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売れない作家 高村裕樹の部屋

まだ駆け出しの作家ですが、作品の情報や、内容に関連する写真(作品の舞台)など、掲載していきたいと思います

巨大地震

2014-08-30 21:05:48 | 日記
 先ほどまでNHKの『巨大災害』という番組を見ていました。地球温暖化により、最近は大きな災害が増えています。
 今後日本で起こりそうな災害、巨大竜巻や深層崩壊のシミュレーションがありましたが、怪獣映画のゴジラやキングギドラの襲撃を遙かに超える被害が出そうです。
 このあと、スーパー台風や巨大地震、火山大噴火について放送があります。明日と9月20日、21日の放送です。
 今日の『異常気象』を見逃した方は、9月14日(日)午前0時50分~2時03分(13日深夜)から再放送があるそうです。

『幻影2 荒原の墓標』第33回

2014-08-29 16:32:19 | 小説
 8月も今日を含めてあと3日。最後の土日も天気が不順のようです。
 台風12号、11号の襲来以来、それまでの猛暑が一転、夏がどこかに吹っ飛んでしまったようです。
 連日の悪天候、豪雨など、ここ数年猛暑、酷暑に襲われた日本列島でしたが、今年は太平洋高気圧があまり張り出してこず、雷雨や局所豪雨などが頻繁に起こっています。
 私の友人も、今年は日照時間が少なく、農作物の被害が多いと困っています。
 これから本格的な台風シーズンになりますが、大きな被害をもたらさないよう、祈るばかりです。

 今回は『幻影2 荒原の墓標』第33回です。いよいよ大詰めが迫ってきました。


            4

 山下和男、佐藤義男の事件の合同捜査本部では、秋田宏明のことで、大岩康之を事情聴取することにした。これまで秋田宏明の動向が不明だったため、大岩を聴取することはしなかった。だが、秋田が殺害されていたことがわかり、そうもいっていられなくなった。
 秋田が詐欺グループの一員であったかどうかはまだ確定していない。ただ、秋田は殺害された徳山久美と知り合いだった模様で、詐欺グループの一員であったことは間違いないと思われる。そして、秋田宏明の妹である裕子の証言により、大岩と秋田は知り合いだったということがわかっている。
 小幡署、篠木署の合同捜査本部、そして上松署の捜査員二名も合流し、いよいよ大岩の任意同行に踏み切ろうとした矢先の九月六日早朝、大岩を監視していた柳、戸川両刑事より、大岩が行方不明になったという連絡が入った。昨夜は確かに自宅にいたことを確認していた。二人は交代で終夜監視していたのだが、ちょっとした隙に自宅を抜け出したらしい。ベテランの二人らしからぬミスだった。倉田警部は 「たわけ!」 と二人を怒鳴りつけたが、もう後の祭りだった。

