何色何番ぴろりろ

何色何番の村井ブログ。人生全て私の宝物にするために生きています。

お姫様のお話7

2012-07-22 01:18:27 | お姫様のおはなし
今日はとっても涼しい夜。

昨日も涼しかったけれど、一昨日の熱帯夜を考えると天国でなりません。

お姫様は出先からお腹いっぱいのお腹を抱えて自転車馬車でお城に帰っていました。

同居しているお姫様と二人プリンセストークをしながら、浴びる風はとっても気持ちいいものです。

「シャズナの人って結婚したんやで、知ってる?」と同居姫は言いました。

「知ってるよ、それだいぶ前のことやろ」とお姫様は返しました。

そのような流れからお姫様は昔シャズナにハマっていたことを同居姫にカミングアウトし

中でもお気に入りだった曲を披露することになりました。

*姫=お姫様 同=同居姫

姫「♪あーかくっそめたばっかりのかみのけでちょーっとだけおっしゃれにぃ~かっかとをっなっらっしってえ…」

同「…長いな」

姫「サビがいいねん。♪いっいっこっとっあっりそっおなあ~、よかーんがするーよお~…」

同「長いよ」

姫「うん。♪じっかっんんのなあがあれえがっはっやすうぎてえ」

同「サビ?」

姫「違う、♪きっづっいったこっろおにはっきっみっとさ・よ・ならする」

同「サビを歌ってよ」

姫「流れが大事やねん。♪いっつうかあえがあいたゆうめっのなあかじゃっ」

同「…」

姫「ここからやで!♪すうきいにい~なありい~、はっじっめっのきもおちいのままあでっ」

同「…ピンとこおへんな」

姫「…。(歌い続ける)」

同「…」

ラズベリータイムでした。

というようなやりとりを出町柳周辺で行いつつ北上していました。

あんまり気持ちよくてルナシーのTRUE Bleuも一部歌いながら、最終的にはYUKIのプリズムへ着地

同居姫もプリズムに乗っかったかと思うと長い夢を歌い始め、がお姫様はプリズムのまま

以降お城までの道のりは一人カラオケタイムになりました。


お城車庫に馬車を止めたら歌い走ってきた高揚と満腹感でお姫様は地面に寝っ転がりました。

だってなんだかとっても気持ちいいのです。

風もあってちょうどほかっとしたぐらいの体に涼しい気温で

「アスファルトタイムね…」

やや驚く同居姫に先に入城するように促し、お姫様は大地の抱擁を背中から全身で感じました。

お城に挟まれ見える空はせまいけれど、広大な大地の存在感はゆるぎません。

涼しい風がお姫様を撫でては通り過ぎていきます。


「ああ…、優しい。結婚したい、…違う。」

お姫様は自分の中に湧き上がるこの安らかなそれでいての高揚感をなんとたとえたらいいのか考えました。

「そう…この沈みこんでしまいたい感じ、大地に溶けてしまいたくなるような…、これはかつて南の国で感じた浄土感…」

先日他国の王様がアバンギルド城で行っていたパフォーマンスが夜の道を模していたもので、

半端なく気持ちよかったのを思い出しました。

「…そっか…。私はあの時、うっとりした夢の中に入ってそのままずっとそこに居たいって思ったのね…ふふ」

なんだかおセンチも手伝ってより一層お姫様は恍惚としていました。


しばらくするとプヤン、という蚊の音が聞こえて

「これはいらない」と起き上がりました。

同居姫がお城の扉から顔を出して「まだそとにいるの?」と声をかけました。

「うん、もうじき入る」

ほんの4~5分だったけれど、なんだかとっても代え難い時間を過ごしたような気がしました。




そしてお城に入ると…


痒い

手が、

足が、

浴場で探してみるとかれこれ5か所ほどかゆみスポットが設けられていました。


「やっぱり現実は血なまぐさいな。芸術が良い芸術が」


そう強く感じた夜でした。
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お姫様のお話6

