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東京小美術館めぐり

2009-05-10 | art


台風の影響で雨が続いたが、今日は久しぶりに青空が拝め、初夏のように気温も上がった。
ゴールデン・ウィーク中は途中で休みの日もあったが、人ごみの中に繰り出すのは気が向かなかったので何処にも出かけることがなかったが、今日は都内散策をしてきた。
今、国立西洋美術館と国立新美術館で、ふたつの “ルーヴル美術館展” が開催されているが、連日超満員という噂・・・。今回の出展作はいまひとつ興味が湧かないので、他に何かないかなと調べたところ、私を満足させてくれそうなものがあったので、一日かけてついでに都内をちょこっと散策してきた。

都バスの一日乗車券(500円)をSuicaに入れて、まず最初に、目黒にある東京都庭園美術館に行った。
ここは戦後の一時期、国の迎賓館などとして使用されていたこともあった朝香宮(あさかのみや)邸として建てられた建物が、現在は美術館として公開されている。
 東京都庭園美術館入口
 旧朝香宮邸、現美術館

まず、広大な緑溢れる庭園に入って行くと、雨あがりのあとの匂いが漂ってきて、ヒーリング効果抜群。ところどころに置かれた彫刻を見たりしながら散歩。
東京でこれだけの緑がある所に行ったのは、久しぶりだった。つつじはまだ少ししか咲いていなかったが、バラやボタンなどが咲いていた。
家族連れや外国人の姿もあり、芝生でお弁当を広げたり、寝転がって読書をする人たちの姿はとてものどかな雰囲気だった。
 緑溢れる庭園
 イスラエルの彫刻家の 「ピルタイとパシュフル」 という作品

庭園に囲まれた洋館では、モスクワの国立トレチャコフ美術館所蔵の 『エカテリーナ2世の四大ディナーセット』 という展覧会が開催中で、ロシアの宮廷晩餐会を飾った、威厳と崇高さ極まる豪華なテーブル・ウェアのコレクションがたくさん展示されていて、こんな豪華な食器で食事していたんだ・・・とため息さえ出た。
女帝エカテリーナ2世が発注した、ドイツのマイセン、イギリスのウェッジウッド、ブローチで有名なカメオなどのオリジナルの豪華な磁器が、年代別に展示されていた。
とりわけ、ウェッジウッドの “クリーム・ウェア” と呼ばれる乳白色の磁器に描かれたイギリスの風景画が繊細で素敵だった。

庭園美術館を出たあと1区間だけバスに乗り、次は白金台の松岡美術館に行った。
ここで開催されているのは、『エコール・ド・パリ展』。20世紀前半に、パリのモンマルトルやモンパルナスで活動した、ピカソやシャガールやモディリアーニ、ユトリロ、ローランサン、藤田嗣治らの作品が展示されていた。
数は少ないが、来場客も少なかったので、殆んど独占状態で鑑賞することができた。大好きなピカソの作品は2点、シャガールの 「婚約者」 という作品はとても心が和み、ベルナール・ビュッフェはサインがカッコ良かった。
ユトリロの作品を生で見たことがなかったので、先日行ったモンマルトルの街の風景画にとても惹かれた。
この美術館は、国内の美術館では珍しく写真撮影が可能だったが、殆んどの作品がガラス・ケース入りだったので、私の腕とカメラではちゃんとした写真が撮れなかったのが残念。(苦笑)
1階ロビーに展示されていたジェコメッティの 「猫の給仕頭」 というブロンズ像がとても可愛くて、常設展では古代オリエント美術が興味深く、エジプトの 「エネへイ像」 という浮彫の神像は、とても美しかった。
 松岡美術館
 マルク・シャガール 「婚約者」(1977)
 モーリス・ユトリロ 「モンマルトルのジュノ通り」(1926)
 ディエゴ・ジェコメッティ 「猫の給仕頭」(1967)   エネヘイ像 

