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without A trace

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隠れた良質バンドの行方

2005-11-21 | music : favorite


90年代のシアトル・ミュージック・シーンは、NirvanaやPearl Jamの出現によって、たくさんの良質のバンドが活躍し、最も盛り上がっていた。
NirvanaやPearl Jamのように世界的にメジャーとなり、人気を博しているバンドはもちろんのこと、インディーズを含め、本当にいいバンドがたくさんあった。もちろん、現在も変わらずに活動しているバンドもたくさんある。
少しここで名前を挙げてみると・・・Green River、Mother Love Bone、Alice In Chains、Sound Garden、The Posies、Mudhoney、The Fastbacks、Young Fresh Fellows、Seaweed、The Squirrels、Love Battery...
私が好きだったり、聴いたことのあるバンドだけでもこれだけある。もちろん他にもまだまだたくさんいる。
グランジというジャンルの草分け的となったシアトル・ミュージック・シーン。Sub Popというレーベルも、当時はかなり盛り上がっていた。
そして、彼らは皆お互い同士の交流がとても深く、必ずどこかで繋がっていた。
そんな中、日本では殆んどメジャーではなかったが、Flopというパワー・ポップ・バンドがいた。
彼らはPosiesと交流が深く、当時PosiesのKen Stringfellowの奥さんだったKim WarnickのバンドThe Fastbacksとシアトルを代表するポップ・グループYoung Fresh FellowsのギタリストKurt Blochのプロデュースで、92年にインディ・レーベルFrontier Recordsからデビューし、翌93年にEpicよりメジャー・デビューした。
今日ここで取り上げるのは、デビュー・アルバム 『flop & the Fall of the Mopsqueezer!』 だが、メジャー・デビュー・アルバム 『Whenever You're Ready』 のジャケなら見たことあるという人もいるかも知れない。(↓)

『Whenever You're Ready』 1993 試聴はこちら
デビュー・アルバム 『flop & the Fall of the Mopsqueezer!』 の試聴はこちら

当時の私はわりとシアトル・ミュージック・シーンに精通していて、その頃よく聴いていたPosiesを通じてFlopと出会ったのだが、Posiesが “静” としたら、Flopは “動” 。
Posiesの曲はもちろんパワー・ポップ系もたくさんあるが、どちらかと言えばしっとりと歌う系が多い。ギターの音もディストーションを効かせて少しノイジーだ。
このFlopの音はもっとポップで弾けていて、ギター・メロもストレート。そして私は、Posiesよりも彼らの音楽が好きになった。
私はweezerが好きだが、weezerがここまで人気が出て多くの人に受け入れられているのに反して、Flopは知られないまま・・・というのが少し不思議になる時がある。そしてこの事実にちょっと寂しくなったりすることもある。
weezerに負けず劣らず、良い音楽を作り出している。敢えて違いを述べるなら、やはりRiversの詞の世界かも知れない・・・。

バンドのフロント・マン、Vo.&GのRusty Willoughbyは、Pure Joyというバンドを経て、一時期FastbacksでDrs.を担当し、その後89年にDrs.のNate Johnsonと共にFlopを結成した。
Rustyの書く曲は、とってもポップでちょっとメランコリック。本国では “melodic, driving punk-pop” と言われていた。
単純明快なパンク・ロックとは違い、メロディを大切にしたポップ・ソングが中心なので、そう呼ばれていたのだろう。
もちろん、メジャー・デビュー・アルバム 『Whenever You're Ready』 の方がより良質の曲が詰まっているのだが、インディーズ時代にここまで完成度の高いプレイと楽曲を生み出しているのが凄いと思った。
Soul Asylumにしろ、The Replacementsにしろ、インディーズ時代はまだどこか荒削りで、勢いだけで突っ走ってると感じる部分があったが、このFlopにはそれがなかった。
だから、このアルバムのリリース直後にメジャーからのオファーがあったのかも知れない。
Seattleに遊びに行った時に小さなclubで彼らのライヴを観たが、ライヴでのプレイも完成度が高く、RustyのVo.はとてもホットな気持ちにさせてくれた。
そしてそこには、PosiesやYoung Fresh Fellowsのメンバーを始め、Pearl JamのJef Ament、MudhoneyのMark Armら大勢の彼らの仲間たちが集まっていて、客席は始終盛り上がり、まるで身内のパーティのようだった。仲間同士の交流がいかに深いかということを、この目で実感してきた。
95年に3rdアルバム 『World of Today』 をリリースし、ドライ感とウェット感の両方を持ち合わせた変わらぬいい楽曲を作っていたが、Epicは “シアトル=グランジ” という音を求めていた為、その後Epicを離れて再びFrontier Recordsに戻った。
Rustyのソロが出るとか、数年前までは彼らのニュースもちらほら入ってきていたが、現在は不明。また新しいFlopサウンドを聴きたい。