2011-10-25 20:11:16 | お姫様のおはなし
今日のお姫様はとてもロックです。

ドラ焼きが売り切れていたのです。

涙をこらえてのロック、心意気です。



ことのあらましはこうです。

昨日の夜、お姫様は今日のお休みをどう過ごすか、ワクワクしながら考えていました。

「折角予定のないお休みですもの、うーんと好きなことをしなくっちゃあ」

まずはとっても気になってやまない映画モテキについてです

「どうせなら二条の屋敷まで行きたいものだわ、なんてったって側にはよし廣があるのだもの!」

『よし廣』
それは今夏からお姫様が注目している和菓子屋さんです。

梅津団のお妃様に教えてもらった創作ドラ焼きがとっても魅力的で

時期毎に中味が変わるという楽しさ

8月はきなこクリームにわらび餅をはさんだという「まってました!」なドラ焼きがあったのです。

もうその美味しいことったら…
お姫様はそのドラ焼きのためだけに、8月の末日よし廣を訪れたのです。

まるで後悔させないどころか、
「これだから世界は私を魅了してやまない」
とまでいわしめました。

10月はじめに
「今月は…」と梅津団のお妃様から、王様がドラ焼きを食べている写真が送られてきました。

モンブランです!

その様子を見てお姫様がジタバタしたことは言うまでもありません。

それからというもの

どこか心の端に

「千本二条へ行かなくては」
と焦る気持ちがあったのです。

よし廣は月替わりでドラ焼きが変わってしまう…

そう思いながら迎えたついにこの時!

「モテキを見に行くついでよ!」
(だってドラ焼きが食べたいから、だなんて恥ずかしくて言えないわ。そこはやっぱりお姫様としてはね!)


そして夜が明け、期待で胸が膨らみ今にも弾けそうな休日が始まりました。
いまいちなお天気で、馬車を漕ぐべきか迷います。

「雨が降ってきたら…、とてもこの腰ではくじけてしまうわ」
お姫様はぎっくり手前なので安全策をとりました。

一日乗車券を使って

→モテキ
→ドラ焼き
→整体
→東山へ書類を提出
→帰宅

素晴らしい休日の予定でした。
バッチリおめかしもして、お城をでたのは14時!

15時からのモテキを目掛けてレッツゴー!




お姫様の悲劇は既に始まっていました…

まず停留所を間違え北に行きたいのに南行きで時間をとってしまいました

「いっけな~い」
でもお姫様は余裕です

なんてったって今日の星占いは第一位!
「どんなステキが待ち受けているのかしら…」

北行きの馬車はお姫様の前で行ってしまいました。
次の206馬車は北大路バスターミナル城で止まってしまうので乗れません。

「じゃあ22分までまつってこと?これじゃあ間に合わないじゃない!」
(とは言っても1位だもの…望みは…)

馬車に乗りなんだか不安が高まっていたお姫様は映画の招待券を確認しました。

※今年からTOHOシネマでは使えません

まさかの表記です!

お姫様は強がります

「どっちにしたって間に合わなかったのだし…いいわ!」

もうお姫様にはドラ焼きしか残っていませんでした。

千本二条のきらびやかさを全て持つと言っても過言ではない「よし廣」

馬車を降りて足を早めます。

「まさか…、この感じ知っているわ。こういうあきらかについていない日というものはとことんなのよ…いわゆるよし廣が定休日のパターンだわ…!」

くら寿司のうら、よし廣の旗を見つけます

「あいている!」

店頭のポップを見て確認します。

「モンブランドラ焼き…売り切れ」

目を疑いました

何度振り返っても売り切れ…、苦しまぎれに店内へ足を運びます

モンブランドラ焼き
そうかかれたポップの棚は空…

お姫様は瞼が熱くなるのを感じました

お店の人が話しかけます。
「モンブランドラ焼きですか?」
「はい…」
「今日はね、大阪から団体さんがきて。朝からたくさん焼いてたんやけどね…なくなってしまって」

(みればわかる)

