あるBOX(改)

ボクシング、70年代ロック、ヲタ系、日々の出来事などをウダウダと・・・

そして達郎の「アトムの子」

2013年12月14日 | 漫画
少し前に「読者を甘やかさなかった少年漫画」として
手塚治虫先生の「ライオンブックス・シリーズ」の「コラープス」を
思い出したりしたが、
そもそも代表作といわれる「鉄腕アトム」だって相当に重い漫画だった。



TVアニメ版は「正義の味方アトムが悪と戦う」モノになり、
そのイメージに原作者が苦しんだ・・・というのは
手塚ファンの中では有名な話でもある。

そして、
山下達郎による手塚治虫へのトリビュート・ソング「アトムの子」。
「漫画というカテゴリーをはるかに越えた巨人」が、1989年に急逝した事を受けての作曲。

以下、歌詞の抜粋。



どんなに 大人になっても 僕等は アトムの子供さ
どんなに 大きくなっても 心は夢見る子供さ

いつでも百万馬力で みるみる力がみなぎる
だからね さみしくないんだ

意地悪 する子がいたって 最後は仲良くなれたよ
あの子はどうしているだろ 今でも 大事な友達

みんなで 力を合わせて 素敵な 未来にしようよ
どんなに 大人になっても 僕等は アトムの子供さ



~アトムは10万馬力だったが、強敵と戦うためにパワーアップされた。
戦う為だけに作られたプルートに対抗するのに、自身も怪物的なパワーを求めたアトム。
感情があるアトムは、その無益さを本当は知っていた筈・・・。

手塚先生は、こうも語っている。

「これまでずいぶん未来社会をマンガに描いてきましたが、
じつはたいへん迷惑していることがあります。
というのはぼくの代表作と言われる『鉄腕アトム』が、未来の世界は
技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを
掲げているように思われていることです。
『アトム』は、そんなテーマで描いたわけではありません。
自然や人間性を置き忘れて、ひたすら進歩のみをめざして
突っ走る科学技術が、どんなに深い亀裂や歪みを社会にもたらし、
差別を生み、人間や生命あるものを無残に傷つけていくかをも
描いたつもりです」

談志師匠が「本当の表現者に必要なのは文明批判の精神だ」と仰っていたが
家元が尊敬する手塚先生は、まさに“そういう表現者”だった。

漫画版には、
人間によってロボットが「これでもか」と虐げられるシーンが次々と登場する。

市民権を得る為に活動したロボットが、
登録第一号として手続き終わって庁舎を出た途端
待ち構えた人間に一気に襲い掛かられ、メチャメチャに壊されてしまう光景など
「少年漫画でココまでやるか」・・・と驚きを隠せませんでした。

重いんですよ、鉄腕アトムは。
「コラープス」同様、人間の本性を“これでもか”と描いてありますわ。



「アトムの子」はベストアルバムにも収録されてる達郎さんの重要曲だが
当然、能天気な賛歌では無いでしょう。
読み込んだ上での歌詞でしょう。

我々はアトムの子なのだ・・・という宣言。
虐げる側の存在ではなく、心優しいアトムの子なのだ・・・と。

そんな事を思い返した。
「アトムの子」も、
手塚先生の記念年ごとにクローズアップされて行くんでしょうね。