1992.10.14(Wed) Moscow
09:00 市内の地下鉄2号線チアトラリナヤ駅付近でバスを降り、ここから地下鉄に乗る。(以下、途中の乗換駅等の詳細ははっきりしない。写真がどの駅のものなのかも一部分からないが、帰国後、資料やWEBで調べて判明した事をもとに記載する。)
モスクワの地下鉄は駅が壮麗なことで有名だという。ターニャさんの案内で地下鉄巡りをすることになる。駅入口は天井が高いホールになっていて、日本の地下鉄のような、地下に入っていく狭苦しさがない。

地下鉄2号線チアトラリナヤ駅(Teatralnaya) Google Map
1938年開設(手前の建物)。駅名は周辺に劇場が多いことから。
Wikipedia > Teatralnaya (Moscow Metro)(英語版)
切符売り場に自動販売機はない。窓口でおばさんから1RBでトークンと呼ばれるコイン状のものを買う。私達に体験してもらうために、何と言ってトークンを買うか、ターニャさんが教えてくれる。
ソビエト崩壊後、物価は急上昇しているが、地下鉄は国営であるためか未だに1RBのままだ。日本円に換算すると0.4円で、モスクワ地下鉄の全路線・全区間に乗れてしまうそうだ。これだからこの国の金銭価値感覚は理解できない。トークンを入れて改札を通る。ただ同然のものなので、トークンを2枚買い、1枚は記念に持ち帰ることにする。
そういえば公衆電話も受話器を上げるとそのままつながってしまうらしい。物価事情にあわせて通話料金を取ろうとすると、紙幣でないとダメだからだという。日本のように電話機をプリペイドカード化する資金はないらしい。だからといって無料になってしまうあたりがすごい。

チアトラリナヤ駅構内の通路
エスカレーターで地中深く降りて行く。モスクワの地下には、地下鉄路線から派生して、巨大な地下都市とも呼べる施設があることが、後日新聞に載っていた。地下鉄の深さは地下30mほどだそうで、そのようなものがいかにもありそうだ。

通路はヴォールト状になっているが、やはり閉塞感が感じられる。だが、安くて便利な公共交通機関であるため多くの市民が利用しており、通路はかなり混雑している。天井からの明かりが白熱灯である場所も多く、暖かい雰囲気なのが魅力的だ。自慢の地下鉄だけあって電球が切れていたりしないのも嬉しい。日本の地下鉄のようにあちこちに広告が貼ってあるなどということはなく、ひたすら建築空間としての駅を見ることができる。
ホームには大理石の列柱が並び、通路の壁は一面にモザイクタイルが貼ってある。またヴォールト天井にも様々な彫刻が施されている。

ホームの端のトンネル入口上部に減算式のデジタル時計が付いている。あと何分何秒で電車が来るということを表示しているようだ。しかしあちこちで待たされることの多いロシアで、地下鉄だけにそのようなものが必要かどうかははなはだ疑問だし、第一それほど正確に地下鉄が運行されているのかも定かではない。
ほどなく列車がやってくる。給電方式は第三軌条によるものだ。車輌も昔の銀座線や丸の内線のようなものだ。車内は相当混雑していて、この時は200%近い混雑率だった。
2号線マヤコフスカヤ駅で一時下車して、駅構内を見学。この駅はアールデコ調の装飾で飾られている。

マヤコフスカヤ駅(Mayakovskaya・1938年開設) Google Map
Wikipedia > Mayakovskaya(Moscow Metro)(英語版)
マヤコフスカヤ駅の名は、ロシア・ソ連の詩人、ウラジミール・マヤコフスキー(1893~1930)にちなむ。

ホーム天井のモザイク画
ヴォールト天井にはいくつもの楕円形のスペースがあり、その一つ一つに、ソビエト建国にまつわる出来事に関するモザイク画が描かれている。ここまで見てくると、これが観光に値するだけの立派な施設で、モスクワっ子自慢の場所であることがはっきり判ってくる。
ベラルースカヤ駅で環状線に乗り換える。モスクワの地下鉄路線のうちの一つは、東京の山手線のように旧市街地周辺を環状に走っている。そしてこの環状線上のいくつかの駅は、地方都市への長距離列車ターミナル駅にも接続している。ベラルースカヤ駅の名はベラルーシ共和国へ向かう駅の近くにあることから。

ベラルースカヤ駅(Belorusskaya・1952年開設) Google Map
Wikipedia > ベラルースカヤ駅、環状線(モスクワ地下鉄)
乗り換え通路は不思議なほど狭く、天井が低い。車輌の上をかすめるように、ヴォールト上部の空間を通路が交差している。面白い景色だが、これは狙って作ったのだろうかと不思議になってしまう。

駅ごとにデザインが異なり、ここはまた別のデザインで構内が飾られている。ただ、駅によっては照明が薄暗く、歩いている人の表情が分からないほどだったりすることもある。
環状線ノヴォスロボーツカヤ駅でまたまた一時下車して、駅構内を見学。

ノヴォスロボーツカヤ駅(Novoslobodskaya・1952年開設)
Google Map
Wikipedia > ノヴォスロボーツカヤ駅
こちらの駅では壁面の美しいステンドグラスを見ることができた。
環状線コムソモーリスカヤ駅で下車。

コムソモーリスカヤ駅(Komsomolskaya・1935年開設) Google Map
ツルツルに磨かれた大理石の壁に明かりが反射している。

コムソモーリスカヤ駅・ホーム
Wikipedia > コムソモーリスカヤ駅(ソコーリニチェスカヤ線)
コムソモーリスカヤ駅(環状線)
ここの駅のホームは広く、軌道、ホーム、軌道と、3連のヴォールトになっている。真ん中の大きなヴォールト天井からは、立派なシャンデリアが吊り下げられている。地下宮殿とまで言われるだけのことはある。途中の通路にもステンドグラスがあり華やかだ。
このコムソモーリスカヤ駅で地上に出て、今回のモスクワ地下鉄巡りは終了。いくつかの駅を見て回ったが、いろいろなデザインがあって興味深かった。地下鉄巡りなんて変な観光だなと最初はちょっと思ったが、それがモスクワ名物であることもよく分かった。
1992年10月 ロシア日記・記事一覧
#鉄道 #地下 #スターリン様式
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