お店の方はよい感じにお姫様を憐れんでくれていましたがお姫様の心はギリギリでした。
全然だめでした。

「また明日も朝から焼いてますから…」
「家(お城)が遠くて…たまの休みだったんで…」

お姫様は苦し紛れの厭味を言っていました。

『たかがドラ焼きに涙が零れそうな28歳、帰り際に厭味』
お姫様はもう全てが厭になりました。

目は涙を落とさないためにつりあげ

「またどうぞ」
と送り出してくれるお店の方に会釈するのが精一杯でした。


「この張り裂けんばかりの情熱は、どこへ向かえばいいの…?」

『モンブランドラ焼きがない』
その事実だけが世界を灰色に染めていくのです。


「神様知ってる?こんな意地悪が私をどんどんニヒルにしてくってこと…」

もうわけもわからず呟いた自分に笑ってしまいます…

「あはは…、だめね!本当に辛い時はやっぱり笑ってしまうわ…。」


「気持ちを切り替えなくっちゃね…」

失恋モードオン!

「横断歩道とか颯爽と歩いちゃって。あたしったら90年代のヒロインみたいに…!」


気持ちBGM:かなしみをバネにーしてえー、しあわせをはねにーとべーるころ、ピンチはチャンスだったとー、このかーねにい、かんしゃーするー


お姫様南行きの馬車にライドオン!

三条河原町へ舞い降りたお姫様を待っていたのは…

三条トーリ
ゆるきゃらです!

「かわいい!」
モバ写するお姫様ですがとても恥ずかしくて一緒に…とは言えませんでした。

思いのほか愛らしい三条トーリに思わずほだされたのもつかの間


MOVIXのモテキ上映時間を確認し、間の1時間で整体に行って戻ろうとしたら思いのほか時間がかかりモテキ間に合わず、東山の提出書類も材料が足りないことに気付き

結局やりたいことの半分もかなわない1日でした。


そんなお姫様が一目ぼれしたドレスを即買いしてしまったのは無理もないことだったのです。
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お姫様のおはなし5

2011-06-17 19:30:09 | お姫様のおはなし
お姫様は出町柳商店街に来ました。

「出町柳商店街、その名も桝形商店街!の、この時期が大好き…!!!!」

六月も半ばを過ぎ、桝形商店街はすっかり七夕仕様です。
きらきらしたテープや、蛍光発色の花、とってもおおきなぼんぼりなどが見事に飾られています。
その中に大きな鯖の人形が飾られていたりと、なんとも愉快な光景です。
お姫様は心の高揚をおさえられません。

桝形商店街はなんといっても安い。
手前にあるえびすやはもちろん奥めにあるスーパーも、百円均一もどえらい目玉商品があったりと目が離せません。
金銭感覚がほぼ「ケチ」に開いているお姫様にとって、そこは最高のアミューズメントパークなのです。

中でも愛してやまないのは、商店街西側入り口すぐにある八百屋さん。
商品が前述したスーパーよりさらに安価、そして七夕でないときも蛍光発色の商品ポップ、
なぜかとても赤いその八百屋さんの、おじいさんが大好きなのです。

最近八百屋まで足を運べていなかったお姫様は、楽しみでうふふと笑いました。


「いったいどれくらいお会いしていなかったかしら?」


そう考えた途端、突然恐ろしい想像がお姫様を襲いました。


「もし、おじいさんがお亡くなりになっていたら…」


おじいさんはいつもにこにこ優しく野菜をまけてくれます。
声かけも元気ですが、腰や背中が悪い様子でした。
だいぶご高齢で、それこそいつその日が来てもおかしくないように思えました。


「どうしよう…もし」


中ほどにあるスーパーで牛蒡と豆腐を買い込みお姫様の心が高鳴りました。


「おじいさんがいなかったら…」


せめてお線香だけでもあげたい、
どうしてもっと来なかったのだろう、
悔いても悔やみきれない…
なにも確認していないのに失礼なお姫様ですが、足速く商店街を奥へ進みました。

