ぶらっとJAPAN

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『夏に入る』 ~東山魁夷をめぐる旅 7~

2015-07-08 19:32:42 | 東山魁夷

 月は変わりましたけれども、楽しいのでこれからも不定期に「東山魁夷をめぐる旅」はアップしていきたいと思います。本日は京都を離れて、千葉県市川市から『東山魁夷記念館』のご紹介です。

「私の戦後の代表作はすべて市川の水で描かれています」という言葉どおり、戦後すぐ市川に移り住んだ画伯は、その後、逝去するまでの50年あまりを市川市で過ごしました。この記念館は2015年11月に魁夷画伯の住居傍に開館し、今年は10周年を記念して、さまざまな特別展が開かれています。

 ご覧の通り、画伯が描いたドイツの家を思わせる瀟洒な建物で、人気の高い白馬をモチーフにしたペナントが飾られています。

 作品だけでなく、書籍や、使用していた岩絵の具が展示されていたりして、画伯の人となりを知ることができるところです。グラデーションでずらりと並ぶ緑や青色の絵の具の展示は壮観です。作品はリトグラフが多いですが、『道』の試作が多数所蔵されており、あの構図に至るまでの画伯の道のりが見えてとても興味深いです。

 けれど、この記念館の目玉(と私が勝手に思っているだけですが)は、なんといっても『夏に入る』でしょう。山崎や京都を取材して描かれたという同作品は、竹のみずみずしさと盛夏を思わせる力強さに満ちています。

夏に入る

『夏に入る』88.6×129.6㎝(東山記念館サイトより転載)

 実際の写真だと、こんな感じでしょうか。これは、先日ご紹介した祇王寺で撮ったものです。白っぽくみえるのは竹が含む水分でしょうか。生きてるって感じがしますね。

『夏に入る』は明確に何処と限定して描かれた作品ではありません。たとえば、この祇王寺も、大河内山荘近くの竹の道も、すべてのエッセンスが『夏に入る』に籠められている気がします。ひと言で言えば「旺盛な生命力」でしょうか。左端に見える一本だけのタケノコもかわいらしいですね。

 印刷物で見た時は、それほど印象に残らなかったんですが、ここで本物を見た時にその迫力に圧倒されました。それ以来、お気に入りの一枚です。夏の初めには必ず見たくなります。

 ここの学芸員の方は、ホントによく画伯の作品を研究されていて、以前、ここで『道』に関するセミナーを受けましたが、さまざまな事実と突き合わせながら、画伯が自著のなかで巧妙に虚構を語っていることを突き止める、という大変興味深いものでした。

 魁夷ファンなら一度は訪れたいところです。

 

 

 

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