再びバスに乗り、これで一日乗車券の元は取れ(笑)、ひとまず麻布十番駅前で下車。
実はパリから帰ってきてから、相変わらずコンビニのパンは一度も食していなく、日々美味しいパンを探し求めているのだが、麻布十番なんてこういう機会でもないと行かないので、「pointage(ポワンタージュ)」 というパン屋さんに行って、夕食用のパンを購入。
麻布十番から六本木までの丁度いいバスがなく、昔はこの区間をよく歩いたが、結構暑かったのでここだけは地下鉄でひと駅。
そして、芋洗坂にあるイタリアン・バール 「DEL SOLE(デル・ソーレ)」 で遅めのランチ。パスタ・ランチを戴いて、パスタもデザートのジェラートも美味しくて満足。
食後の運動と思い、東京ミッド・タウンまで歩いて行って、戻る途中で見つけたフローズン・ヨーグルト・ショップ 「GOLDEN SPOON」。ジェラートを食べたばかりだったが、外は夏のように照り付ける太陽で暑かったので、いちばん小さいサイズでラズベリー・フレーバーを買い、食べ歩きしながら六本木のバス停に向かった。
途中、東京タワー近くで下車。昔は職場がすぐ近くだった東京タワーも、今はここもこういう機会でもないとなかなか来ない所だ。
土曜日ということもあって、はとバスや観光バスがたくさん停まっていた。エッフェル塔を真下から見上げたので、東京タワーも・・・と思ったのだが、真下が建物になっているので比べることができなくてちょっと残念だった。
 足元から見上げた東京タワー

さて、次の目的地までまたバスに乗り、終点の東京駅丸の内口まで行った。土曜日なので、東京駅までの道はとても空いていた。
東京駅丸の内側の赤レンガの駅舎は、国指定の重要文化財に指定されているが、現在駅舎を本来の姿に復元するための工事が行なわれている最中。
 東京駅丸の内側駅舎

地下の八重洲口側に通じる自由通路を歩き、八重洲地下街を抜けてブリヂストン美術館に行った。
ここで今開催されているのは、『マティスの時代』 という、アンリ・マティスと彼と交流のあった同時代の作家の作品の展覧会。
こじんまりとしたとても綺麗な近代的な美術館で、マティスの作品を中心に、ここでも大好きなピカソに出会うことができて、「腕を組んですわるサルタンバンク」 という作品は、色使いやタッチが初めて見るものだったので、その絵の前に置かれた椅子に座ってずっと眺めていた。
ここも人が少なかったので、じっくりたっぷりと素晴らしい作品に触れることができた。特に気に入ったのが、ゴッホの 「モンマルトルの風車」。私の知っているゴッホの作品と言えば、色鮮やかでうねりのあるタッチの作品がほとんどなので、この作品の何とも言えない哀愁感に胸を打たれた。
で、肝心のマティスはというと、4つのテーマに分けて展示されていて、入館時にもらった解説が書かれた小冊子片手に鑑賞。
壁にはマティスの言葉が記されていて、その中でいちばん心に残ったのが、“私は人生から感じ取ったものをそのまま絵に写し取る” という言葉(思わずメモしてきた)。
そして、チラシの裏にも書かれている “私は一枚の絵を見るとき、何が描かれているかは忘れてしまう。大切なのは線と形と色だけである” という言葉のとおり、線と色を追求したかのような作品が印象的だった。
あまり好きではないのだが、カンバスに直接絵の具を搾り出して塗り、乾いては削り、その上からまた塗るという手法のルオーの作品は、めちゃくちゃ力強い作品だった。
 パブロ・ピカソ 「腕を組んですわるサルタンバンク」(1923)
 フィンセント・ファン・ゴッホ 「モンマルトルの風車」(1886)
※館内は撮影禁止なので、画像検索で探したもの。

美術館を出るとすっかり日も暮れ、再び丸の内側まで行って新丸ビルにあるパン屋さん 「POINT ET LIGNE(ポワン・エ・リーニュ)」 に行って、翌日のランチ用のパンを購入。
とてもパン屋さんとは思えないくらいの、スタイリッシュでモダンなデザインの対面販売のお店で、もっといろいろ買いたかったが、食べものなのでそういうわけには行かない。選びに選んだ明日のランチが楽しみだ。
そして、帰りも目黒駅までバスで行き、あとは定期券なので殆んど交通費をかけずに帰宅した。
たくさん歩いたし、緑溢れる自然と芸術とグルメを楽しんだ一日は、久しぶりにとても充実感のある外出だった。それに、普段は殆んど電車なので、バスに乗って滅多に通らないところを見ながら行くのは、とても楽しかった。

tokyo PICASSO 「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」

2008-12-13 | art


先日のサントリー美術館 「巨匠ピカソ 魂のポートレート」 に続いて、国立新美術館で同時開催中の 「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」 展に行ってきた。こっちはサントリー美術館の約3倍の作品が展示されている。
今日は暖かい日だった上、美術館の中は暖房が効きすぎていた。コートが邪魔になったので、ロビーのコインロッカーを使い、チケットだけ持って手ぶらで鑑賞した。