洗練されたポップス

2005-11-13 | music : favorite


この人もJellyfishまでは行かないが、“ポップス・オタク” と言われているようだ。個人的にはあまりそんな風には感じないのだが・・・。
Chris Von Sneidern。この93年のデビュー・アルバム 『Big White Lies』 が、彼のアルバムの中で私がいちばん好きなアルバム。
サンフランシスコ出身というところまでJellyfishと同じなのだが、彼の音楽は、とても素直で心地良いポップ・ワールドを繰り広げる。
アルバム・デビュー前は、The Sneetchesなどにもちょこっと参加していたりしていた。
発売当時にクロスビートかロッキン・オンで読んだ、ライターの宮子和眞氏の大絶賛のコラムが、私がこのアルバムを聴くきっかけだった。宮子氏のコラムやレビューはとても好きで、いつも参考にしていた。そして、それには殆んど外れがなかった。このアルバムも大正解だった。
彼の生み出すポップ・ミュージックは、とても洗練されていて、綺麗で穏やかでセンスがいい。
そしてどの曲も、自然と体がゆったりと横揺れしてくるような心地良さがある。実際、気が付けばいつも横揺れしている自分がいる。
最近はプロデューサー業で忙しいらしいが、このアルバムも殆んどの楽器とプロデュースを、彼自身が手がけている。
M-1 「Interactive Data」 はCDプレイヤーに入れても何も音がしない。実はCD-ROMなのである。そして未だにこの中身の正体を確認できずにいる。(誰か教えて!)
なので、リモコンでいつもM-2 「Without a Prayer」 に飛ばす。すると、アカペラのとってもキレイなコーラスが流れてくる。もうこの一曲で彼のポップ・ワールドに引き込まれてしまう。
M-5 「Hard Again」 はメロディも歌詞もちょっと悲しげで、ここで揺れていた体が一旦止まる。
そしてアルバム・タイトル・チューンのM-6 「Big White Lies」 で、再び横揺れ復活。とにかく聴いていて本当に心地良い。
M-7 「Dream Away」 はこのアルバムでいちばん好きな曲で、イントロ→Aメロ→サビ→間奏→Bメロ・・・→リフレイン→フェイド・アウトという基本的な展開の王道ポップスと言った感じの極上の曲だ。
しばらくほんわかした曲が続き、M-10 「Inside Outside」 でしっとりとした後は、M-11 「Roll On」。とっても可愛いくて、思わずステップを踏みたくなるような軽やかな曲。
アルバムのラストを飾る 「Everything I Own」 は、軽快なリズムとメロディが気持ちいい、元BreadのDavid Gatesの曲。

彼の曲には特に泣きのギター・メロがあるわけでもなく、キュンとくるサビがあるわけでもない。むしろエレクトリック・ギターの音はとても控えめで、Vo.とコーラス主体の曲が全体を占める。
コーラスは恐らく彼ひとりで多重録音している。そして、ハモンド・オルガンの音色がとても美しく、ひとりで殆んどの楽器をこなしているということもあって、バランスの良い楽曲が揃っている。
どこか懐かしく、それでいて古くさくない洗練されたポップスで、彼もBeatlesが大好きなんだなーというのが手に取るようにわかる。
このアルバムは今ではもう廃盤になってしまっているが、昨年ベスト・アルバム 「Headful of Words」 がリリースされ、1stアルバムからの曲も何曲か収録されている。

『Headful of Words : The Best of CVS Volume One』

他のアルバムも持っているのに、「Without a Prayer」 が新しいアレンジで収録されているというだけでつい買ってしまったのだが、サブ・タイトルが “The Best of CVS Volume One”、ということはVol.2もその内リリースされるのだろう・・・。楽しみだ。