 そのころ、大岩は武内の車で、豊田市内を走っていた。今は足助町(あすけちょう)のあたりだ。
「大丈夫か? サツの奴らにはつけられてないだろうな?」
「ああ、大丈夫だ。監視が交代をする隙を突いて、脇の非常階段から抜け出してきた。尾行していないことも確認している。おまえの家に行くまでに、大回りして、タクシーを何度も乗り換えてきた。部屋も証拠になりそうなものはすべて処分してある。今ごろあいつら、ほぞを噛んでるだろうな」
大岩は愉快そうに笑った。
「しかし、とうとう秋田の死体が、出てきたんだろう」
「意外と早く見つかってまったな。もっと山の奥深くに埋めとくんだったな」
 大岩はしくじったとばかりに言った。
「だが、あれ以上奥に運ぶといっても、大変だぞ。夜にしかあんな作業はできんし。熊か何かがほじくり出してまったんだろ」
「しかし、なんであんなに早く、あれが秋田だということがわかってしまったんだろうな。死体は下着だけにして、身元がわからんようにしといたのに。久美なら背中のいれずみで身元が判明するかもしれんけど、秋田には特徴になるような傷なんかもなかったし。それに死体はかなり腐乱して、白骨化しかけとったんだろう。まさに腐乱ケン死体ンだな。それから、サツは俺と秋田の関係も察知したようだ。やはりソープで秋田の妹にうっかりしゃべってまったのがいかんかったかな。失敗だった」
 大岩はフランケンシュタインをもじった駄洒落を交えて、滔々(とうとう)と自分の失敗を、自虐的にしゃべっていた。ふと窓の外を見ると、車はかなり山の中を走っていた。
 足助町はトヨタ自動車の城下町である豊田市だとはいえ、前年四月に豊田市に編入される前は東加茂郡(ひがしかもぐん)足助町で、山や森林の緑が豊かな町だ。紅葉の名所といわれる香嵐渓(こうらんけい)が有名だ。
「今どのへんだ?」
「今、足助あたりを走っている。香嵐渓から少し奥の方に入った、綾渡(あやど)というところだ。ここらまで来れば、もうサツも追ってこんだろう」
「そうだな。このへんなら安心だ。少しどこかで休憩して、この先のことを相談しよう」
「この近くに、大きな寺があるから、そこで休憩するか」
「おまえ、よく知っとるな。このへんに来たことあるのか?」
「ああ。前に寧比曽岳(ねびそだけ)に登ったことがあるからな。そのときに、その寺の駐車場に車を駐めさせてもらった」
「へえ。元やくざのおまえに、登山の趣味があったとはな」
 元やくざと言われ、武内は大岩をにらんだ。
「あ、すまん。やくざと言ったのはわるかった。謝るよ」
「まあ、やくざも詐欺師も大して変わらんよ。かえって詐欺師のほうが、年寄りを泣かせるだけ罪深い」
 武内は無表情に呟いた。車を近くの平勝寺(へいしょうじ)の広い駐車場に入れ、二人は車を出た。
「久しぶりだから、ちょっとそのへんをぶらつかないか? 今日は天気もいいし」
 武内は大岩を誘った。
「なかなかいいところだな。それじゃあちょっとだけ歩こうか。ただ、山まではとても無理だぞ」
 大岩も賛成した。武内はさっさと前を歩き、薄暗い森の中へ入っていった。
「なんか変なところに来てしまったぞ」
「大丈夫だ。寧比曽岳への登山道だ。このあたりは東海自然歩道にもなっている。登山道というのは、こんなもんだ」
 そう言って、武内は立ち止まった。
「そして、ここがおまえの死に場所になるんだ」
 武内のその言葉に、大岩は驚いた。
「おい、変な冗談はやめろ。言っていいこととわるいことがあるぞ」
「冗談ではない。おまえには北村弘樹の小説にあるように、心臓をナイフでひと突きにして死んでもらう」
 そう言い終わらないうちに、武内は大岩の顔面にパンチを叩き込んだ。その強烈な一撃に、大岩は運動能力を失った。
「な、なんでだ? なんで俺を殺そうとするんだ? 俺たちは仲間だろ?」
 地面に這いつくばった状態で、大岩は武内に尋ねた。
「おまえたちはその仲間であるはずの俺をなぶり殺しにした。もう詐欺や殺人はいやだから、組織を抜けたいと言った俺を、リンチで殺した」
 武内は倒れている大岩を、さらに踏みつけた。
「おい、武内、おまえ、何わけのわからんことを言っとるんだ!」
「俺は武内ではない。秋田だ」
「バ、バカな。なんでおまえが秋田なんだ?」
 大岩は武内の凶暴さに満ちた目を見て、怯えた。
「俺は秋田だ。おまえたちになぶり殺しにされた秋田だ。俺は今、武内の潜在意識、顕在意識を乗っ取り、肉体を支配している」
「そ、そんなバカなことが……。おまえは秋田の幽霊なのか? 今まで仲間を殺したのは、おまえの仕業(しわざ)か?」
「そうだ。死ぬ前に、冥土の土産(みやげ)に教えてやろう」
 武内、いや、秋田はこれまでの事件はすべて自分がやったことだと告白した。
 昨年の晩秋、南木曽岳の森で死のうとしていた北村に取り憑き、その潜在意識に働きかけて、『鳳凰殺人事件』を書かせた。もっとも小説を書かせたといっても、秋田に小説を書く才能はない。作品を書いたのは、北村自身だった。ただ登場人物に、徳山久美という名前を織り込ませるよう、作用した。
 そして通りすがりの男に憑依(ひょうい)し、久美を絞殺した。その男は、日ごろの欲求不満から、人を殺傷してみたいという歪曲した欲望を抱いていたから、操りやすかった。いくら怨念霊でも、健全な精神力を持っている人間を動かすことは困難だ。
