安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

チェット・べイカー SEPTEMBER SONG

2013-09-11 22:09:51 | トランペット・トロンボーン

ようやくいくらか涼しい風が吹いて、夕方には虫の鳴き声も聞こえ始め、秋がそれでも近くなってきたかのようです。長野県の飯田・下伊那地方は、たまに雨も降っているので、昨年不作だったマツタケに対する期待を口にする人も出始めました。昨年は、ほとんど食べることができなかったので、僕もこの秋には、焼きマツタケを賞味できればなんて考えています・・・。セプテンバーソングを。

CHET BAKER (チェット・ベイカー)
SEPTEMBER SONG (Marshmallow 1983年録音)

  Septembersongchetbaker

チェット・ベイカー(tp)については、パシフィックやリバーサイド・レーベルのアルバムをたまに聴いていましたが、それ以降の録音はほとんど手に取ることがありませんでした。それは、彼の瑞々しいプレイは、年齢がいってからは無理だろうし、疲れたようなポートレートは、荒れた生活を想像させたからです。しかし、これは、晩年の録音ですが、中音域を中心とした暖かいプレイが行われていて、癒されます。

ドラムレスの編成です。メンバーは、チェット・ベイカー(tp, vo)、デューク・ジョーダン(p)、イェスパー・ルンゴー(b)。チェット・ベイカーのドイツ、フランス、ベルギー・ツァーの際に録音されたものですが、14回の公演中、チェットが現れたのは4回だけで、あとの10回はジョーダンとルンゴーのディオで演奏会が行われたそうです。このあたりのことは、マシュマロレーベル主宰の上不三雄さんが書いたライナー(紙ジャケCDのライナーの方です。)に詳しいです。

曲目は、「September Song」(ヴォーカル・ヴァージョン)、「My Funny Valentine」、「I Remember You」、「But Beautiful」、「Barbados」、「Sptember Song」(インスト・バージョン)、「Solar」。有名曲ばかりですが、チャーリー・パーカーの「Barbados」やマイルス・デイビスの「Solar」におけるプレイに興味もわきます。また、「Septmber Song」に2バージョンあるのも特徴です。

ドラムレスのトリオが、チェット・ベイカーの歌、トランペットにあっているようで、バランスのとれた音が聴けます。デューク・ジョーダン(p)、イェスパー・ルンゴー(b)がしっかりと支えるいいプレイをしており、ジョーダンの各曲におけるイントロ、ソロにも注目をしました。だいたいスローからミディアムテンポで演じられますが、「Barbados」、「September Song」(インスト・ヴァージョン)、「Solar」におけるトランペットブレイも好調で嬉しくなりました。


大西順子 WOW

2013-09-08 18:50:23 | ピアノ

一昨日の金曜日、長野県松本文化会館で行われたサイトー・キネン・フェスティヴァル松本Gigを聴きに行きました。大西順子トリオと小澤征爾指揮サイトー・キネン・オーケストラによるガーシュイン作曲「ラプソディー・イン・ブルー」は、ダイナミック、かつ、しなやかで鳥肌ものの演奏でした。彼女の重厚でパーカッシブなところは、この曲にあっているし、小澤征爾の指揮によるオーケストラがうねるようなグルーヴ感を出していて、最高でした。今夜は大西順子のアルバムです。

JUNKO ONISHI (大西順子)
WOW (somethin'else 1992年録音)

  Wowonishijunko

サイトー・キネン・フェスティヴァル松本Gigでは、大西順子トリオだけによる演奏もありました。ベースのレジナルド・ヴィールとドラムスのエリック・マクファーソンは、このGigのためだけにアメリカから呼んだのでしょうが、その甲斐あって、すごい推進力、スイング感で、それだけで興奮しました。ピアノの高音部まで目一杯使った彼女のソロもよかった。