誰にも真似できない

2005-11-08 | music : favorite


ゆうべはKyle Vincentでしっとりと一日を終えたので、今日はお天気も良くてあったかかったので、景気付けにweezerを聴いた。
2001年リリースの 『Green Album』。・・・と言っても、1stと同じで別にタイトルがついているわけではない。
単にバンド名の “weezer” だけ。1stがブルーだったので、『Blue Album』、そしてこの3rdが 『Green Album』 と呼ばれている。
96年に2nd 『Pinkerton』 リリース後、Riversのハーバード大学進学という突然の学業専念の為のバンド休業期間があり、5年ぶりに発表されたアルバムだ。
原点回帰とでも言おうか、1stと同じく元The CarsのRic Ocasekがプロデュースを手がけ、その仕上がりも1stの流れを受け継ぐ、ゆったりとした重厚なサウンドにポップなメロディが印象的だ。
『Pinkerton』 でちょっとダークな感じの音を全面に出し、1stのイメージとは全くと言っていいほど違った面のweezerサウンドを聴かせてくれたが、このアルバムではまたあの元気な骨太ギター・サウンドが戻っている。
1曲目の 「Don't Let Go」 から、もうこれぞweezer!というような曲、weezerにしか出せない音で、疾走感溢れるメロディにエッジの効いたぶ厚いギターが絡む。1stが好きな私は、やはりこういう音の彼らの曲が好き。
名曲 「Photograph」 はハンド・クラピングが入っていたりして、ライヴでも盛り上がった。
実は何を隠そう、今年のサマソニ後のライヴに行った時はまだこのアルバムを買っていなかった不届き者だったのだが、「Don't Let Go」 や 「Photograph」 を聴くと楽しかったあの日のライヴを思い出す。
彼ら・・・と言ってもRiversのことだが、“泣き虫ロック” という言葉が定着してしまっている。まあ、その詞が屈折していたり自虐的だったりするからなのだが、そんな詞にこんな良質のメロディが付くと、もうじっとしていられなくなる。そう、彼らのロックでポップな楽曲は、常に体が自然と揺らいでしまう。
「Hash Pipe」 の “wow~ wow~” というコーラスも彼らの特徴。
少しアコースティックな音で始まる 「Island In The Sun」 は、最後は重圧ギター・サウンドで盛り上がる、ちょっと切ない曲。
「Smile」 のゆったりとしたメロディも彼らならではのサウンドで、大好きだ。
「Simple Pages」 のイントロを聴くと、今では最新作 『make beliave』 の 「Perfect Situation」 を彷彿させる。
Riversの独特の世界観を描く詞と、彼らの作り出すポップでストレートなメロディと、本当にぶ厚いギターの音は最大の魅力。
どの曲も間奏のギターのメロディがとてもキュンとくるメロディばかりで、そんなweezerサウンドは誰にも真似できないだろう。12月の再来日が楽しみでならない。

魅惑の甘く優しい声

2005-11-07 | music : favorite


ニューヨークの記録も一段落。落ち着いてCDを聴く時間がやっと戻ってきた(笑)。
今日は、さっきから繰り返し何度も聴いているこの人のアルバムをピック・アップ。
Kyle Vincent。この名前を聞いてピンと来た人は、かなりのポップ・ミュージック通かな、と思う。
彼は、80年代に一枚だけアルバムを出して、解散してしまったバンド、CANDYのリードVo.だった。
(CANDYに関するトピはこちら
CANDY解散後も精力的に音楽活動を続け、素晴らしいポップ・ミュージックを作り続けている。
このアルバム 『solitary road』 は、2003年にリリースされた3枚目のアルバム。
Kyleの声は、それはもう、かつてこんな優しい歌い方をする人がいただろうか・・・と思うくらい、甘くて切なくてとっても優しい。
特にこのアルバムは、そんなKyleの声をじっくり堪能できるアルバムだ。
M-1 「Intro」、女の子のナレーションから始まり、美しいピアノのメロディが流れてくる M-2 「You Will Dance Again」。
心地良いVo.と美しいメロディ、それに何と言っても彼の書く詞の世界が素晴らしい。
そのわかり易く、ストレートな詞の世界は、まるで映画のワン・シーンのようにその風景を頭の中に描くことができる。
M-6 「If I Had Anything」 や M-8 「Away」 では、彼の歌い上げるハイ・トーン・ヴォイスが、切なく胸に響く。
M-8 「Let Me Let Go」 は少し軽快な曲で、壮大なアレンジでイメージが広がる、これまた美しい曲。
間にCarole Kingの 「It's Too Late」 のカヴァーを入れ、基本的なアレンジは本家そのままで、ちょっとジャジーな雰囲気に仕上がっている。
アルバムのラストを飾る 「I Sing For You」 は、まるでKyleが “今夜は君のために歌う・・・” と言ってるかのように、囁きかけるように歌う。
全体にピアノのアレンジを全面に出した美しい曲が中心で、しっとりとした大人のアルバムと言った感じで、静かな夜にじっくり聴くのに最もふさわしいアルバムだ。
Eric Carmen辺りの、ピアノを中心としたしっとりとしたポップ・ミュージックが好きならば、絶対ハマること間違いなし。
そんなKyle、なんと来年来日するそうで、今からそのライヴが楽しみでならない。