とても赤い店頭が見えてきて、あまり見たことがないおじさんが八百屋さんの赤いエプロンをつけて立っています。


「あ…!!」


お店の前まで来てお姫様はホッとしました。
大好きなおじいさんが陳列台の横に座って店番をしていたのです。
おじいさんはいつもと変わらずにこにこしています。


「トマト280円やけど、250円にしとくよ」


見慣れないおじさんにすすめられました。
その方も愛想よく声をかけてくれたのでお姫様はトマトを確認し、迷わず


「ほんまですか、買います」


と即決しました。


にこにこおじいさんはスイカの切り売りの横に座っていました。


「スイカおいしいよ。安くするよ」


見ると立派なスイカの8分カットが450円で売られています。
他にも380円のものもありました。


「450円やけど、400円にするよ」


「スイカ…おいしそうですね…」

と言いながらお姫様は心の中で


生きててくれてよかった…
と何度も胸をなでおろしていました。


生姜、レタス、梅を買い込んでいるときもおじいさんは

「スイカおいしいよ」とすすめていました。



お姫様の心中は揺れていました。

いないかもしれないとおもっていたおじいさんがいた…

旬のスイカをすすめてくれている…

おじいさんにとっていいことってなんだろう…

スイカを買うことなのかな…

切り売りだから日持ちしないのだろうな…


そんなことを考えながらお会計を済ませました。

おじいさんはもうスイカのことはいいませんでした。



おじいさんにとっての…


お会計を済ませたのにお姫様はそこをなぜか動けずにいました。
ものの何秒でもありませんでしたが、その時


しあわせは…


「スイカおいしいよ。400円にしたげる。」





お姫様は両腕いっぱいに野菜を買い込み、八百屋さんをあとにしました。
400円にまけられたスイカも右腕にさがっています。


どうかんがえたって、スイカを買うことでおじいさんが幸せになるはずはありません。

「ばかだなあ、あたしってば…!」

旬のものをまだ高い時期に買うなんてらしくない

よく考えたら梅も1キロ350円でしたがもう少し待てばさらに安くなることも知っていました。

「でも…」


「スイカが売れた嬉しさで、ほんのちょっぴりでも、おじいさんの寿命がのびればいいな…」



とても400円には見合わない対価を求めながら、

お姫様は商店街を後にしました。















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お姫様のおはなし4

2011-05-13 20:21:51 | お姫様のおはなし
ある夜、お姫様はお城をとびだしました。

時刻は19時45分ごろ

5月の中旬、昼間は夏のようにあついけれど、夜はまだ肌寒い
そんな日です。

「春の夜遊び…素敵な響きね」

寒さをみこしてお姫様は、ドレスの上からジャージドレスをはおり、百万遍のダイコクへと馬車をすすめました。

「おもったよりも寒いわ、夜遊びなんてしてられない。
 しかたが無いわ、ダイコクはあきらめて百円屋にしましょう。
 5円ほど高くなってしまうけれど…」

お城と百円屋は目と鼻の先ほどに近いので、あっという間についてしまいました。

お目当ては小麦粉です。

紅茶クッキーを作っていたのですが、小麦粉が足りず、生地がまとまらないのです。

「小麦粉、小麦粉…あったわ
 …500g、105円…」

「500g…」

お姫様は考えました。

(記憶が確かなら、私がさっきまでつかっていた小麦粉は700g。
 あれはダイコクでかいもとめたものよ、値段は100円ぽっきり…
 ところがどっこいここでは500g105円、500g…)

(さらに記憶が確かなら、なかむらでは小麦粉が安い時、
 フラワーチャック付き小麦粉1kgで118円だったわ。
 500g105円では…)

「納得がいかない」

お姫様は百円屋をあとにして、そこからまた目と鼻の先にあるスーパーなかむらへ向かいました。
18時半ほどに牛乳とエリンギを購入したので本日二度目の来店です。

「安い時は大体コーナーのあいだに特売表示されているけれど…
 みたところないわね。」

仕方なく粉コーナーへはいると、そこにすぐ「フラワーチャック付き小麦粉」をみつけました。
これよこれよと近づいた物の、そのg数と値段を見てお姫様は唖然としました。

「750g178円…」

まだ500g105円のほうが安いのです。
特売日にしか購入したことが無かったため、これでも安いと分かっているのだけれど、
「店を梯子してまで」もちろんそれも含めて
お姫様にとってその値段設定は俄然高いのです。お姫様なのに!

