昨年のNANO-MUGEN FES.の土壇場キャンセルから、約1年4ヶ月ぶりに実現したManic Street Preachers(マニック・ストリート・プリーチャーズ:以下マニックス)のライヴ。
単独ライヴとしては5年ぶりだが、サマソニに仕事で休みが取れずに行けなかった私にとっては、彼らのライヴは実に17年ぶり。
あの時は、まだRichey(リッチー)が居てマニックスは4人だった。私は特にRicheyのファンという訳ではなかったが、Richey失踪後マニックス熱はだんだん冷めて行った。
ところが、2年間の活動休止後に発表した 『Send Away The Tigers』 が素晴らしいアルバムだったので、マニックス熱再燃。その間のアルバムは後追いで聴き、改めて彼らの魅力を再認識し、現在に至る。
場所は3回目の新木場STUDIO COAST。初めて行ったのはweezer(ウィーザー)、次がKeane(キーン)、行く度に駅周辺が少しずつ拓けているのを感じる。
この日はゲスト・アクトがあった。
The Libertines(リバティーンズ)のギタリスト、Carl Barât(カール・バラー)。単独公演はSold Outになっているらしかった。
The Libertinesは、その名とVo.のPete Doherty(ピート・ドハーティ)のやんちゃっぷりしか知らない。
曲はわりと親しみやすいメロディで、初めてでも違和感なく聴くことができたが、入り込むことはできなかった。最後の曲で大盛り上がりしていたので、きっとThe Libertinesのナンバーなんだろうな・・・と思ったが(実際そうだった。「Don't Look Back Into The Sun」 という曲)、残念ながら私にはそんな程度。
マニックスの3人が袖からじーっとステージを見ていた。その姿を見て、Carl Barâtのライヴ中にマニックスへのワクワク度が増す私だった。
セット・チェンジのインターバルで、Nicky(ニッキー)のベース・アンプに掛かったウェールズの国旗と、その上に置かれたぬいぐるみ、更にNicky御用達のカラフルな羽根で覆われたマイク・スタンドが置かれると、場内は歓声の渦。
そして、新作 『Postcards From A Young Man』 のジャケと同じTim Roth(ティム・ロス)のモノクロ写真の幕がバックに掲げられ、いよいよだと思うとドキドキしてきた。
BGMには、The Black Crowesの 「Jealous Again」 やEcho & The Bunnymen(エコー&ザ・バニーメン:以下エコバニ)の曲が流れていた。
客電が落ちると、ものすごい大歓声に迎えながらメンバーがステージに登場。めちゃくちゃ押されて、柵で胃が圧迫される。
サポート・メンバーが2名参加しているが、ステージ向かって左側は今でもRichyのポジション、空けたまま。Richyは変わらずマニックスの一員だという、そういう彼らの姿勢はもう既に知っていることであってもグッとくる。
James(ジェームス)が “You Love Us!” と一曲目の曲名を叫んで音が出ると、更に圧力がかかり、内臓が口から飛び出そうだった。苦しかったけど、その苦しさやあちこちの痛みもやがて忘れて行った。当然の大合唱。
豹柄のファー・コートを羽織った期待どおりのファッションのNickyは、ピョンピョン跳ねる。中のTシャツは、ジョンとヨーコの “Two Virgins” だ。ドラムスのSean(ショーン)は奥過ぎて見えない。
続く 「You Love Alone Is Not Enough」 は 『Send Away The Tigers』 の代表曲。Jamesの声は、高らかに響いてよく伸びる。やっぱり歌うまい!