 そして次の作品、『荒原の墓標』でも、山下、佐藤、大岩の三人の名前を使わせた。以前武内が怯えていた、武内宿禰(たけのうちのすくね)の墓は北村の発案であって、秋田の霊は関係なかった。
 わざわざ北村の作品で殺人予告をさせたのは、久美以外の三人の恐怖をあおるためだった。それは成功した。最初の被害者の久美は、殺害予告に気付かなかったが、残る三人は、今度は自分の番か、という恐怖に打ち震えた。週刊誌などで騒ぎ立てられるたびに、恐怖心をかき立てられ、怯えた。『荒原の墓標』で予言された残る佐藤、大岩の二人は誰か? などという興味本位のワイドショーもテレビで放映された。久美に対しては、せめて怯えることがないうちに死なせようと、最初の犠牲者に選んだ。それは秋田の屈折した配慮だった。
 山下以降は通りすがりの者ではなく、武内に取り憑き、殺害した。武内は肉体は頑強でも、精神的にもろいところがあり、憑依しやすかった。山下、佐藤もまさか武内が殺人者だとは思ってもいなかったので、油断して簡単にやられた。
 佐藤は凶暴で体力もあったが、油断していたため、同じように屈強な武内に不意を突かれ、あっけなく倒された。身動きできなくなった山下と佐藤は、秋田の執念と怨念を聞かされ、恐怖に震えながら絶命した。
 ただ、北村弘樹にはできるだけ迷惑をかけないように、アリバイがはっきりしているときを選んで犯行をしていた。アリバイを作るために、文学舎の担当者に突然北村に電話をかけさせたのも、秋田の精神感応の通力(つうりき)だった。しかし秋田はもう十分に北村に迷惑をかけていることまでは、考えていなかった。とはいえ、秋田が北村に憑依しなければ、北村は致死量の睡眠薬を飲み、もうこの世に存在していなかったことは確実であった。結果的には、秋田は北村を救ったことになる。
「そうか。すべてはおまえ、秋田のせいだったのか。でも、おまえを殺したのは佐藤だぞ。俺はあのとき、おまえに指一本触れてない。なのに、なぜ俺まで殺すんだ」
「指一本触れてないだと? そんなことを言うなら、なぜ佐藤を止めてくれなかったんだ? おまえも山下も、久美も何も言ってくれなかった。おまえと山下は『やっちまえ』と佐藤をけしかけた。俺は久美に好意を寄せていたんで、せめて一言やめてと言ってくれれば、久美は殺さないつもりだった。だが、久美は何も言わなかった。怖くて意見できなかったんだろうが、好意を持っていたからこそ、よけいに何も言わなかった久美を恨んだ。武内だけは『もうそれぐらいにしとけ』と止めてくれたがな。しかしもう少し早く止めてくれれば、俺は死なずにすんだんだ」
 秋田は大岩に恨み言を言った。自分に直接手を下した佐藤。そしてそれを黙って見ていた大岩と山下、久美。特に大岩と山下は制裁を受けている秋田を見てほくそ笑み、 「もっとやっちまえ」 と佐藤をけしかけた。
 元やくざの武内はけんかのプロでもあり、加減ということを知っている。しかし、格闘家だった佐藤は、やみくもに相手を倒すことだけに徹していた。だから相手をKOするか、ストップがかかるまで、攻撃をやめようとはしなかった。武内はそれ以上やれば危ないというところで、もうやめろと声をかけた。けれども佐藤は武内の制止を無視して、秋田を殴り続けた。同じ詐欺グループのメンバーでも、佐藤は年上の武内に対抗心を燃やしていた。佐藤はガチンコで戦えば、プロの格闘家であった俺のほうが絶対に強い、と自負していた。武内が身を挺して止めたときには、もう手遅れだった。
 秋田は久美が止めに入ってくれることを期待した。だが久美は何も言ってくれなかった。いや、恐ろしくて声が出なかったのだ。せめて 「やめて」 とただ一言さえかけてくれればと、秋田は久美を恨んだ。お互い好意を抱(いだ)き合っていたのに、そのことが秋田を絶望させた。ただ、今になって、秋田は久美まで死なせてしまったことを後悔していた。久美を殺すべきではなかったと、悔やんでいた。
 久美はネクタイで首を絞められ、断末魔の苦しみの中で、 「ヒロちゃん、ごめんなさい。あなたを助けられなくて」 と呟いた。いや、久美は言葉を発することができない状態だったので、心の訴えが聞こえたのだ。ひょっとしたら、久美は山岡の背後に秋田の気配を察していたのかもしれない。心からの叫びである以上、嘘偽りではあり得ない。命乞いではない、謝罪の言葉を聞いたとき、秋田は力を抜こうとした。久美を助けるつもりだった。しかし、秋田の意志に逆らい、山岡は久美の首を絞める力をさらに強めた。山岡の潜在意識に潜んだ、人を殺したいという歪んだ欲求が、秋田の制止を拒絶したのだった。秋田は実行者に山岡を選んだことを悔やんだ。
「もうこれまでだ。これ以上ぐずぐずしていれば、ハイカーが通る恐れがある。死んでもらうぞ。今日は警官どもが、おまえを任意同行するつもりだったようだが、警察に行っていれば、助かったかもしれんものを。武内には司法の裁きを受けさせる。三人殺せば、死刑は間違いないだろうがな。詐欺や強盗殺人の罪もあるし」
 秋田はズボンのポケットからナイフを取り出した。刃渡り一〇センチほどの果物ナイフだ。
「や、やめてくれ。謝る。謝るから許してくれ。俺たちは仲間じゃないか。助けてくれ!」
 大岩は平身低頭した。逃げようにも、先ほど食らった強烈な一撃で、まだ足がふらついていた。

