木原誠二『英国大蔵省から見た日本』文春新書2002年

本書には、大蔵官僚であった著者が4年間の英国生活での経験をベースに、日本について考えたことが書かれている(P.16)。読みはじめは、随筆、あるいは、紀行文の乗りの本、と思いつつ読み進んだところ、読み応えのある第3章に出会った。

第3章で取り上げているのは、「英国の政治制度、行政制度の裏側にあってそれらを支えている考え方や理念」(p.141)。

日本と英国は同じように議院内閣制をとっているとばかり観念的に思い込んでいたが、第3章を読むと、両者が似て非なるものであることが具体的に分かる。

さらに、「英国において、『税』のもつ重みは、所得税、法人税などの基本的税制が恒久税ではなく、毎年必ず法案を提出して国会の承認を受けなければならない単年度税制(中略)であることにも現れており、議会では、歳出に対する統制は弱く、論戦も非常に少ない一方、歳入については厳しい論戦が戦わされ、強いチェック機能が働いている」(p.171)との記述は、英国議会の発生の歴史を思わざるを得ない。

ところで、通常「議院内閣制」と表記されている言葉が、本書第3章では、「議員内閣制」となっているが、著者は意図して書いているのであろうか、疑問が残った。

なお、著者は2005年9月の総選挙で当選し、現在は衆議院議員である。
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