まず中に入ってずぐ、いちばん最初に目にしたのがこの絵。“青の時代” の作品 『ラ・セレスティーナ(Celestina)』。
白内障で左目を患っている老女の、ストイックなまでの見据えるような表情に、引き込まれてしまった。
 『ラ・セレスティーナ』(1904)

“○○の時代” と呼ばれているように、ピカソほどめまぐるしく作風が変化している画家はいないだろう。決して同じような作品はない。
まだまだ知らない作品も数え切れないくらいあるが、初めて出会う作品は、見る度に驚きと感動を覚える。
絵画だけではなく、彫刻はもちろん、ブリキ板や新聞紙などを貼り付けたコラージュ作品や挿絵もたくさん展示されていた。
ピカソと言えば、目がチグハグに離れていて、変なところから手が出ていて・・・という作品ばかりと思っている人が少なくないだろうが、それはひとつの時代の作品だけのこと。確かにキュビズムを極めた頃の作品が代表作として挙げられることが多いので、ポピュラーになっているが、決してそれだけではない。
例えば1918年のこの作品。ピカソの最初の妻、オルガの肖像画だ。優しいタッチでとても繊細。そして何よりも愛を感じる。
 『肘掛け椅子に座るオルガの肖像』(1918)

ピカソのその作風の変化には、いつの時代も愛する女性が影響していると言っても過言ではないと思う。妻や愛人が彼の芸術創造のミューズであり、それは晩年になっても描き続けられている。
エロティックで情熱的なピカソの生涯を、作品を通して垣間見ることができたような気がする。そして、何かしらのエネルギーをもらえたような気分。詳しくなくても美術鑑賞は楽しいし、安らぎと刺激を与えてくれる。
私は初期キュビズム時代の作品が好きで、今日見た作品の中でいちばん気に入ったのが下の絵。キュビズム革命の発端ともなった 『アビニヨンの娘たち』(ニューヨークのMOMA所蔵なので、今回の展覧会には展示されていない) に繋がるものがある。でも、残念ながらポスト・カードにはなっていなかった。
 『“森の中の水浴の女たち” のための習作』(1908)

10月4日から始まった展覧会も、あさって12月14日で終了。平日にもかかわらず、たくさんの来場者で中は混雑していたが、初めて行った新国立美術館は、照明が明るくて、とても見易く展示されていたので、そんな混雑もあまり苦にはならなかった。
やはり外観は、私にはどうしても素晴らしい建築デザインとは思えないが・・・。
 新国立美術館

tokyo PICASSO 「巨匠ピカソ 魂のポートレート」

2008-12-01 | art


10月4日から開催されている、ピカソ展に行ってきた。
今回の展覧会は、国立新美術館とサントリー美術館の2ヶ所で開催されている。
ピカソと私の出会いは、小学生だった頃に遡る。・・・と言うほど大袈裟なことではないが、家に作家別の美術年鑑があり、私が好んで見ていたのが、ピカソとシャガールとセザンヌやルノワールなどの印象派だった。
今でも決して詳しくはなく、精通もしていないが、旅先で訪れた美術館に彼らの作品が展示されていると、決して見逃さない。
今日はまず、ピカソの青の時代、キュビズム、新古典主義、シュルレアリスム、晩年と、ピカソの全生涯の奇跡を自画像を中心とした作品で綴った、サントリー美術館の 「巨匠ピカソ 魂のポートレート」 展に行ってきた。
タイトル写真はフライヤーなのだが、この絵のタイトルは 『自画像』。1901年青の時代、ピカソが20歳の時の作品で、会場に入ると二番目に見ることができた。
しかし、この絵は20歳のピカソではない。この作品とは対象的に、晩年の1972年、91歳の時の作品に、『若い画家』 というタイトルの自画像があり、いちばん最後に展示されていた。
この2枚を鑑賞して、自画像というのは、その時の自分を描くだけではなく、その時の自分の心を描くものなのかも知れない・・・と感じた。
昔は抽象的なだけで訳がわからないと思っていた作品も、今ではキュビズムというものを知ったので、見方も変わり、ちゃんと理解できるようになった。
『ピエロに扮するパウロ』 という、息子パウロを描いた作品が、とても優しくて温かくて、強いタッチで描かれた他の作品とは違う世界観があった。ピカソの息子に対する愛情が滲み出ている作品だった。
 『ピエロに扮するパウロ』 1925年