実は、この「WOW」ですが、かなり昔に買ったものの、左手も含めてパーカッシブなところが目立ち、セロニアス・モンクからの影響も強く感じて好みではないとして、積んだままになっていました。しかし、改めて聴いてみると、ジャズの伝統に根ざした多様なところのあるプレイで、曲によっては抒情性もあって、よい方に印象を改めました。

メンバーは、大西順子(p)、嶋友行(b)、原大力(ds)。曲は、大西順子の自作が4曲で、「The Jungular」、「B-Rush」、「Prospect Park West」、「Point-Counter-Point」、デューク・エリントンの「Rockin' In Rhythm」、セロニアス・モンクの「Brilliant Corners」、エデン・アーべズの「Nature Boy」、オーネット・コールマンの「Broadway Blues」の全8曲。初リーダー作ということもあってか、意欲的な曲目が並んでいます。

厚い和音を用いるなど低音部も使ったダイナミックなプレイで、よくスイングしています。大西さん自作の「The Jungular」や、エリントン作曲の「Rockin' In Rhythm」は、彼女の奏法の特徴が良く出ていて、スケール感があり、なかなかの迫力。自作の「B-Rush」は、ちょっと「Alone Together」に似たテーマを持ち、右手シングルライン中心のアドリブもしっくりきて、気に入りました。「Nature Boy」は、スローテンポで繊細なプレイから盛り上げていきますが、こういうスタンダードも悪くありません。

【サイトー・キネン・フェスティヴァルプログラム、翌日の信濃毎日新聞記事】

会場全体が華やかなムードに包まれており、そのムードに乗せられるまま、記念にプログラムを購入しました。

               Saitokinenfesprogram2013
                        プログラム

     Saitokinensinmaihoudou2013
                 9月7日付け信濃毎日新聞朝刊の記事


クリス・コナー SINGS BALLADS OF THE SAD CAFE

2013-09-04 22:17:13 | ヴォーカル(A~D)

この前の日曜日、安曇野インター近くの「アートカフェ 清雅」というお店を初めて訪れました。展覧会、クラシックやジャズのコンサートを催していることは知っていましたが、ようやく訪問できました。名前のとおり、絵や陶器の展示があり、また、グランドピアノが置いてありました。土蔵を改造したものと思われる内部は、天井が高く、小音量で流しているクラシック音楽もいいムードで、コーヒーも美味しく、贅沢な時間を過ごしました。カフェつながりで、クリスのアルバムを。

CHRIS CONNOR (クリス・コナー)
SINGS BALLADS OF THE SAD CAFE (ATLANTIC 1959年録音)

  Singsballadsofthesadcafechrisconnor

クリス・コナー(vo)が、失恋の歌(トーチ・ソング)を歌ったアルバムです。彼女は、多くの作品を残しており、アトランティック・レーベルでは、スモールコンボをバックに軽快にスイングした「Chris Craft」や「Chris in Person」あたりをよく聴きましたが、バラードを集めたこのような作品も手元に置いてあります。

編曲は、ラルフ・シャロンが担当をしていて、曲により、それぞれ必要なメンバーを集めたビッグ・バンドやストリングスにより伴奏が行われています。管楽器等のソロはありませんが、ボス抜きのカウント・ベイシー楽団やボビー・ジャスパー(fl)、ドナルド・バード(tp)が参加しています。3回に分けた録音といい、豪勢な作り方です。

曲は、ほとんどスタンダードです。「These Foolish Things」、「The End of A Love Affair」、「Glad to Be Unhappy」、「Good Morning Heartache」、「Something I Dreamed Last Night」、「Lilac Wine」、「One For My Baby」という有名な7曲に加え、ウィリアム・ロイ作詞作曲の「Bargain Day」とチャールズ・デフォレスト作詞作曲の「Ballad of The Sad Cafe」というあまり歌われない2曲が取り上げられています。