「バイオレット小麦粉なんて1kg248円よ…何がちがうのかわからないけれど…」

チラとめをやると横に天ぷら粉がありました。

「わたし天ぷら粉ならお城にあったようにおもうけれど、なにかちがうのかしら」

天ぷら粉には「卵入り」とかかれたものもあります。

やめておこう、お姫様は思いました。

スーパーなかむらをあとにしながらお姫様は考えました。

「残るはダイコク、あったとしても500g100円が妥当な線…
 グレース田中が開いていれば…」

グレース田中の閉店は20時、もはや20時をさす時でした。

ああどうしてわたしは最近小麦粉をあまり買わなかったのだろう…!
粉もの料理はたくさんするからと、フラワーチャック付き小麦粉が安い時は
いつも買いおきしていたのに!
つい先だってなんとなんしに「いいかげん買いおきしすぎだろう」とやんわりやめてみたら
それが…この様よ!

後悔をしながら
たかだか小麦粉一つの為に走りまわる自分を嘲笑いながら
諦めきれないお姫様は東大路通りにでて、女々しくグレース田中の前を横切ろうとした、その時です。


「閉店作業をしてはいるが、まだ客がたくさんいる…!なんてこと!」

お姫様は馬車の鍵もせずに、グレース田中にとびこみました!
店内には「ほたるのひかり」と閉店アナウンスがしきりに鳴っています。

「小麦粉…小麦粉…」

目にとまるのは何故かホットケーキの粉ばかりです。
コーナー間の特売風にもみあたりません。
しかたなく粉コーナーをさがし入りました。
この時点でお姫様は「発見されるであろう小麦粉は安くない」そうあきらめていたのです。

フラワーチャック付き小麦粉

ありました、なかむらでは178円…それが


「108円!?」

お姫様は目を疑いました。
どうしたことでしょう!なかむらと目と鼻の先のグレース田中で70円もお安い!
g数は750!
3円違いで250g+チャック!

「奇跡なの!?」

よくみると値段表示の電光が

「特売」
と赤く点滅しているではありませんか!



お姫様はレジ袋を断り、フラワーチャック付き小麦粉を二袋持参した手提げに入れました。

グレース田中は

「14日(土)は15日定休日の為売り尽くし」と書いてありました。


「明日もくるわね」


お姫様は鼻歌を歌いながら馬車にのりこみました。



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お姫様のおはなし3

2011-05-08 00:45:49 | お姫様のおはなし
その日、お姫様は朝からそわそわしていました。

「今日はとっても大事な日よ…」

お姫様がおそるおそるベッドルームから起きだして向かったのは…
バスルームです。

3週間ほど前、お姫様は誓いを立てました。
それは
「5月7日までに2kg痩せないと、7500円もした『欲望という名の電車』のチケットを人に譲る」
というものでした。

つい先日まで育ったお城で御馳走三昧で三日ほど暮らしていましたから
これはこれはとてもとても
何度かなんぼか痩せていた分も取り戻し、
期日の二日前「まだ1,5kgほど痩せなくてはいけない」状況でした。

とても難しいことです。
自明の理というものです。
それでもたてた誓いを撤回するわけにはいきません。
お姫様は食べたり食べなかったりできるだけお腹をすかせてみたりしました。

7日、起きざまに測った数値だと1kg減、100~500gほど足りていません。

「きゃっ!」

お姫様は量りからおりました。
もう一度のりました。
おりまして、測りのメモリを調節し、もう一度のりました。

だめです。
針がもう少し左側を指してくれることはありません。


がっくりとしたかと思いきやいなや、お姫様は誓いをぼっきり折ったのです!

