徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

アダム・エア576便 - 海上も捜索しないと

 第一報のインパクトというものはやはり大きいもので、無意識のうちに読んだ記事の『同島中部ポレワリマンダル県の山中で』の部分から、陸上で遭難しているもの、との前提でものを考えていました。

が、そうとは限りません。ditching (不時着水)した可能性だってあるのです。

JEPPESEN 社の Enroute Chart をひっぱり出して(ここは購読エリア内なので最新のチャートがあります;Enroute Chart のエリアとしては FE: Far East ではなくて AS: Australasia の3と1が該当します)、スラバヤからマナドまでの経路を考えていました。

これまでの報道内容を総合すると、スラバヤを離陸した機は、航空路W32でスラウェシ島南部のマカッサル近くにある HASANUDDIN VORDME を目指します。
 (※ SURABAYA - W32 - HASANUDDIN (WAAA) のエンルート・チャートはここで参照できます)

そのままW32を磁方位39°で501海里(約900km)飛べばマナド上空になるのですが、当時の悪天候が原因だったのか、ETOPS あるいは ETOPS ALTERNATE の関係か定かではありませんが、当該機の飛行計画は、HASANUDDIN VORDME からスラウェシ島の西海岸沿いに島の北西部に位置するパルという街に近い PALU VORDME を経て、そこから東北東にまっすぐマナド上空へ向かう航空路W51を飛ぶように FILE されたものと思われます。
※W51経由だと、HASANUDDIN VORDME からの距離は611海里(約1100km)と Ground Distance で110海里遠回りになります。

ここで航空路W51は、HASANUDDIN VORDME から PALU VORDME までは一直線ではなく、“く”の字型になっており、折れ曲がりの部分には RUDAL という位置通報点( HASANUDDIN VORDME から磁方位340°で158海里、PALU VORDME からは磁方位213°で128海里に位置するウェイポイント)があります。

参考までに JEPPESEN 社の ENROUTE CHART の一部を下に示します。IFR 用なので地形(海岸線など)は解りにくいと思いますが、W51の“く”の字型はお解かりいただけるかと思います。

from JEPPESEN AUSTRALASIA HIGH/LOW ENROUTE CHARTS 3
© JEPPESEN SANDERSON, INC., 1997, 2006


下種な想像の域を出ませんが、
 『離陸し、1時間後にスラウェシ島中部マムジャの3万5千フィート(約1万メートル)上空で最後の交信をした後』
と報じられたのは、この RUDAL ポイント付近だったのではないかと考えられなくもありません。

RUDAL ポイント、INS でおなじみになった緯度経度を見ると、海上(海上上空)に位置しています。

マムジュという街の西の海上上空になります。

当該機が素晴らしい航法精度( RNP: Required Navigation Performance とかいう尺度で表すのですが)で、かつ天候も良好でドンピシャと航空路W51から逸れることなく飛行していたのなら、
 『沿岸』や『スラウェシ島西岸近辺』
の捜索で良いと思うのですが、生憎と当時は悪天候で積乱雲を避けるために、航空路中心から東西方向の何れかに deviation していた可能性も少なくありません。

となると、東に deviation していた場合には陸地、それも山岳地帯の可能性が高くなりますが、西に deviation していた場合、またはW32を飛行中、HASANUDDIN VORDME の手前で RUDAL ポイントへの直行許可をATC( UJUNG PANDANG CONTROL )からもらっていた場合には、ある程度沖合いまで捜索範囲を広げなければならないと考えられます。

「たら・れば」は禁物ですが、もし576便がマカッサル海峡に ditching (不時着水)していたなら....。

現地は悪天候が続いているとのことなので、厳しい状況を強いられていることは間違いなく、時間の経過が悔やまれます。

悪天候下、捜索活動を強行して二次災害を招いたのでは元も子も無いのですが、今回は遭難地点の把握に時間がかかりすぎていることが残念でなりません。


インドネシア機、依然不明 スラウェシ島で捜索続く(共同通信) - goo ニュース
【ジャカルタ3日共同】インドネシア・スラウェシ島付近で1日午後に消息を絶った民間航空会社アダム・エアの国内線旅客機ボーイング737(乗客乗員計102人)の捜索は3日も続けられたが、行方は依然分かっていない。

国軍、警察やアダム・エア社は2日朝、山中で機体が発見され、生存者がいるなどと一時発表したが、同日夜、機体発見は誤りと判明し、現場に向かった捜索救助隊の活動は空振りに終わった。空港などに詰め掛けた乗客の家族から「何を信じればいいのか分からない」と怒りの声が出ている。

空軍などが付近の山地や沿岸を捜索しているが、天候が悪く難航している。

2007年1月3日(水)19:10

消息絶ったインドネシア旅客機、依然不明 (朝日新聞)
インドネシアのスラウェシ島上空で1日、乗客乗員102人を乗せて消息を絶ったアダム航空のボーイング737―400型機について、ハッタ運輸相は2日夜会見し「先に国軍が事故機を発見したと発表したのは誤りで、行方は依然として不明だ」と述べた。生存者12人を確認したとの情報も、同相は否定した。

 ロイター通信によると、国軍などは3日の夜明けとともに、スラウェシ島西岸近辺を中心に捜索を再開したが、悪天候のため活動が難航しているという。

2007年01月03日18時26分
Comment ( 0 ) | Trackback ( 0 )