クリス・コナーの歌は、モダンで、孤独や寂しさといった感情がよく出ているように思えます。ベイシー・バンドによる伴奏の「Good Morning Heartache」や「One For My Baby」では、滑らかなフレージングで語りかけるように歌っていて、聴き惚れました。スローテンポでゆったりと歌う「These Foolish Things」もいいし、「Something I Dreamed Last Night」の、密やかな出だしにも、ぐっと惹きこまれます。ストリングスの編曲伴奏に一部うるさいところがあり、歌は左側のスピーカーからしか聴こえてこないという欠点がありますが、それらを補って余りあるクリスの歌唱です。

【アートカフェ 清雅】  

住所:長野県安曇野市豊科3550-1  安曇野インターの近くです。
電話:0263-72-3982    営業:10:00~17:00(月曜定休)
お店の情報:アートカフェ清雅ブログ     駐車場:15台

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                    外 観 

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          天井が高く、グランドピアノを備えています

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           テーブル、椅子ともに内部に相応しい

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 アートカフェ清雅の2階


ケニー・コックス INTRODUCING KENNY COX AND THE CONTEMPORARY JAZZ QUINTET

2013-09-01 10:00:01 | ピアノ

大鹿村(長野県下伊那郡)の南アルプス登山口に行ってきました。南アルプスの山々は奥が深く、登山はたいへんなので、今回は、車で駐車場まで行き、後は少し歩いて登山口までとしました。駐車場へ行く途中にある展望台からは赤石岳が眼前に広がり、大鹿村ならではの谷が重なって見える光景を望むことができ、満足して帰途につきました。渓谷に響きわたりそうなサウンドのアルバム。

KENNY COX (ケニー・コックス)
INTRODUCING KENNY COX AND THE CONTEMPORARY JAZZ QUINTET (BLUE NOTE 1968年録音)

  Introducingkennycoxandthecontempora

ケニー・コックス(1940年~2008年)は、デトロイト出身のピアニストで、60年代後半に、同地で自分のクインテットを作り、ブルーノート・レーベルにより2枚のアルバムが録音されました。これはその一枚目です。コックスは、作風を変えていて、70年代にはロック、ラテンなどをとりいれ、自己のレーベルStrataから、「Clap! Clap! the Joyful Noise」を発表したり、以降も教職に就くなど活動を続けました。

メンバーは、ケニー・コックス(p)、チャールズ・ムーア(tP)、レオン・ヘンダーソン(TS)、ロン・ブルックス(b)、ダニー・スペンサー(DS)。ケニー・コックスにはハービー・ハンコック、チャールズ・ムーアにはマイルス・デイビス、そして、ダニー・スペンサーには、トニー・ウィリアムスの影響がみてとれます。レオン・ヘンダーソンは、ジョー・ヘンダーソンの弟ということもあってか、ジョー・ヘンダーソンを想いおこさせます。

曲は、メンバーのオリジナル主体で、ケニー・コックスの「Mystique」と「trance dance」、レオン・ヘンダーソンの「eclipse」と「diahnn」、チャールズ・ムーアの「Number four」、そしてdavid durrahという人が書いた「you」の全6曲。それぞれ彼らの音楽の傾向に相応しい曲です。

60年代後半のマイルス・デイビス・グループの音楽によく似ていますが、チャールズ・ムーア(tp)の生きの良さ、レオン・ヘンダーソン(ts)の新しさなどといった特徴もあります。「You」のテーマにおけるハーモニーは、まるでブルーノートの新主流派ですが、各人のソロも含め爽やかで美しい。「trance dance」では強力なダンスビートが叩かれていて、懐かしく感じました。「number four」におけるヘンダーソンのソロは浮遊感を漂わせていてかっこよく、この曲は聴きごたえがあります。クールで都会的なアルバムとして楽しめます。

【大鹿村から南アルプス遠望】

午後に行ったため、雲がかかっています。

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             少し左に見えるのが赤石岳です

    Minamialpus201308

    Minamialpustozanguchi201308
                 南アルプス登山口