 その日の午後、小幡署に大岩の遺体が見つかったという連絡が、加茂(かも)署から入った。筈ヶ岳(はずがたけ)へ登る予定の登山者が大岩の遺体を発見した。北村の作品にあるように、心臓を鋭いナイフで貫かれていた。
 筈ヶ岳は寧比曽岳の西北西約二キロのところにある、標高九八五メートルの山だ。一一二一メートルの寧比曽岳よりは低く、樹林のため、頂上からの展望にはそれほど恵まれていない。とはいえ、登山道は東海自然歩道となっており、危険も少なく、豊かな自然を満喫できる。綾渡から寧比曽岳に登る場合、筈ヶ岳のすぐ近くを通るので、ちょっと足を伸ばすのもよい。
 被害者が所持していた運転免許証から、身元はすぐに判明した。小幡署が大岩を指名手配していたため、小幡署にも連絡が入った。小幡署の刑事たちは、大岩を取り逃がし、さらに殺されていたことを悔しがった。北村は警察の監視下にあり、犯人ではあり得ない。大岩を逃がした柳と戸川が、加茂署に向かった。
 現場付近の平勝寺の駐車場に、犯行があった時間帯に、黒いティーダが駐まっていたという目撃情報があった。残念ながら、目撃者はナンバーまでは記憶していなかった。この車は犯人や被害者が乗ってきた車かもしれない。
「くそ、やられてまったか。大岩を訊問できりゃあ、事件も進展しとったかもしれんのによ」
 鳥居は残念がった。しかし鳥居は大岩を取り逃がした、柳と戸川を責めるようなことは決してしなかった。二人にさんざん悪態をついた、倉田警部とは違っていた。倉田は上松署から来た二人の捜査官の手前、このような失態を犯した柳と戸川に、小幡署の恥さらしだと、くどくど嫌みを言った。鳥居は気落ちしていた二人を、 「茹(ゆ)で蛸(だこ)親父の言うことなんか、気にするな。加茂署で何かつかんで、茹で蛸親父を見返したれよ。元気出しゃあ!」 と軽く背中を叩いて励ました。三浦はそんな鳥居に全幅の信頼感を寄せた。
 鳥居と三浦を始め、八人の警察官や検察官が令状を取り、大岩が住んでいた名古屋市千種区(ちくさく)のマンションを家宅捜索した。マンションの管理人に解錠させ、立ち会ってもらった。
 大岩の部屋は、さすがに手がかりになりそうなものは処分してあるようだった。写真、ノート、メモ書きなどを押収したが、これといって有力な手がかりは見つからなかった。三浦は本棚にあった本も、一冊一冊丹念に、すべてページをめくった。そこには北村弘樹の『鳳凰殺人事件』と『荒原の墓標』があった。三浦は『荒原の墓標』の中を見てみた。すると、本のページの間から、メモ書きが見つかった。まさに大岩が殺害されるシーンを描写したページだった。そのメモ書きには、東区のマンションの住所や部屋番号、電話番号が記してあった。三浦はその番号に電話をかけてみた。しかし何度呼び出しても、むなしく呼び出しのコール音が響くだけだった。そのマンションの住所が、久美が絞殺された出来町公園の近くだということに気付いた三浦は、事件と何か関連があるのではないかと考えた。三浦と鳥居は、他の捜査官の許可を取り、そのマンションに急いだ。
 そこは東区出来町(できまち)にあるライフパレス徳川という、築一五年以上を経た、六階建てのマンションだった。出来町通りから少し北に入ったところで、都心の栄や、大曽根に出るのに便利な位置にある。ここは美奈の生家である、光照寺の近くだということに三浦は気付いた。
 マンションの管理人に身分を告げ、鳥居と三浦はその入居者についての話を聞いた。まだ事件との関係もわからない段階で、部屋の捜索令状は取れなかった。
 マンションのその部屋は分譲ではなく、賃貸となっており、借り主は高田康夫となっていた。
「高い安いで、何となく偽名臭いがや」と鳥居がいぶかった。三浦も同感だった。
 その部屋には男女数人が出入りしていたが、ここ二ヶ月ほど、借り主の高田には会っていないそうだ。ちょうど山下が被害に遭った時期に符合する。出入りしていた女性というのが、徳山久美の特徴によく似ていた。家賃は定期的に振り込まれているため、管理人としては高田にしばらく会っていないことは、あまり問題にしていなかった。三浦は賃貸契約のときに取った住民票などがあれば、見せてもらえるように頼んだ。令状がないので、拒まれれば強要はできないが、管理人は相手が刑事なので、応じてくれた。賃貸契約書の原本は不動産会社が保管しており、管理人の手元には運転免許証のコピーしかないとのことだった。
 コピーはかなり鮮明で、顔写真が何となく山下に似ていた。全くの同一人物ではないが、山下がちょっと顔を変えれば、そんな感じになる。三浦は管理人室のファックスを借り、そのコピーを県警の石崎警部宛に送った。
 しばらくして三浦の携帯に、石崎よりその免許証は偽物であるとの報告があった。高田康夫という名前も偽名だった。免許証の番号に、その氏名の者が該当しない。記載されている本籍も住所も虚偽のものだ。実物を見ていないので何とも言えないが、ファックスで送られた画像を見る限り、かなり精巧に偽造されており、素人目には偽物と判別するのはむずかしいだろうということだった。
 三浦はその免許証が偽造であることを管理人に告げ、犯罪に関係している可能性があるので、部屋を見せてもらえるように頼んだ。管理人は驚いて、三浦の要請に応えた。
 高田の部屋は四階四〇二号室だった。管理人はスペアキーでドアを開けた。部屋は2LDKで、リビングにあるテーブルの上にパソコンが置いてあった。
 テーブルの上に何気なく置いてあったUSBメモリーを目にした鳥居が、 「おい、トシ、こいつに何か入っとるかもしれん。ちょっと中見てみよまいか」 と三浦を促した。鳥居は近くが見づらくなっているので、パソコンの操作を三浦に任せた。令状もないのにあまりやり過ぎると、あとあと問題になるかもしれないが、三浦は何となく胡散臭いものを感じた。それでパソコンを起動して、USBメモリーの中を読み出した。ついている指紋などを消さないよう、ハンカチにくるんで、そっと作業をした。
 三浦は「jewel」というファイルを開いてみた。そのファイルは、何かの見取り図のようだった。その見取り図には、金剛堂と記入してある。金剛堂、と呟いていた三浦は、ふと思い当たった。
「鳥居さん、金剛堂というと、確か去年の夏、強盗に遭って、警備員が一人殺された店ですよ。繁藤の事件で協力した、神宮署が担当している事件です。まだ解決していないはずです」
 さらにファイルを開いてみると、例の詐欺グループが犯したと思われる詐欺事件のことが、次々と出てきた。
「おい、トシ、こいつはどえりゃあもんが出てきてまったがや。ここは詐欺グループの拠点みたいだな。こんな重要な証拠物件を残しとくとは、つくづくとーれーやつらだがや」
 鳥居はあきれてそう言った。しかしそれは、武内に憑依した秋田が、意図的にやったことだ。刑事に監視され、動きがとれない大岩が、武内にこの部屋の証拠物件の隠滅を依頼した。武内は 「処分しておいた」 と言いながら、大切なUSBメモリーを意図的に残してきたのだった。USBメモリーだけではなく、ほかにもいくつかの証拠書類などを残しておいた。大岩のマンションにこの部屋のメモ書きを残したのも、秋田だった。秋田に憑依された大岩が、無意識のうちにメモ書きを挟んだのだった。
 久美はメガネをかけ、髪型を変えていたので、マンションの管理人は、その被害者がこの部屋に出入りしていた女性だとは気づかなかった。
 三浦は捜索令状を取り、すぐに家宅捜索にかかるので、それまでこの部屋は絶対に触らないよう、管理人に強く言い聞かせ、県警に向かった。鳥居はひとまず小幡署の合同捜査本部に戻った。鳥居と三浦の発見で、県警と小幡署はひっくり返るような騒ぎになった。

