有田芳生の『酔醒漫録』

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オフコースのベストアルバムは優しい

2006-12-14 08:21:59 | 酒場

 12月13日(水)「ザ・ワイド」が終わり、いつもは通らない日本テレビの玄関を出たところで大きな時計が眼に入った。宮崎駿さんのデザインだそうだ。いささか過剰だが古き時代を感じさせるのがいい。近くのCDショップ「WAVE」へ。オフコースのベストアルバム「i[ai]」を探すが売れ切れ。小雨のなかを銀座まで歩く。「HMV」へ行くとさっきまであったという。そうなればどうしても手に入れたくなり、山野楽器店に向った。雨は少し激しくなっている。傘も買わずに急ぐ。新曲のコーナーを見る。そこに一つだけあった。レジで聞けばよく売れているのだという。ホッとして地下鉄へ。表参道でジム。ゆっくり泳ぐ。酒を飲まないつもりだったが安易に方向転換。神保町へ行き「北京亭」、さらにジェイティップルバー。そこでオフコースをかけてもらった。いまの真情にぴったりで洋酒に合う。女性バーテンダーも男性客も気に入ったようで明日買うという。「言葉に出来ない」を聞いていて、心に浮かんだのは石原吉郎さんの詩文であった。何度も何度も読んできた。この身体に染み込む言葉の力。辺見庸さんは思想的には違うと断りながら、石原さんの遺文を講演でも肯定的に紹介していた。わたしから見れば思想的に違うとどころか、そっくりなのだが、辺見さんにすれば思うところがあるのだろう。おそらく現実への向いかたの違いなのだろう。辺見さんは石原さんのこんな言葉を引用した。

 
沈黙するためには、ことばが必要である。

061213_15590001  よくわかる。せり上がってくるように溢れんばかりの言葉がある。それでも口にしたところで相手に届きはしないと判断し、諦めたときには沈黙するするしかない。言葉があるから黙るのだ。もしかしたら凶悪犯もそうなのかもしれない。そう思ったのは大阪で起きた姉妹殺人事件の被告に死刑判決があったからだ。判決は当然だと思う。しかし、それでは済まないだろう。5年前に母親を殺害し、さらに事件を繰り返した男の心境はどこにあるのだろうか。裁判資料を読んでいて気になったことは、精神鑑定でアスペルガー症候群だと判断されたこと。医学的には学会で承認されているとはいえ、それが事件と結びつくのかといえばそうではないだろう。社会性の傷害、コミュニケーション障害、想像力の傷害だというのだが、そんな一般論では意味を成さない。2000年に愛知県で「人を殺す経験がしたかった」と主婦を殺害した当時17歳の少年もアスペルガー症候群だと鑑定された。それはおかしいと周到に分析した作田啓一さんの「空虚感からの脱出?豊川市主婦刺殺事件の少年」(『Becoming』No.11)を読む。精神科医は人間をどうして概念のなかに閉じこめようとするのだろうか。作田さんのすぐれた分析を読んでいて、再びそう思ってしまった。テレビで少年院などで精神科医などを活用しているアメリカやヨーロッパに学べとコメントしたところ、教育再生会議のメンバーのひとりから、アメリカにも再犯率などの問題があるから単純に比較しない方がいいとメールをいただいた。難しい問題だ。