテランのドラマーだよ」と言い放つのみ。
アラン・パスクァはピーター・アースキンより説明が難しい。アラン・ホールズワースと組んでいた人だといっても誰も反応しない。「そういえば寺井尚子のバックでもピアノを弾いていたなぁ」なんていうと、10人に1人くらいは反応してくれる。こちらも最後には「とにかくベテランのピアニストなんです」というしかない。
ほとんどの人はこの段階で真剣に「聴きたい」「聴いてみよう」というモチベーションがダウンする。
次に選曲である。この「Badlands」もほとんどが彼らのオリジナルで占められている。曲はもちろん悪くない。但しこのように聴いたことがない曲ばかり並べられては、初めての人にとって判断材料が乏しくなる一方である。要するに他の人と比べていいとか悪いとかの判定が下せないのだ。
だから結果的に「どこがいいの?」となる。
しかしこのアルバムにはラストの1曲に誰でも知っているスタンダードがあった。「You And The Night And The Music(邦題:あなたと夜と音楽と)」である。ここにきて初めて聴く人の反応が現れた。
「ちょっといいかもね、この人たち」