 加茂署では、凶器のナイフから、照合可能な指紋を検出した。ナイフの柄はぬぐわれていたが、一つだけ指紋が残っていた。
 警察庁に指紋照合の依頼をすると、名古屋市港区に本拠を置く暴力団極導会(きょくどうかい)の元構成員、武内雅俊三八歳であることが判明した。また、ライフパレス徳川の部屋からも、武内と大岩の指紋が検出された。それ以外にも徳山久美、山下和男、佐藤義男、その他の指紋が見つかった。おそらく秋田宏明のものもあるのではないかと思われた。秋田の遺体は腐敗が進み、指紋の採取は不可能だった。
 USBメモリーや部屋に残されたノートからも、これまでの多くの詐欺事件や金剛堂強盗事件を裏付ける、重要な証拠が見つかった。これで事件は一気に解決に向かうと思われた。詐欺事件を扱っている捜査二課も、今回押収した資料に注目した。あとはただ一人生き残った、武内雅俊を逮捕するだけだ。


『ミッキ』契約満了

2014-08-28 11:19:34 | 日記
私の作品『ミッキ』が9月で契約満了になり、売れ残った分は廃棄処分となります
出版社もドライで、売れない作家に対しては広告を出すなどのサポートをしてくれず(広告を出したければ、費用は著者の負担になります)、かなり売れ残ってしまいました。
著者として、自分の本が廃棄処分になるのは忍びないので、1冊でも多く売れればと願っています。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E9%AB%98%E6%9D%91%E8%A3%95%E6%A8%B9

『幻影2 荒原の墓標』第32回

2014-08-22 10:39:07 | 小説
 広島市で豪雨のため、大変な災害が起こっています。
 私の彼女も現在広島県に住んでいますが、彼女のところは大丈夫でした。
 最近は1時間に100mm以上の豪雨は珍しくなくなったようです。
 先日、うちのすぐ近くの名古屋市守山区でも100mmの雨量を記録したとのことです。数年前に庄内川が氾濫し、このときは多くの住宅に浸水しました。
 国や自治体は災害に対し、十分な備えをする一方、私たち一人一人もいざというときに、適切な行動がとれるよう、常に心の準備をしておくべきだと思います。