今回の展示作品は、2館で計約230点。全てパリの国立ピカソ美術館所蔵のものだが、となると、今パリの美術館はどうなっているのだろう・・・と余計な心配をしたが、美術館の改装によって実現した回顧展の一環とのこと。なるほど・・・。
サントリー美術館は、今年の1月に 「ロートレック展」 で新しくなってから初めて行ったのだが、従来の日本の美術館とは違い、比較的自由に鑑賞できるので気に入っている。
難を言えば、これは他の日本の美術館もそうなのだが、照明が暗いこと。作品にはライトが当てられているが、それ以外は間接照明で暗い。どうしてもっと明るくしないのだろう。明るくするともっとオープンな気分になれるのに・・・。
国立新美術館にはまだ行ったことがないので、どんな感じの美術館なのか楽しみである。黒川紀章が設計した建物自体は、あまりセンスがいいとは思えないが・・・。

夜になってとても風が強くなって寒さも増してきたが、空気が澄んでいたのか、オフィスの窓から見た夕焼けがとても綺麗だった。そして、サントリー美術館がある、東京ミッド・タウンの周りは、クリスマス・イルミネーションがとても綺麗だった。
 日没直後の東京の空
 東京ミッド・タウン・イルミネーション




ロベール・ドアノー写真展 『パリ・ドアノー』

2008-10-11 | art


私の大好きなモノクロ写真。
あまりにもメジャーで、多くの世界中の人々に愛されている写真なので、“いかにも” なのだが、でも好きなものは好きとしか言えない。
上の写真 「パリ市庁舎前のキス/ La baiser de l'Hotel de Ville, Paris」(1950年)。きっと一度は誰もが目にしたことがあるだろう。
ロベール・ドアノー(Robert Doisneau)、1994年に死去するまで60年以上の間、パリを舞台に庶民や子供たち、芸術家やデザイナー、動物などを撮り続け、雑誌VOGUEやLIFEの仕事でも活躍していた。
どれも皆、眺めているだけであったかい気持ちになる。
この写真の舞台となったパリ市庁舎で、2006年に大回顧展が開催され、現在世界中で巡回展が開催されている。
そして今、東京日本橋三越本店のギャラリーで開催中で、今日仕事帰りに行ってきた。
今回展示作品は200点、モノクロの写真で描かれたパリの街。
まるで自分がその風景の中にいるかのようで、作品の中に引き連れて行ってくれそうな錯覚に陥る。
無性にパリに行きたくなった。
1枚1枚が優しさと温かさで溢れていて、時にはユーモラスな表情で思わず笑みがこぼれそうになったり・・・。
ピカソやディオール、ココ・シャネル、ゴルチエなどのポートレートもあり、特に “パリの犬たち” “パリの子供たち” と題されたコーナーでは、好きな作品がたくさんあり、何回も往復して鑑賞した。
もちろん、「パリ市庁舎前のキス」 の前では、“わ~本物だ! ついに本物が見れた!” と心の中で言いながら・・・。
ドアノーの写真はとてもお洒落れで、絵になるパリの街を見事に捉えていると思う。
ギャラリーの入口には、“パリは、時間の浪費がチケット代わりになる劇場だ。そして、私はいまだに待っている。” というドアノーの素敵な言葉があった。
約17分の記録映像で、“私の撮影の演出は、待つこと。自分が望むものを、自分が心地良い瞬間を待っている” というようなことを言っていたのが、とても心に残った。

「パリ市庁舎前のキス」 以外に、特に好きな彼の作品は次の3点。

 芸術家橋の上のフォックス・テリア(1953年)
 かがんで口づけ(1950年)
 ピピ・ピジョン~おしっこと鳩(1964年)

そして、今日ひとめ惚れしたのがこちらの作品。

 お使いのお駄賃(1945年)


今月二度目の写真展。ピカソ展も始まったことだし、芸術の秋を満喫!