★ブックマークにある彼のオフィシャル・サイトで曲が聴けるので、是非その優しい声に一度触れてみて欲しい。

ふと聴きたくなった・・・

2005-10-20 | music : favorite


実はこんなバンドも好きだったりする・・・。
きっとその名を聞くと、“な~んだ、単なるハードロック・バンドじゃないか・・・” と思う人が殆んどだろう。
確かにその手の雑誌にしか載らなかったし、ロング・ヘアのルックスや、所々にギターのトレモロ・ピッキングがあったり、サビでシャウトするVo.なんかだけを聴くと、“ハードロック” というジャンルに入れられても仕方なかったのかも知れない。
しかし、このバンドが作り出す音は実にPOPだった。だから、私はとっても好きになった。
80年代の終わり頃から90年代半ばに活動していた、イギリス北東部の港町Scarborough出身の5人組LITTLE ANGELS。
幼なじみが集まって結成したバンドだけあって、息もピッタリだった。G.のBruce John DickinsonとKey.のJimmy Dickinsonは兄弟。
兄弟バンド・マニア(?)の私は、そこに惹かれたのもあるのかも・・・(笑)。
ちなみにこのBruce、ミドル・ネームの “John” を付けたのは、同じイギリスのメタル・バンドIron MadenのVo.ゴリラ顔男Bruce Dickinsonと全く同じ名前だったからだそう。
主に曲を作っていたのがVo.のToby JepsonとBruce。特にBruceは父親の影響で、50年代の音楽や初期のThe Beatlesを聴いて育ち、Jimi HendrixやEric Claptonなんかをお手本にギターをマスターした筋金入りのギタリスト。
そしてそのソング・ライティングのセンスもなかなかのもので、豊かな音楽環境が伺えた。
このアルバムは、92年にリリースされた3rdアルバム 『JAM』。
彼らが生み出すサウンドは、ひとことで言えば元気いっぱいの王道のブリティッシュ・ロックなのだが、そんな元気な中にもやはりイギリスのバンドならではのウェットさや哀愁が感じられ、また、ホーン・セクションやバンジョーや弦楽四重奏を入れたり、ギター・プレイのテープを逆回転させてアレンジに使ったり・・・と言った、様々な試みによって作り出されたドラマティックな楽曲が特徴で、スケールの大きなアレンジと、5歳からピアノをやっていたという弟JimmyのKey.の音でよりPOPになっている。
そしてステージでのプレイはもちろん、アルバムにも必ず彼らの大好きな歌のカヴァー曲が収録されていて、このアルバムには彼ららしくアレンジされた、The Kinksの 『Tired Of Waiting For You (So Tired)』 が収録されている。
ライヴにも何度か行ったが、特に92年にLiverpoolのクラブで観たステージでは、土地柄もあってBeatlesのナンバーをたくさんプレイして、ステージとオーディエンスが一体となって歌って踊って、ライヴが終った後もBeatlesの曲を流し、メンバーも含め、みんなで歌って踊り明かしたことを今でも鮮明に覚えている。
アメリカに進出するも成功には至らず、結局10年間の活動で解散してしまったが、今のRoosterなんかは、Angelsの延長線上にあるのだと私は思う。
私は、彼らの音楽を “ハードロック” という言葉で片付けたくなかった。
今では頻繁に聴くということはなくなってしまったが、このアルバムとひとつ前の 『Young Gods』 (これもとてもPOPでいい曲がたくさん!)は、時々ふと聴きたくなる時があり、今日はそんな夜だった。