 今回は『幻影2 荒原の墓標』32回です。


            3

 九月六日はさくらの誕生日だ。さくらの星座は乙女座である。恵は 「さくらはとても乙女座だなんて思えない」 と憎まれ口を叩いた。
 その日はちょうど水曜日で、卑美子ボディアートスタジオは休みだ。恵、美貴、美奈も公休日にしている。夕方、今池にあるレストランの一室を借り、卑美子がさくらの誕生日パーティーを開いてくれた。今池は名古屋屈指の繁華街で、卑美子のスタジオから地下鉄で一駅だ。歩いてもたいした距離ではない。パーティーにはトヨも参加した。
 葵もわざわざ静岡から出てきてくれた。秀樹のヴィッツを借り、静岡から東名高速道路を飛ばしてきた。葵は昼間、さくらに腰の左側に、牡丹の花を二輪彫ってもらった。色は鮮やかな赤と渋い紫だ。赤い牡丹がメインで、紫はやや小さめだ。将来子供と一緒にプールに入れるよう、水着で隠れる場所でなければならない。葵は当分の間、これ以上はタトゥーを増やさないつもりだ。もし増やすなら、子供が成人してからだと考えている。
 さくらと仲がいい、皐月タトゥースタジオの鬼々も誕生日会に参加した。鬼々は初対面の葵、恵、美貴、美奈に名刺を渡して挨拶をした。鬼々は美奈のことは、以前にさくらから聞いており、またタトゥー雑誌にも載っていたので、知っていた。鬼々も今はプロのアーティストとして活動している。スタジオの事務室の一部をパーティションで区切ってもらい、自分のブースとしている。さくらと鬼々は、友であると同時に、切磋琢磨するよきライバルでもあった。
 まずみんなでさくらの二四歳の誕生日を祝って、乾杯をした。卑美子が乾杯の音頭を取った。車で来た葵も、今夜は恵のマンションに泊まるので、ワインで乾杯した。車は美奈が借りている、オアシス近くの駐車場に入れてある。美奈は今日はJRで来ている。
 さくらは作品を記録するデジタル一眼レフカメラを欲しがっていたので、葵を含めたオアシスの仲間でお金を出し合って、カメラをプレゼントした。誕生日会に参加できない裕子からもお金が届いていた。機種は美奈が選定し、なじみのカメラ屋で安くしてもらった。卑美子と同じ、ニコンのカメラだ。美奈もニコンのD50を愛用している。さくらには、発売されたばかりの上位機種、D80を贈った。
「ありがとう、みんな。こんないいカメラを。大事にするね。裕子にもお礼の電話しとくわ。いい作品をどんどん彫って、これで作品を記録するわ。いつか作品集を出したいな」
 さくらはみんなからのプレゼントに、大いに感激した。
 みんなは次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打った。
「裕子、大変ね。私も裕子から電話もらって、びっくりしちゃった。今日会えなくて、残念」
 主役のさくらが、裕子のことを話題にした。
「裕子、親父さんにタトゥーを消せって言われたそうだけど、私に彫ってもらったタトゥーは絶対消さない、と言ってくれて、嬉しかった。もっとも病院でも、きれいに消すのは無理だと言われて、親父さんも諦めたそうだけど。早く事件が解決して、また裕子も交えて会えるといいね」
 話題はしばらく裕子のことになった。葵も久しぶりに裕子に会いたがっていたので、裕子の欠席を残念がった。裕子の兄の不幸についてはすでに連絡を受けていた。
 一昨夜、裕子が兄宏明らしい霊を見た、ということも話題にのぼった。
「あたいは親に会うときは、さすがに顔の桜はファンデで隠してますよ。でも、タトゥーの仕事をやってること知っているから、もう顔の桜のことは気付いてますけどね」
 鬼々は不退転の決意を表明するために、左のこめかみに桜の花を入れた。鬼々はなぜ顔に消せないタトゥーを入れたのかを、美奈たちに説明した。
「すごいわね、鬼々さん。さくらも鬼々さんを見習って、顔に何か入れたら? おでこに肉とか」
 恵がいたずらっぽくさくらを促した。
「私も前にトヨさんに、ほっぺいっぱいに桜を彫られそうになって、焦ったことがあるの」
 トヨと鬼々が卑美子のスタジオで一夜を明かしたときの出来事を、さくらはみんなに語った。トヨはニヤニヤ笑ってさくらを見ていた。
「うちのスタジオでは、目立つところには、本人のよほどの決意がない限り、彫らないようにしていますからね。だから、さくらの顔に彫る、ということは許可しませんでした。殺鬼には殺鬼の考えがあるので、口出ししませんが。裕子さんも目立つ手首に入れたいというので、一緒に相談に乗りましたけど、裕子さんにはリスカのいやな思い出を振り払って、強くなりたいとの決意が強かったから、私も賛成しましたよ」
 卑美子がスタジオの考え方を説明した。
 卑美子は少しおなかが目立ってきた。もう二〇週になる。最近は胎動もあり、新しい命への慈しみが実感できる。子供は男の子だ。卑美子の体つきも全体的に丸く、ふっくらしてきている。今は新規の予約は受け付けず、すでに予約を受けている客や、大きなものを彫っていて、継続中の客だけにタトゥーを彫っている。スタジオの主役はトヨとさくらに移行している。さくらはまだプロとなって二ヶ月とはいえ、口コミやネットで名前が広がり、客も増えてきた。全国的に知名度が高い、卑美子ボディアートスタジオ所属のアーティストというネームバリューも大きい。まもなく発売される『タトゥーワールド』に、トヨとさくらの特集が掲載される予定だ。それにより、さらに客の数は増えるだろう。