そして、3曲目で完全に魂を打ち抜かれた。だって 「Motorcycle Emptiness」。一緒に口ずさむ内に、自然と涙腺が緩んできた。どうしても思い出してしまう、Richyのこと、日本で撮影したPVのことetc.....。
新作から 「(It's Not War) Just The End Of Love」、一つ前の 『Journal For Plague Lovers』 から 「Jackie Collins Existential Question Time」 と続く。めちゃくちゃいい!楽しい! そして何と言ってもNickyのビッグ・スマイル、そのニカーッとする笑顔を見ているだけで、こっちもニコニコだ。
私がマニックスの曲の中で、不動のいちばん好きな曲 「Roses In The Hospital」 のイントロが始まった時は、発狂寸前、骨抜きにされた。
Nickyのベースがシンコペーションのリズムを刻み、Seanとの複雑なリズムのアンサンブルが絶妙だった。
NickyがRichyの名前を出した 「This Is Yesterday」。この曲はRichyに捧げた曲で、ちょっとしっとりとした曲調ということもあって、やっぱりジーンとした。日本では初披露だとJamesが言っていた。
「Everything Must Go」 のイントロで、Jamesがくるくる回っていたっけ。エコバニのIan McCulloch(イアン・マッカロク)のパートはNickyが歌った 「Some Kind Of Nothingness」 は、感情たっぷりに歌い上げるJamesの歌声に感動。「Ocean Spray」 では、トランペットの音色がとっても悲しげに響いた。
やる曲やる曲が嬉しさと興奮の連続だったが、「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」 も嬉しかった。サビの “Scream to a sigh~~~” とファルセットで歌うJamesの歌声は、ハンパなく素晴らしかった。
「Theme From M*A*S*H (Suicide Is Painless)」 が聴けるとは思わなかったので、マジで泣けてきた。
Nickyが再びRichyのことを話し始め、初来日でプレイした川崎クラブ・チッタの名を挙げて、“この曲をやる度にRichyのことを思い出す・・・・・Mr. Motown Junk!” と言って 「Motown Junk」 へと突入。メンバーも私たちもテンションMAXで、フロアはぐちゃぐちゃ。
途中Jamesひとりになり、アコギ1本でやったのが 「Stay Beautiful」。例の “F**k Off” の掛け声は、アコースティックゆえ、イマイチしっくりこなかったけど、この曲をアコースティックで聴けたのは貴重だったかも。
再びステージに戻ってきたNickyは、お色直し。待ってましたのスカート姿。それもひらひら揺れるティアード・ミニ・スカート。キャプテン帽を被り、最高にアナーキー。やっぱりこの人には、とんでもないエンターテイナー気質がある。
見事に引き締まった生脚は、美しいと言うしかない。ぴょんぴょん跳ねる度に当然パンチラ。目のやり場に困った・・・というか、リズムに合わせて脚を蹴り上げたりして、わざと見せていた?? Jamesもステージを飛び回り、みんなめちゃくちゃ元気だった。
最後はドラマティックな名曲 「Design For Life」 で大合唱。私たちにワン・フレーズ全部歌わせるシーンもあり、惜しまれながらも感動的に幕を閉じた。
私と同じようにマニックスと共に歳を重ねてきた同世代の人たちに混じって、20代と思われる若者をたくさん見かけたのは嬉しかった。
『Send Away The Tigers』 からしか知らない私の連れも、過去の曲を何曲かピック・アップして事前にCDを作って渡していたが、知らない曲でもめちゃくちゃ楽しめたと言っていたのが嬉しかった。
新作のアルバム・タイトルがツアー・タイトルだったが、蓋を開けてみると、それはもうグレイテスト・ヒッツ・ツアー。新作や前作からももっと聞きたかったけど、過去の曲をたくさんやってくれたのは、本当に嬉しくて感動ものだった。
それにしてもぶっ通しの全21曲。James以外は途中で一服しているけど、Jamesは正にノン・ストップ。でも全く衰えることなく、素晴らしい歌声を聴かせてくれた。
その風貌や発言から、ロクに曲を理解せずにちょっと偏見な眼差しで見られていた90年代前半。メイクやファッションだけで、安っぽいパンクだなんて言われたこともあった。
マニックスのファンは、いわゆるブリット・ポップ・ファンとはちょっと違っていた。
今では押しも押されぬ英国を代表する国民的バンドのマニックス。今回の来日公演を見る限り、日本でも一定の人気をキープして行けるのではないかなと思うので、コンスタントに来日してほしい。
★Setlist★
・You Love Us
・You Love Alone Is Not Enough
・Motorcycle Emptiness
・(It's Not War) Just The End Of Love
・Jackie Collins Existential Question Time
・Roses In The Hospital
・This Is Yesterday
・Everything Must Go
・Some Kind Of Nothingness
・You Stole The Sun From My Heart
・Ocean Spray
・La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)
・Theme From M*A*S*H (Suicide Is Painless)
・Motown Junk
・If You Tolerate This Your Children Will Be Next
・Stay Beautiful -acoustic-
・Faster
・No Surface All Feeling
・Golden Platitudes
・Tsunami
・Design For Life