子どもの頃から、主人公が窮地に陥る物語が苦手でした。
主人公がひどい目に合うようなシーンがドラマで出てくると、逃げ出したりしたことがあるくらい。
だから、この映画を観はじめてものの10分も経ったところで、これはエライところに来てしまったぞ、と思いました。
笑える映画だと思っていたのです。もともと自分で選ぶタイプの映画ではなく、友達に誘われて観たのだったし。(とはいえ好奇心旺盛な方なので嫌ではなかったが)
いや、笑える部分はあります。どころか、まわりの観客の人たちはかなり笑っていた。
でも、これってすごく、怖ろしい話なんです。私は驚いてしまった。
お互いの顔も知らない、生き別れの兄弟が物語の中心です。それが、阿部サダヲと瑛太が演じる二人。彼らの半生は、本当に悲惨なものです。しかも、怒涛のように悲しいこと、嫌なこと、やりきれないことが襲ってくる。
お笑い芸人になった弟(瑛太)に、相方となる青年が言った台詞がありました。
“笑いのパターンは7つしかない。その中でも一番すごいもの、それは不幸だ”と。
けれど、私はもう一つあるな、と思った。それは、恐怖。本当に恐ろしいと、なんだか笑えてしまう。いや、恐怖の一つの形が不幸なのかな、不幸、というのが恐怖の最大のものなのかな……などと考えましたが、この映画はそういう“笑い”に満ちているのです。
この物語ってどう着地するの、いったい私はどこに連れて行かれるの……と心配しましたが、最後はほんのりと温かいラストを迎えてホッとしました。
もちろん、普通に(?)笑える部分もあるし、役者さんもいいし、この映画もおススメではあるのですが、なんとなく宮藤官九郎の暗黒面を見た気もしました