 少し前に、卑美子に背中一面に水滸伝(すいこでん)の豪傑、“波切り張順(ちょうじゅん)の水門破り”の絵を彫ってもらっていた男性客がいた。その客は、まもなく産休に入る卑美子は、もう当分タトゥーを彫ってくれないと早とちりして、和彫りを専門にしている彫瑠(ほりりゅう)という彫り師のところで、続きを彫ってもらった。その客は彫り物ならどこで彫っても同じだと考えていた。
 ところが、彫瑠は機械彫りではなく、昔ながらの手彫りで、卑美子とは作風が大きく異なっていた。だから仕上がりが、卑美子に新たに描き下ろしてもらった下絵とは、全く違うものになった。あと少しで完成というところだったのに、せっかくの美しい図柄が、台無しになってしまった。
 彫瑠は客に彫りながら、さんざん卑美子の悪口を言った。
「卑美子の絵は彫り物になっていない。女に彫り物の神髄など、わかってたまるか。伝統の彫り物とは、こういうものだ」
 彫瑠はそううそぶいて、彫り物の伝統の美を語った。彫瑠の口車に乗せられ、客は卑美子ではなく、最初からその和彫りの彫り師にお願いすればよかったと後悔した。
 日本伝統の彫り物の絵は、確かに卑美子が描く精緻な絵に比べ、おおざっぱで稚拙に見える。だが、その稚拙に見える絵に、浮世絵のような、深い味わいがある。図柄を詳細に描き込むと、年数を経れば、線がぼけてきて、何を描いてあるのかわからなくなってしまうことがある。人間の肌は生きているので、皮膚に刺し入れられた色素が少しずつ移動し、にじんでしまうのだ。その点伝統の彫り物の絵は、大まかなようでも、経年による図柄の劣化の影響が少なく、また遠目にも引き立って見える。
 しかし、女性らしい感性を取り入れた卑美子の絵は、繊細で優美でありながら、五年一〇年と年月が経ち、輪郭が多少にじんできても、それなりに見栄えがするように、工夫されている。また、卑美子が引く輪郭は、長い年月が経っても、にじみにくい。日本伝統の彫り物とは趣が異なるが、卑美子の作品は、日本だけではなく、世界中のタトゥー愛好家に紹介され、高く評価されている。
 彫瑠の絵は、伝統の彫り物といいながら、ただ下手以外の何物でもない。彫る技術はまずまずではあるが。かつて名人と称された彫り師たちが彫った絵のような、味わい深い趣はない。卑美子の精緻で美しい絵とは、比べるべくもなかった。彫瑠は自分の稚拙な絵こそ、日本伝統の彫り物の絵だと勘違いしていた。
 また彫瑠は、卑美子ほどには衛生管理を徹底していなかった。高温高圧滅菌器オートクレーブを導入しているものの、針を使い捨てにせず、洗浄し、オートクレーブにかけて再利用していた。自分で組んだ手彫りの針だから、そうおいそれとは使い捨てにできないというのだ。それでいて、客には消耗品はすべて使い捨てをアピールしていた。彫瑠は針は消耗品ではないと考えていた。オートクレーブで滅菌すれば、感染のリスクはかなり減るだろうが、万全を期すために、針は使い捨てにするべきだ。卑美子は衛生管理に関しては、経費や手間を惜しむなと、トヨとさくらに指導している。
 その客は背中の絵が、あまりにひどく改変されたことに驚いた。せっかく卑美子に美しく彫ってもらっていた絵が、見るも無惨なものに変わっていた。作者を示す卑美子の銘まで、黒く塗りつぶされてしまった。しかし彫瑠の仕事場には、一目で暴力団関係者とわかるような人たちも出入りしているので、怖くて苦情を言うことができなかった。彼は卑美子に泣きついたが、もはやどうしようもなかった。
「現在継続中のお客様には、最後まで責任持って仕上げます、と言っているのに、なぜしっかり確認してくれなかったのですか?」
さすがに温厚な卑美子も、その客の軽はずみな行動には腹が立った。卑美子もその作品には、産休前に仕上げる最後の大きな仕事として、思い入れが強かった。それを台無しにしてくれたのだ。いきなりほかの彫り師のところに行くのではなく、せめてトヨかさくらにでも一言相談してもらえれば、そんなことにはならなかった。卑美子は客や彫瑠の個人名は出さず、そんなエピソードを披露した。
 続いて、話題は美奈の結婚のことになった。
 結婚といっても、一緒には住むけれど、しばらくは籍を入れない内縁の関係でいくつもりだと美奈は言った。だから結婚式なども挙げない。いれずみがある元ソープレディーと結婚したということになれば、三浦が警察で何かと不利な状況に陥ることは明らかだ。
 三浦は昇進の道が閉ざされてもかまわない、一刑事として犯罪を追いかけていくつもりだから、入籍しよう、と言ってくれる。しかし、それでは美奈の気がすまなかった。私は俊文さんのことを信じているから、内縁の関係でも大丈夫です、と美奈は譲らなかった。結婚といっても、結局は婚姻届一枚のことだ。法律上のことがどうであろうと、愛の絆さえあれば、それで十分だ。
