ボッコちゃん (新潮文庫) 価格:¥ 500(税込) 発売日:1971-05 |
図書館に行くと、大人向けのほか、子ども室も必ずチェックします。
児童文学結構好きだし、実用書も、大人向けより分かりやすく、ビジュアル中心で見やすいので。
こないだ小さな男の子(4,5歳くらい)が、大型本の怪獣図鑑のようなものを書棚に収めようとしていたのですが、その棚の他の本も大きくて、本を押さえることができず苦心してました。
なので、黙って他の本を押さえてスペースを作ったら、その子も黙って本を入れて、その後、ものすごーく小さな声で「ありがとうございます」と言いました。私も、ごく小さい声で、「どういたしまして」と答えました。
閑話休題(それはさておき)。そんな子ども室の全集本の棚に、ジュニア向けの星新一全集があって、懐かしくなりました。
私も、中学生の頃読んだから。今でも、小学校高学年から中学生くらいの子が読むのではないでしょうか。
でも、私は当時は『ノックの音が』という本がお気に入りだったのですが、今この年になってみると、『ボッコちゃん』という話が、ちょっと思い出されて気になります。
かわいいタイトルだけど、これって哀切な話ですよね。
ボッコちゃんは人間そっくりに作られた美女ロボット。見た目は人間と区別がつかなくとも、人工頭脳はあまり優秀でなく、相手が言ったことをおうむ返しに、あるいはせいぜい、ちょっとアレンジして答えるだけ。
バーのホステスとして使われますが、美人なのですぐ人気に。会話でぼろが出そうになると、マスターが巧みに客の話を逸らします。
ところが、ひとりの青年が彼女を思いつめるあまり、悲劇が……。と、いう話だったと思いますが、青年とボッコちゃんの会話が絶妙。
「僕のことが好きかい?」「あなたのことが好きよ」「ほんとは僕のことを、愛していないんだろう」「あなたのことを、愛してはいないわ」「君ほど冷たいひとはいないよ」「私ほど、冷たいひとはいないのよ」……記憶をたよりに書いているので、違っていたらすみません(>_<)
でも、おうむ返しのセリフをつかって、こんな切ない会話が書けるとは!
余談ですが、筒井康隆の『座敷ぼっこ』も、これとはテイストの違う切なさで、好きでした。