徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
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Airport Marking (2) - ILS Critical Area

ILS Critical Area - an area provided in order to protect the signals of the localizer and glideslope.


 何事も“不完全燃焼”はよろしくありません。

先日、 Runway Incursion なる投稿をし、そこで Runway Marking に関するクイズを出題しました。

お得意様でいらっしゃる「 Wich 」さんは、全問正解でございましたが、正解を得るために、某ゲームで 伊丹の誘導路を何回か走り回って下さった とのことで、大変恐縮いたしております。

正解の解説をお願いされてしまいましたので、無謀にも第一段として

 - Airport Marking (1) - Runway Hold Sign

を投稿いたしました。

今回は、第二段であります。

折りしも、「 Wich 」さんにも

 > 問2、がまだ不完全燃焼です・・・。

とのお叱りを受けておりますので....。

『第57回、地上走行知識リフレッシュ・クイズ!!』

【第2問】
 この路面のペイント、どんな意味?


A.Runway Protected Area からの出口境界を示している
B.ILS Critical Area の境界を示している
C.航空機進入禁止領域を示している
の正解は B. でした。

おそらくは、AとBとが紛らわしかったのかと思います。
(であれば、出題者の意図通り)

A.の「 Runway Protected Area 」は間違いを誘う“罠”であり、正確にはそのような言葉はありません。

「 Runway Protected 」ときたら、続く言葉は「 Zone 」になります( RPZ: Runway Protected Zone )。
([補足]この RPZ を構成する一つの要素として、Runway OFA: Object Free Area があります。)

「 Runway ~ Area 」ときたら、間に入る言葉は「 Safety 」です( RSA: Runway Safety Area )。

この段階で、正解の“ ILS Critical Area ”の他に、新たに“ RPZ: Runway Protected Zone ”と “ RSA: Runway Safety Area ”が登場してしまいました。

簡単にそれぞれについての定義をまとめてみました。

1)RSA: Runway Safety Area

 滑走路中心線を基準にして、以下の図に示すような領域のことを指します。

RSA


ここで、Length, Width は Aircraft Approach Category(最大着陸重量 + Landing Configuration における失速速度の1.3倍でA~Eの5段階に区分)と AIRPLANE DESIGN GROUP(航空機の翼幅 Wing Span とお尻の高さ Tail Height でⅠ~Ⅵの6段階に区分)により定められます。かなり乱暴ですが、「滑走路の幅」を一つの目安にしても良いでしょう。

先ず Width ですが、

 FAA Advisory Circular 150/5300-13 AIRPORT DESIGN の規則では、Aircraft Approach Category C & D で AIRPLANE DESIGN GROUP VI の60m幅の滑走路では、150mと規定されています。

RSA: Runway Safety Area の定義ではありませんが、本邦の AIM-J [175] c. には、滑走路停止位置標識:として、
  1. 滑走路のいずれの方向でもカテゴリーⅠ,ⅡあるいはⅢの精密進入を行わない滑走路の入口では:着陸帯短辺の長さの1/2以上
  2. 滑走路の片方向かまたは両方向で、カテゴリーⅠの精密進入を行う滑走路の入口では:(滑走路中心線から)75メートル以上
  3. 滑走路の片方向かまたは両方向で、カテゴリーⅡ/Ⅲの精密進入を行う滑走路の入口では:(滑走路中心線から)75メートル以上
  4. (省略)

と記されています(2007年前期版)。
この記載の 2. が 75 x 2 = 150 となり FAA の150mと一致しますね。

次に Length です。

 FAA AC 150/5300-13 で、Aircraft Approach Category C & D で AIRPLANE DESIGN GROUP VI の欄を見ると、
  300m
で、それは、
 a) Stopway が無い場合は滑走路終端からの距離
 b) Stopway がある場合には Stopway の終端からの距離
となっています。
 ※本邦のオーバーラン(過走帯)は、必ずしも ICAO や FAA が定める Stopway とは同一でありません。

2)RPZ: Runway Protected Zone

 RPZ は、Runway OFA: Object Free Area の一部と Controlled Activity Area から、構成されます。

模式図は下のようになり、肌色の部分が RPZ: Runway Protected Zone です。

RPZ


(RPZ には、着陸機を対象とした Approach RPZ と離陸機を対象とした Departure RPZ があります)

RPZ の大きさを決めるパラメータ、W1, W2, L は、1)で述べた Aircraft Approach Category と気象条件(視程)により変化します。

一例として、Aircraft Approach Category C & D の航空機の Approach RPZ のパラメータは次のようになります。

Approach Visibility MinimumL (m)W1 (m)W2 (m)
Visual or not lower than 1600m510150303
Not lower than 1200m510300453
Lower than 1200m750300525


一方、Runway OFA: Object Free Area のパラメータ、Q, R は、1)と同様の区分で決められ、Aircraft Approach Category C & D で AIRPLANE DESIGN GROUP VI では、
 Q: 240m 、 R: 300m
と規定されています。

※以上、FAA AC 150/5300-13 (Change 1~10を含む)より。

3)ILS Critical Area

 POFZ: Precision Obstacle Free Zone とも言われます。

ILS CAT-I operation においては、下の図のように、Runway Threshold から60m、滑走路中心線から片側にそれぞれ120mの合計で240mの領域となります。

POFZ


視程 1200 m 未満の気象条件下で、着陸機が最終進入段階で2マイル以内にある場合には、POFZ に障害物(例えば機体の一部や空港内の車両等)があってはいけません。
※この POFZ にかからなければ、Holding Position Sign (停止位置標識)位置まで進むことができます。

〔 FAA Notice N 8260.60 Effective Date: 11/14/06 より〕

本邦の AIM-J [131] g. ILSに対する電波障害 にも以下の記述があります。
車両または航空機がローカライザーあるいはグライドスロープの地上アンテナ付近で停止または通過するとILSローカライザあるいはグライドスロープに障害が発生することがある。地上の車両または航空機による電波障害を受けなくてすむ場所にアンテナが設置されているところは、むしろ非常に少ない。従ってローカライザおよびグライドスロープのアンテナ付近の地上面ね、ILS立ち入り制限区域が設けられる。

注4)ILS クリティカル エリア
 CATⅡ・Ⅲ ILSの電波障害を防止するために以下の図のように制限区域を設けている。一定の気象条件以下ではこの制限区域が保護される。(SSP体制)
 ~以下、省略~


さて、件の“ ILS Critical Area Hold ”と“ Runway Hold ”ですが、Runway Safety Area と ILS Critical Area との位置関係により、標識が必要な場合と必要でない場合が出てきます。

ケース1) Runway Safety Area の外側に ILS Critical Area 境界がある

この場合は、勿論必要になります。

ILS HOLDING POSITION SIGN REQUIRED

ケース2) ILS Critical Area 境界は Runway Safety Area の内側にある

この場合は、ILS HOLDING POSITION MARKING および標識は必要ありません。

ILS HOLDING POSITION SIGN NOT REQUIRED

ケース3) Runway Safety Area の外側に ILS Critical Area 境界があるが、その間の距離は50フィート(約15m)未満

この場合は、ILS HOLDING POSITION MARKING および標識を省略することも可能と定められています。

ACCEPTABLE SUBSTITUTE

と、このようになっております。

最後にAirport Marking を散りばめた架空の空港図を示します。

まだまだ説明不足の点が多いのですが、今回説明した内容をふまえていただくと、少しご理解いただけるのでは、と...。

Application Examples for Holding Positon Signs




いたらぬ説明ではありますが、図を描いたり、裏を取ったり、これでも結構大変なのでございます。
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