永遠に不滅のUSパワー・ポップ・バンド

2005-10-17 | music : favorite


POWER POP好きなら、このバンドを取り上げないわけにいかない。
という訳で、今日はCheap Trick。そして数多くのアルバムから取り上げるのは、敢えてこれ、『Busted』。
88年に7年ぶりにTom Petersonが戻り、最強のオリジナル・メンバーで原点回帰した 『Lap of Luxury』 の次にリリースした、90年リリースの13枚目。
POWER POP好きはみんなきっとCheapが大好きでよーく彼らのことを知っているから、今更わざわざCheapのバイオなどをつらつら並べるのはよそう。
で、大絶賛された 『Lap Of Luxury』 ではなく、何故 『Busted』 なのか・・・。
理由はいたって単純である。後期の彼らの曲の中で、すごく好きな曲が収録されているから。
後期の代表的なヒット曲で、多くの人が好む曲と言えば、「The Flame」 であろう。
確かに素晴らしいバラードで、もちろん私もRobin Zanderの歌い上げるあのクリスタル・ヴォイスにうっとりしたもんだ。
だが、あまりにもメジャーな曲になってしまったということもあり、『Lap Of Luxury』 のアルバム自体あまり聴かなくなってしまった。
(余談だが、藤井フミヤファンの友達が、「True Love」 に対して同じ様なことを言っていた。)
『Busted』 は 商業的なアルバムと言われ、往年の彼らのファンからは評価が低く、煌びやかすぎると批判もされたが、私には結構・・・いや、とっても好きな一枚なのである。
丁度その時の来日公演も素晴らしかったというのも手伝って、かなり聴き込んでいる。
前置きが長くなったが、そのすごく好きな曲というのが、「Can't Stop Fallin' Into Love」。
ミディアム・テンポのロック・チューンで、Robinの “Yeah!” という掛け声が心をくすぐり、いつ聴いても何度聴いても “あ~やっぱりいいな~この曲・・・” という気持ちになる。
この曲を、Rod Stewartがすごく欲しがったというエピソードもある。
うーん、確かにRodのハスキー・ヴォイスに置き換えてもなかなかいい感じかも知れない。
でもやっぱりRobinのあの美しい声にはかなわないだろうな・・・。
このアルバムには、他にも傑作がたくさんある。十分聴く価値のある一枚だと思う。
パワーみなぎるビートの効いたロック・ナンバー 「Back 'N Blue」 で始まり、“Na~NaNaNa~NaNa” というコーラスを聴くだけで胸が躍る。
M-3 「Wherever Would I Be」 は、「The Flame」 に負けず劣らぬ名バラード。
タイトル曲の M-6 「Busted」 やM-8 「You Drive, I'll Steer」 なんかは、心地良いビートの効いたロック・ナンバー。
M-7 「Walk Away」 は3連のロッカ・バラードで、The PretendersのChrissie HyndeがVo,で参加している。
曲調がとってもPretendersっぽく、Robinの透き通った声と、Chrissieのドスの効いた声が掛け合って、妙にハマっている。
最後の2曲 「Had To Make You Mine」 「Rock 'N Roll Tonight」 なんかは、もう典型的な良質のアメリカン・ロック。
ひねくれた言い方をすれば、英国のミュージシャンには決してこういう音は出せないだろう。
全体的に活気みなぎるロック調の曲が多く、Bun E. Carlosのヘヴィなドラムのビートがずしんずしんと体の芯まで響き渡る。
評価が低くても、私には捨て曲なしの一枚、愛聴盤のひとつだ。
Cheapの良さは、その覚え易いメロディと何の策略もない素直な曲作りにあると言っても過言ではないと思う。
誰にでも受け入れられるPOPなメロディと、Robinの美しい声を毛嫌いする人などいるのだろうか・・・。
“Popular” という言葉を敢えて日本語にして、“大衆” という意味が最も相応しいかも知れない。
正に大人から子供まで、そして多くのミュージシャンに愛されている・・・と言ったところだろうか。
でも、それが今でも現役でバリバリやっている理由のひとつなのかも知れない。
歳を重ねてもいつまでも王子様のような美しいRobinと貴公子Tom(こればかりは男性にはわからないと思うが・・・笑)、それに、あの名物オヤジRick NielsenとおとぼけBun E.がいる限り、Cheapは永遠に不滅に違いない。

