昨夜見た 「ベストヒットUSA」(現在BS朝日にて放映中だが、何日か遅れて民放でOAされる)で流れた、Fleetwood Macの 「Hold Me」 のPVを見たら、Macのアルバムを聴きたくなり、Macの中で私がいちばんポップだと思うこの 『Mirage』(1982) を引っ張り出して聴いた。
このバンドほど数多くのメンバー・チェンジを繰り返し、様々なトラブルと向き合ってきたバンドは、ロックの歴史の中ではとても稀なのではないだろうか・・・。
Mick FleetwoodとJohn McVieのリズム隊の名前がそのままバンド名になり、他のメンバーの入れ替わりが激しくて何度も解散の噂が流れたが、この二人が要で居る限りバンドは不滅なのだ。
ブリティッシュ・ブルーズ・ブーム全盛期に結成されたMacだが、私はアメリカ人のメンバーが加わり、USでの地位を確立した頃から聴いたので、あんまり英国バンドのイメージがない。
そして、70年代に加入した歌姫Stevie Nicksが在籍していた頃のMacをいちばんよく聴いた。
実のところ、私はStevieの声はあまり好きではなく、Christine McVieの歌声の方が好きで落ち着く。
しかし、Stevieの小悪魔的な存在はもの凄いものがあり、当時のMacには欠かせなかった。
“小悪魔” という表現がこれほど似合う女性は、彼女を置いて他にいないと私は思う。
そしてChristineの優しく包み込むような声にはお母さんのような暖かさがあり、Stevieとは全く対照的だ。
このアルバムでは特に、明るくハッピーなポップ路線を行くChristineと、ブルーズやロック、カントリーを基調とするStevieのふたりのVo.がバランス良くまとまっている。
そして、Lindsey BuckinghamとChristineとStevieの3人のメイン・ソングライターが個性的に放つそれぞれの曲が、バランス良くいい味を出している。
PVで見たM-9 「Hold Me」 のChristineとLindseyのツインVo.はキラキラしているし、アコースティック・ギターの音をバックにアヴァンギャルドにStevieが歌う M-5 「Gypsy」 も素晴らしい。
あまり好きではないStevieの声でも、この曲は聴き入ってしまう。
ソング・ライティングにキャリアを感じさせるポップなM-2 「Can't Go Back」、フォーキーなナンバーM-3 「That's Alright」、しっとりと聴かせるバラードM-12 「Wish You Were Here」 などいい曲がたくさんで、珠玉のポップ・アルバムと言えるだろう。
派手さや大掛かりな策略もなく地味ではあるが、とてもまとまりのある、Macならではの80年代ポップスに順応した音作りが楽しめる。
『Rumours』 もいいが、このアルバムは肩を張らずに聴いていられる一枚である。
それにしても、Macのジャケットのアート・ワークは、本当にどれも美しく素晴らしい。

3人それぞれが、ソロ・アルバムをリリースしたのもこの頃。
そしてこのあとバンドは活動休止となり、その後StevieとLindseyの脱退、Christineのツアー参加拒否と、ついに終わりかと思われたMacだったが、97年にStevieとLindseyが復帰してアルバム 『The Dance』 をリリース。
小林克也によると、Macは今年この頃のメンバーで何かをやらかそうとしているそうだ。