 子供が生まれれば、認知の問題などがあるので、いずれは正式に入籍することになるだろうが、今は三浦の足を引っ張りたくない。
 三浦も高蔵寺の自然が好きなので、美奈と一緒に、高蔵寺近辺の、賃貸か安い中古のマンションを探している。そこに二人で住む予定だ。県警までの通勤は遠くなるが、どうせしょっちゅう事件であちこち走り回らなければならない。
 美奈はそんなことをみんなに話した。
「結婚式を挙げないなんて、いくら何でも寂しいよ。私たち仲間内だけでも、式の真似事をしようよ」
 恵がみんなに提案した。全員がそれに賛成した。美奈はそんな友の気持ちがありがたかった。
「三浦さんなら絶対の折り紙付きだと、鳥居さんが言ってますよ」
 卑美子が美奈を冷やかした。
「へぇ、美奈さんの彼氏って、刑事さんなんですか? ひょっとして、前に冥先輩のところに来た、あのすてきな刑事さん?」
 鬼々が美奈に尋ねた。確かあのとき、三浦と鳥居だと名乗っていたように記憶している。鬼々はけっこう記憶力がいい。鳥居に関しては、殺鬼がニコチャン大王にたとえたのが印象に残っている。
「三浦さん、前の美奈の事件も解決してくれたし、今度もきっと裕子のお兄さんの事件、解決してくれるよね」
 美貴が感情を込めて言った。いつもコンタクトレンズを使用している美貴だが、今日はしゃれた大きなメガネをかけていた。
「はい。直接は上松署の事件ですけど、三浦さんの事件とは関連があるようだから、きっと犯人を逮捕してくれますよ。もう犯人のめどはついたみたいです」
 美奈は確信を持って頷いた。
「でも、美奈はおめでたいことだから、しかたないとして、もし裕子までオアシス辞めることになったら、寂しいね」
 美貴がぽつりと言った。
「大丈夫よ。たとえどんなことになっても、私たちはずっと友達だからね。ここにいるみんな、そして裕子も仲間なんだから」
 恵が力強く宣言した。
 さくらの誕生日パーティーは三時間ほど続いた。女性ばかりということで、けっこうきわどい下ネタも飛び出し、美奈は顔を赤らめた。
 美貴はさくらに、以前雑談で出たベルサイユのばらのオスカルを、背中か太股に入れてみたい、という相談をした。さくらはだいたいの希望のイメージを聞いて、近いうちに見本の絵をいくつか描いておくと約束した。ただ、漫画やアニメのキャラクターを入れる場合、自分が五〇歳、六〇歳と年をとったときでも、その絵に納得できるかをよく考えて、とアドバイスした。以前、腕にキティちゃんを入れてほしいと依頼した二二歳のバーのホステスに、 「若い今はかわいいけど、お婆ちゃんになったときにキティちゃんでいいですか?」 と助言して、結局赤いハイビスカスの花と蝶に変更したことがあった。そのことも美貴に話した。
 以前ラオウを彫った男性客の友人が、ラオウの出来栄えに 「おお、すげえ」 と目を見張り、背中にケンシロウを彫りに来ている。彼のガールフレンドが 「背中は大きすぎるから、あたしは太股にユリアを入れようかな」 と迷っているそうだ。さくらは 「タトゥーは一生ものだから、いっときの勢いで入れるんじゃなく、よく考えてからにしてください、と彼女に言っておいてね」 とアドバイスした。
「さくらは漫画のキャラクターがうまいんだから。私じゃあ、ちょっとかなわないわね」
 トヨがさくらに脱帽した。アーティストにも得手不得手がある。デッサン力はさくらが勝っているが、和風の絵に関してはトヨに一日の長がある。鬼々は洋風な絵柄を得意としている。
 それから近くの喫茶店で二次会をして別れた。葵と美奈は恵のマンションに泊まった。方向が一緒なので、美貴もタクシーに同乗し、アパートまで送ってもらった。鬼々はトヨ、さくらと卑美子ボディアートスタジオまで歩いていった。トヨも久しぶりにスタジオの自分の部屋に泊まって、さくら、鬼々と遅くまで語り合った。



久しぶりの弥勒山

2014-08-18 18:58:40 | 日記
 今日は久しぶりによく晴れたので、弥勒山に登りました。今月初めてです。
 昨日はかなり雨が降っていたので、沢などは水量が豊富でした。

  

 最近まで大久手池は水が少なく、下の写真のように、杭があるあたりまで水が干上がっていましたが、今日は満々と水を湛えていました。
  先月の写真です。
 
  みろくの森の林道で、トカゲを写しました。
  毎回掲載する弥勒山頂の写真です。登頂記念。

 帰りは大谷山と道樹山の鞍部から、谷道に出ました。そのコースは、今日は誰も歩いていなかったのか、登山道に蜘蛛の巣がいっぱいでした。できるだけ壊さないように、と思いながらも、完全に登山道をふさいでいたので、やむなく破壊しました。蜘蛛にとっては人間は、家を破壊するゴジラのようなものでしょう。
  よくコーヒーを入れたり、カップ麺を作る水場。
  縁者不動の滝

 今日は携帯用の温度計が麓で34℃を示していましたが、登山道は25℃ぐらいで、快適でした
 もうツクツクボウシがかなり鳴いていました。