ちなみに、RobinがHeartのAnn Wilsonとデュエットした、映画 『Tequila Sunrise』 のテーマ・ソング 「Surrender To Me」 は究極のラヴ・ソングで、外せない名曲である・・・。

優しさと憂い

2005-09-26 | music : favorite


Soul Asylum、The Replacementsファンの私にとって、マスト・アイテム的なバンドThe Jayhawks。
Soul AsylumやThe Replacementsと同じMinneapolis出身のカントリー・ロック・バンドで、そのハーモニーは何とも言えないくらい美しい。
惜しくも今年解散してしまったが、中心人物であるGary LourisとMark Olsonが創り出すコーラス・ワークは絶品。
1986年にデビューし、インディーズで2枚アルバムをリリースしたあと、92年リリースのこの 『Hollywood Town Hall』 がメジャー・デビュー第一弾となる。
途中Markが抜け、Garyはいろいろな壁にぶち当たったり模索しながらも、最終的にMarkの不在を感じさせない、素晴らしいJayhawksサウンドを確立させた。
またGaryは、Soul AsylumのDan MurphyやThe ReplacementsのChris Marsらと共に、GOLDEN SMOGというユニットを結成し、今も活動している。
私はSoul Asylumを通してGOLDEN SMOGを知り、そしてThe Jayhawksを知った。

さて、このアルバム。ハーモニカやファズ・ギターを巧みに生かした音は、例えばテキサス州辺りのアメリカ南部の、バンジョーが陽気に鳴り響くカントリー・ミュージックとはひと味違う。
冬はとても雪深く、極寒のMinneapolis。そんな土地柄もあるのか、彼らの音はしっとりと哀愁が漂う。
そしてしつこいようだが、ハーモニーの美しさにとても心が癒され、落ち着く。
さほどカントリー・ミュージックが好きでもないのだが、彼らの音楽の中には優しさと憂いが満ち溢れていて、聴き手の気持ちをゆったりとさせてくれる。
そして、POPなメロディも欠かさない。とても奥深く、味わいのある音を聴かせてくれる。
綺麗なハーモニーと優しいサウンドが、都会の喧騒を忘れさせてくれて、ゆったりとした時間が流れて行く・・・。
なんかこういう、地味だけどいいバンドが次々と解散していくというのは、とても残念で淋しい・・・。

英国テイスト

2005-09-20 | music : favorite


晴れた日のイギリスの空には、カリフォルニアのような抜けるような青空はない。
彼らの音楽には、晴れてはいるが、ちょっと湿ったイギリスの空を思わせる。
93年に 『the dodgy album』 でデビューした、dodgy。
Nigel Clark(Vo&B)、Andy Miller(G)、Mathew Priest(Dr)の3人で、90年にLondonで結成されたdodgyは、当初、DJ ClubとLiveを組み合わせた “dodgy club” というイベントを企画&運営して注目を集め、それが後にレコード会社の目に留まり、デビューに至った。
このデビュー・アルバムの完成度の高さと言ったら、それはもう本当に新人とは思えないほどのクウォリティの高い作品で、巧みなコーラス・ワークに、とても丁寧にアレンジされた一曲一曲が冴え渡る、極上のアルバム。
BeatlesやStones、The Kinks、The Whoと言った伝統的ブリティッシュ・ロックと、Buzzcocks 、Orange Juice、Aztec Cameraなどの、パンク・ムーヴメント以降のPOPSを掛け合わせたような、美しいメロディとドラマティックなサウンド。
少し哀愁を帯びていて、爽やかなんだけど切ない感じがとても印象的だ。
そして、彼らのもうひとつの魅力は、常に遊び心を忘れないというところ。
アルバムのジャケットや、スリーヴのデザインが実に凝っていて楽しい。
94年にリリースした2nd 『Homegrown』 も、1stに劣らず、非常に完成度の高いサウンドで、英国テイストが満ち溢れている。
どの曲を聴いても、そのハーモニーはとても温かくて、ゆったりとした気分にさせてくれる。
なんか聴いているだけで、自分がイギリスに居て、ミルク・ティ片手にスコーンを食べながら、昼下がりのティー・タイムを味わっているような、落ち着いた気分になれる。
3rdアルバム 『Free Peace Sweet』 をリリースしたあと、ソング・ライターでもあるNigelが脱退してしまい、 残りの二人はBernard Butlerのバックをやったりしたあと、99年に新しいVo.とGを迎えて新生dodgyがスタートしたが、パッとしなかったのか、その後バンドがどんな軌跡を辿ったのかはわからない。
Nigelの声が好きだった私は、Nigelが抜けたあとのdodgyを知らない。