ロベール・ドアノー写真展 『パリ・ドアノー ~ Paris en liberté』
東京日本橋三越本店新館7階ギャラリー
2008年10月13日(月)まで開催
午前10時~午後7時半
入場料 : 一般・大学生 900円/高校・中学生 700円(小学生以下無料)

京都伊勢丹美術館 「えき」 KYOTO
2009年1月31日(土)~2月22日(日)
午前10時~午後8時
入場料 : 一般 800円/高・大学生 600円/小・中学生 400円

パヴェル・シュミッド写真展 『Carpathian Ruthenia』

2008-10-03 | art


実は、今月末にチェコに行く。
今年の2月にローマに行った時に、帰りの飛行機の中で次はチェコだと心に決めていた。
理由は漠然としているが、チェコの絵本とカレル・チャペックの世界観が好きというのと、映画 『存在の耐えられない軽さ』 で見た “プラハの春” に衝撃を受けていた。
今の私が夢中になっている音楽とは無縁のところだが、かつてクラシック音楽に携わっていたこともあり、ドボルジャークやスメタナの生まれた国で、プラハはモーツァルトゆかりの街というのも、興味を惹く理由のひとつだった。
行くと決めた後、たくさん本を読んだり映像を見たりして、チェコという国(とりわけ首都プラハ)についていろいろ調べて行くうちに、まだ未踏のこの国のことがとても好きになり、もう何度も行っているかのように、街の地理は頭の中にインプットされた。

昨日の仕事帰りにも観に行ったのだが、お休みだった今日は、渋谷の小さな映画館で9月20日から三週間、週替わりでいろんな作品が上映されている “Ahoj! チェコ映画週間” で、実写とアニメーションの2作品を観たあと、六本木のギャラリーで開催されている、チェコ出身の写真家パヴェル・シュミッド(Pavel Smid)の写真展を見てきた。
私は、絵画を見るのも写真を見るのも大好きだが、特に詳しいわけでもなく、感覚で鑑賞するタイプ。
この写真展のテーマは、“When Used To Be Czechoslovakia ~ かつてのチェコスロヴァキア”。(チェコスロヴァキアは1993年に、チェコ共和国とスロヴァキア共和国に分離した)
カルパチア・ルテニアという、かつてチェコスロヴァキアの一部だった地域のモノクロ写真で、パヴェル氏が捉えた子供の目が強烈だった。何かを訴えかけているような、鋭く、そしてどこか寂しげなその目に惹きつけられた。
チェコスロヴァキア時代のカルパチア・ルテニアは、とても幸せな時代だったが、第二次世界大戦後にはソビエト連邦の支配下となったとのこと。
1990年に冷戦が終結し、パヴェル氏がこの地を訪れたのは1998年だそうだが、自由になったとは言え、現在もまだまだ様々な束縛や抑圧があるに違いない。
ある意味怯えたような眼差しが、その寂しげな表情を映し出しているのかも知れない。

ギャラリーのオーナーさんが声を掛けて下さり、もうすぐパヴェル氏がいらっしゃると言う。
“チェコに行ったことはある?” と聞かれ、今月末に行くのに、まだ10月になったという感覚がなかったのか、私は来月と答えてしまった。そのことに気付いたのは、帰りの地下鉄の中(苦笑)。
オーナーさんが2年前に行ったプラハのことや、その他いろんな旅の話をさせて頂いていると、パヴェル氏がいらっしゃった。
とても大柄で人懐っこい笑顔のパヴェル氏に、覚えたてのチェコ語で “こんにちは!(ドブリーデン!)” と挨拶をしてみた。
でも、パヴェル氏は英語だった。(私もすぐに英語で答えたので、聞こえなかったかな?)
握手した手は、大きくてゴツゴツしていて、これからのプラハは雨が降ったりもするけど、とても綺麗だよと話してくれた。


パヴェル・シュミッド写真展 『Carpathian Ruthenia』
六本木ストライプハウスギャラリー
2008年10月18日(土)まで開催
午前11時~午後6時半(日祝休)
入場無料 詳細はこちら

同時開催 : パヴェル・シュミッド写真展 『one World one Story』
お茶の水コダックフォトサロン
2008年10月06日(月)~10月17日(金)
午前10時~午後6時(土日祝休)
入場無料 詳細はこちら

