京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

戦争と疫病

2020年05月31日 | 環境と健康

(インカ帝国の滅亡)

 

 戦争と疫病という、人類の歴史の始めからつきまとっている事柄について、歴史家のウィリアム・マクニールは興味ある二つの類似を指摘している(参考文献)。

  戦士達が使う武器の改良が、病原菌にとっては突然変異にあたる。前者では、武器のイノベーションによる軍事的な優勢によって敵を一挙に制圧でき、地理的な空間が開かれ新たな帝国が成立する。後者では、突然変異によって微生物と宿主との平衡が破れ、瞬く間に集団に感染が広がり、エピデミックからパンデミックに発展する。

それだけでなく、組織化された装備の整った軍隊が、そうでない集団と接触すると、遭遇戦の段階から相手を圧倒し、その前衛に打撃を与えるが、それは恐怖となって後衛に伝播して、しばしば全体の崩壊がおこる。同じように疫病の無慈悲な感染力と致死率は、市民に得体の知れない恐怖を生み出し、都市封鎖といった無条件降伏を採らざるを得ない。

 戦争も疫病もそれ自体が生起した死者の数よりも、恐怖がもたらす社会的な混乱によって生じた犠牲者の方が多いことがある。このような外敵(敵国やウィルス)に対して自衛することのできない社会や国家は、やがて独立性と安定性失い滅亡するのが歴史の常である。

COVID-19は、まさにこの点について、いま各国に試練を与えている。今のところ欧米の方が東洋よりもガタついておりかなり危うい。

 

参考図書

ウィリアム・マクニール『戦争の世界史ー技術と軍隊と社会』刀水社、2002

 

 


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