初来日の時、池袋HMVで行なったアコースティックのインストア・ライヴにめちゃくちゃ感動したのを、今でも記憶している。
Nigelは今年の春、新しいバンドでアルバムを出すというニュースを何かで読んだが、定かではない。
今頃彼は何をしているんだろう・・・。

いつまでも変わらぬままで・・・

2005-09-17 | music : favorite


このジャケット、いつ見ても可愛いくってなごむ。
飾っておきたくて、アナログ盤も買ったくらいだ。
Velvet Crushの94年のアルバム 『Teenage Symphonies To God』。
Paul Chastain(Vo.&B)、Rick Menck(Dr)を中心に、前身のChoo Choo Trainを経て、ギタリストの入れ替えはあったものの、今も変わらずステキなPOPソングを届けてくれている。
昨年は待望のアルバム 『Stereo Blues』 をリリースし、Matthew Sweetと共に久々の来日公演も行った。
彼らの音は、元気いっぱいのパワー・ポップと爽やかなギター・ポップを混ぜ合わせたような感じで、少しカントリーの匂いがする。
彼らのアルバムの中でも特に好きなこのアルバムには、捨て曲なしの12曲の極上POPソングが詰っている。
プロデューサーは、アメリカのインディーズ・ギター・ミュージック・シーンには欠かせない、Mitch Easter(dB's、The Sneakers)と、彼ら自身。
M-1 『Hold Me Up』 から爽快なメロディが広がる。
Paulのちょっとかすれた声が、甘酸っぱい世界を描く。
力強いギターのメロで始まるM-2 『My Blank Pages』。
M-3 『Why Not Your Baby』 は、ex-The ByrdsのGene Clarkのカヴァー。
そしてM-4 『Time Wraps Around You』 はとってもセンチメンタルな曲で、“時間が君を包んでくれるよ 僕も君を包んであげるよ そう、僕はここにいるよ” というサビの歌詞がたまらない。
M-5 『Atmosphere』 でぐわ~んとぶっ飛ばしたあとは、 またまたセンチメンタルなM-6 『#10』。
ジャケがアナログ盤を意識したかのようなデザインになっているように、この曲でA面が終わりって感じの曲だ。
そうすると、M-7 『Faster Day』 がB面一曲目に該当する曲。
ペダル・スティールの音色が綺麗で、抒情たっぷりのカントリー調の緩やかな曲に、思わず体も揺れる。
なが~いエンディングのMatthew Sweetが提供したM-8 『Someting's Gotta Give』 、M-9 『This Life Is Killing Me』 と、ドライヴィン・ポップが2曲続き、ゆったりとしたM-10 『Weird Summer』、甘くて切ないメロディのM-11 『Star Trip』 を挟み、再びカントリー調のM-12 『Keep On Lingerin'』 で終る。
全体にアコースティックな感じのこのアルバム。
彼らがリスペクトしているミュージシャンも、自然とわかってくる。
そして、いつまでも変わらぬままで、ベタな言い方だけど、胸がキュンとなる青春POPソングを奏でてくれる。