Ahoj! チェコ映画週間
渋谷シネマ・アンジェリカ
2008年10月10日まで開催
詳細はこちら

『ダリ回顧展』

2006-11-22 | art


生誕100年を記念して開催されている、『ダリ回顧展』 に行ってきた。
とりわけ絵画や美術に精通しているわけでもないが、海外では時間のある限り美術館に行く。
とっても落ち着く、美術館の空間が好き。
でも日本で美術館に足を運ぶのは、よっぽど興味のある作品の展覧会がある時だけ。
何故なら・・・ま、その理由は最後に書くことにして、本題ダリ展のこと。
好きなアーティストは何人かいるが、Salvador Daliはその何人かには入っていない。
でも、彼の作品には何か惹きつけられるものがあった。
今回間近で作品を見たことによって、その何かが少しだけわかったような気がする。
Daliと言えば、溶けてゆがんだ時計に代表される、シュールレアリスム。
“シュールレアリスム” について、辞書では 「20世紀を代表する芸術思潮のひとつ。ダダイスムの思想を受け継ぎつつフロイトの深層心理学の影響を受け、理性の支配をしりぞけ、夢や幻想など非合理な潜在意識の世界を表現することによって、人間の全的解放をめざす芸術運動。」 とあるが、なるほど~と思ってもピンと来ない・・・。
Daliの作品からは、現実世界の中に見る幻視、意識と無意識、夢と現実、生と死、存在と虚無・・・そんなものを感じる。
きっとそれがシュールレアリスム?
あのピンと左右に跳ねたヒゲとギョロっとした目の外見からは想像できないくらいに、Daliという人は儚いくらいに繊細でモロい人なんだな~ってことが、作品を通じて感じられた。
そのひとつひとつに描かれた非現実な世界、見つめれば見つめるほど様々なものが見えてきて、中には鳥肌が立つものもあった。
そして、じっくりと注意深く見なければ見落としてしまうような、隅っこや背景の奥の方にも、細か~い描写がされていて、それに目が釘付けになった。

 ①『Daddy Longlegs of the Evening - Hope!』 1940
 ②『Old Age, Adolescence, Infancy (The Three Ages)』 1940
 ③『Nature Morte Vivante (Still Life - Fast Moving)』 1956

特にビビッと感じ、惹かれた作品がこの3点。
①邦題は、「夜のメクラグモ・・・・・希望!」。
メクラグモは、ヨーロッパでは “見つけると幸福になる” という言い伝えがあり、そのメクラグモが女性の顔を這っている。
Daliの作品の中にたくさん見られる、蟻や松葉杖も描かれている。
戦争を描いたこの作品には、希望と絶望が同居している。
ぐにゃっととろけたチェロを弾く女性を見つめていると、ゾクっとした。
②邦題は、「三世代 老年、青年、幼年」。
まるで騙し絵のようなこの作品。Daliが絵の中に上手く仕組んだ目の錯覚を起こすトリック。
間近で見たあとに離れて見て、再び近づいてみると、その面白さと素晴らしさが更に深まった。
③邦題は、「生きている静物(静物-速い動き)」
正にタイトルどおりの作品で、水差しや林檎やトレイが本当に生きているようだった。
躍動感とスピードが絵の中に滲み出ていて、今にも動き出しそうだった。

音楽もそうだが、絵画の鑑賞で感じるもの、見方(聞き方)は人それぞれ。決まった定義などない。
今回、Daliの作品約60点を通して感じた繊細さ、不思議さ、幻想感は、間違いなく私の心と頭の中を刺激してくれた。

さて、私が日本であまり美術館に行かない理由・・・。
具体的にこれこれだからというのはないのだが、強いて言えば鑑賞のスタイルが好きではない。
何故もっと自由に見ることができないのだろう・・・。
それと、やたらと照明を暗くするところも好きではない。
今日は平日ということもあって、ちっとも混んでいなかった。
2~30分並んで入ったニューヨークのMOMAでは、あんなに混んでいたのに、何のストレスもなく自由にいろんな角度から鑑賞できて、気に入った作品は時間をかけて見ることができた。
でも、さほど混んではいなかった上野の森美術館には、私の好きな落ち着く空間がなかった。

生誕100年記念 『ダリ回顧展』
東京上野の森美術館
2007年1月4日(木)まで開催
午前10時 ~午後6時(会期中無休)