
このバンドに出会ってからしばらくの間、彼らはてっきりイギリスのバンドだと思い込んでいた。
ルックスはもちろん、そのファッションもサウンドのあちこちから感じられるマージービートも、ギターの音もコーラス・ワークも、その時買った1stアルバムのジャケも・・・いたる所にUKの香りが漂いまくっていた。
しかし彼ら、“3分半のポップ・ソングの達人” という異名を持つFountains of Wayneは、4人ともNew York出身だった。
黄金のソング・ライティング・コンビとも言われるChris CollingwoodとAdam Schlesingerが作り出すメロディは、甘くて切なく、そして爽やかで気持ちがいい。
60年代風の明るくてキュンとなるメロディには、ぐぐ~っと惹きつけられる。
この2ndアルバム 『Utopia Parkway』 のジャケの青空のように、澄み切ったコーラスが織りなすハーモニーもきらめいている。
先日リリースされた、シングルのB面曲やアルバム未収録曲を集めた2枚組アルバム 『Out-of-State Plates』 も、澄み渡る青空のジャケだ。
1stもいいが、私はこの99年にリリースされた2ndが大好き。
アルバム・タイトル曲M-1 「Utopia Parkway」 から、途切れることなく心地良いナンバーが続く。
しかしそれは、決してワン・パターンではないのだ。
ChrisとAdamはキーボードもプレイし、オルガンやムーグが効果的に使われている。
そのキーボードが、このバンドの音にエッヂを効かせている。
M-3 『Denise』 はシングル・カットもされた、軽快でエレクトリックなナンバーで、シンセとハンド・クラッピングが印象的で、80年代のPOPSの匂いもする。
M-5 『The Valley Of Malls』 では、厚みのあるギターとキーボードが上手く絡み合い、ちょっぴりダークにそしてリズミカルに流れる。
そしてM-6 『Troubled Times』。ギターの音もメロディもどれをとっても極上のPOPソングで、本当に爽やかで心地良い気分にしてくれる名曲。
M-7 『Go, Hippie』 でガラッと曲調が変わり、続く 『Fine Day For A Parade』 では、緩やかなメロディで安らぎを与えてくれる。
この曲では、コーラスにRon Sexsmithが参加。とても綺麗なコーラスを聴かせてくれる。
ふぅ~っとゆったりとした気分を味わったあとのM-9 『Amity Gardens』 には、どこか懐かしい可愛い音が心地よく流れてくる。
そして、このアルバムで最もUKっぽい音のM-10 『Laser Show』と、軽快なM-11 『Lost in Space』 を聴くと、彼らもBeatlesが好きなんだな~ってつくづく思う。
M-12 『Prom Theme』 ではストリングスも入り、とても綺麗で切ないバラードを奏で、M-13 『It Must Be Summer』 で爽快に飛ばし、最後の 『Senator's Daughter』 でしっとりと締めくくる。
このメリハリが、ChrisとAdamのセルフ・プロデュースならではの選曲だろう。
全くと言っていいほど、捨て曲がない。
2003年には、3rdアルバム 『Welcome Interstate Managers』 収録の 「Stacy's Mom」 がスマッシュ・ヒットし、グラミー賞にノミネートもされ、翌2004年にはアメリカ独立記念日のフェスティバルでヘッド・ライナーを務め、その年、つまり去年のサマソニに出演した。
バンド名が、ニュージャージ州のWayneという街に実際にある噴水小売店の名前から取ったというのもなんだか微笑ましい。
私はほとんど国内盤を買わないが、先日CDショップで 『Out-of-State Plates』 の国内盤を見て、その帯に書かれた “すごく長時間のコンピレーションになってしまったけれど、どうかお許しを。あまりのめり込みすぎず、まあ適当に楽しんでほしい・・・。” という彼らからのメッセージも、らしくていいなーと思った。(ちなみにこの国内盤は、CCCD)
また、Matthew SweetやJonathan Richmannが参加し、Ray DaviesとblurのDamonがデュエットして話題になった 「Waterloo Sunset」 が収録されたThe Kinksのトリビュート・アルバムでは、「Better Things」 でアルバムの一曲目を飾っている。