ロックン・ロール・ダンディ

2005-09-09 | music : favorite


1991年のLIVEを最後に、惜しまれつつも解散してしまったThe Replacements。
デビュー当時の音はパンク色が強かったが、次第にその音は親しみやすいアメリカン・ロックに変化していった。
しかし、ポップな中にも荒削りなガレージ・ロックの匂い溢れるサウンドは、いろんなアーティストに多大な影響を与えた。
The Replacementsは通称The Matsと呼ばれていて、ファンにはそっちの名前の方が馴染みがある。
私とThe Matsとの出会いは、85年にリリースされた 『Tim』 だった。
確かガレージ・ロック好きの男の子に薦められて貸してもらったCDだった。
ガレージ系未体験だった私は、勝手にパンクと同系の音楽だと解釈していて避けていたのだが、“ポップ・ミュージックが好きなら絶対気に入る” と太鼓判を押され、そして初めてThe Matsを聴いて以来、私の音楽生活には欠かせないバンドとなってしまった。
そして、私の大切なバンドSoul Asylumに出会わせてくれたのも、The Matsを知ったからこそだ。
The Matsのことを書くには、いいアルバムが多すぎるので、改めてゆっくりとひとつずつ取り上げて行きたいと思う。
なので今日はそのThe MatsのVo.&Gで、ソロ・アーティストとして活動しているPaul Westerbergが今年リリースしたベスト・アルバムを取り上げることにする。

バンド解散後のPaulの次のプロジェクトは、Seattleを舞台に、とあるバンドの成功と挫折を描いた映画 『Singles』 のサントラへの曲提供だった。
映画の舞台と同じSeattle出身のPearl Jam(映画にも出演)、Soundgarden、Mudhoney、Alice In Chains、Screaming Trees、etc...と言った当時大全盛期だったいわゆるグランジ・バンドが参加したこのサントラは、かなり話題になり、ヒットした。
そんなSeattle勢の中で、Minneapolis在住のPaulは 「Dyslexic Heart」 と 「Waiting for Somebody」 の2曲を提供し、中でも 「Dyslexic Heart」 は、イントロの “Na~NaNaNa~” のキュートなコーラスと、軽快で覚え易いメロディが絶賛され、ヒットした。
その 「Dyslexic Heart」 が一曲目に収録されているこのベスト・アルバム 『The Best Of Paul Westerberg / Besterberg』 には、全20曲ぎっしりとカッコいいR&Rナンバーが詰っている。
ソロになってから、これまで6枚のアルバムをコンスタントにリリースしているPaul。
彼の曲を20曲選曲するのは、かなり至難の業だろうし、“何故、あの曲が入ってないの?” と、ベスト盤につきものの不満もあるが、全体的にすご~くまとまった流れになっていて、Paul初心者にも十分楽しめる一枚に仕上がっている。
The Matsのソング・ライティングもPaulだったので、そのサウンドはバンド時代の流れを受け継いではいるが、よりシンプルで骨太くてカッコいい、正に大人の男のロックが駆け抜ける。
そして正に、“3分間のロックン・ロール集大成” と呼べる、ブラボーなアルバムで、“ヒューヒュー” と指笛でも鳴らしたくなるほど、めちゃくちゃカッコいいロックン・ロール・アルバムだ。(褒めすぎ?)
全20曲を一曲ずつ分析して行くのはしつこいので止めるが、M-2 「Knockin On Mine」 やM-5 「Things」 などは、シンプルなドラムスのビートとギターのカッティングが、The Matsをとても彷彿させる。
M-3 「World Class Fad」 でしっとりと歌うPaulの声は、ちょっと雰囲気の違う低音ヴォイスがとても渋く、アコギの美しいメロディに気持ち良く乗っかっている。
全曲The Beatlesのカヴァー・ソングで綴られた映画 『I Am Sam』 のサントラに収録されている、Beatlesっぽさを感じさせないM-15 「Nowhere Man」 も聴き応えあり。
未発表曲のM-19 「All That I Had」 は、アコースティックでとても綺麗なミディアム・ロック。
彼のサウンドには、例えばイギリス人には絶対出せない音がある。
どういうところが・・・というのは言葉で上手く表現できないし、アメリカン・クラシック・ロックと言うにはあまりにもチープな表現だが、一度でも彼の音楽を耳にしたことのある人なら、わかると思う。

男性から見ても女性から見てもいつまでもカッコ良くてダンディなPaulも、今年の大晦日で46歳になる。
そして今でも精力的にツアーを続け、ステキにロックし続けている。
是非、日本にも来てそのダンディなロックを聴かせて欲しい。