「開演時間は18時、まだ9時間もあるわ!それまでになんとしてでも100g減すればいいのよ!」

なんということでしょう、お姫様はチケットを譲る気など毛頭ありません。


そこからお姫様はみずを飲むのも最小限に皮膚科へと自転車を走らせました。

「すこしでも運動すればなんとやら…」

皮膚科でたくさんお薬をもらって、やっぱりステロイドなしの処方ができない自身にがっくりし、
同居のお姫様おすすめの「ぽっぽや」をよみはじめ、素晴らしい内容だったため泣き
かえりみちすがら八百屋さんで苺が安かったので苺ジャムを作るために買いもとめ

お城にもどるやいなや、
バスルームの掃除をし、
金魚のいなくなった水槽を洗い、
体重測定する前に用意しておいたクッキーを焼き、
傍らで苺ジャムを作りはじめ、


おなかぺっこぺこの
いよいよ測定です。

左側をさしました!

「よし!もういいいわ!」

お姫様は堕落した判断基準にのっとって合格判定を下しました自身に!

そうして我慢していたパンや牛乳、焼きたてクッキー、ジャムあくでアイスをたべたりと、思うさまたのしみました。
(あれれ~?)

クッキーもジャムも甘くないしあがりで大満足です。

ちなみに皮膚科を待つ間に買い求めた携帯電話の充電機もみずいろをチョイス!
とっても可愛くて
お姫様はとっても気分が良くなってきました
(あらあらおやおや、それからどんどこしょ~)

河原町でもお姫様は買い物をたくさんしました。
お洋服やら日焼け止めやらバスの回数券やらもう、「女の子は大変なんです」というやつです。
めうつりしがちなお姫様は、電車に乗る時間が少しぎりぎりになってしまいました。

「ふう、でも17時発なら18時開演だし、駅から近いし問題無いわね…、
 うふふ、さ~て浅田次郎珠玉の短編集を読すすめるわよ~」

電車はゆったりと座ることが出来、お姫様は思うさま泣いたり、怖がったりしました。

「今日はいろんなことを片づけてしまったけれど、どれ一つし損じなかったわ。
 それが逆に怖いくらい…気がかりなのは、占いね。今日は11位だったけれど」

そうなのです。
お姫様の携帯電話は毎日12星座占いのランキング(自身の星座だけ)を表示するのです。
それによると7日は
「人間関係をこじらせるようなことが起こる、何かに邪魔をされるが折れるな」
ということがかいてあったのです。

「ひっかかるわ、こんなにすべてがうまく行っているのに。…人に会ってないか
 らそのあたりはどうにもならないしね!浅田次郎の面白いことったら!」

悲劇は降車してから始まりました。

まず劇場がどこかわかりません。
良く考えたらそこへ観劇に来るのは初めてなのです!

「どうしよう、もう47分だというのに!」

開演迄13分、急いで行けば問題ありません。
場所も遠くありません。

さっさとおまわりさんに教えてもらいシアタードラマシティへ向かいます。

「おもったより遠いわ…」

地下一階へすべりこみ、うけつけを発見、55分
「さあチケットを…」

ありません。
「えっ!」

出します、みます、もどします、だします、みます、もどします

「昨日セブンイレブンの封筒から出して、確かにしまったはずなのよ!?」

出しますみますもどしますだしますみますもどします、ありません。

「………」
汗を流しながらお姫様は心の中で

11位!11位!11位ー!!!!!!!!!!!!

「なくしてしまったらはいそうですかじゃあむりですでしょ!どうしよう~!」

その時みしりのお姫様が入場していくのをみました。

「開演いたします、お早く~」というアナウンスにたえかねて係りの者に

「すみません、チケットを忘れてしまって…」
「ではこちらで手続きをしてください」

できんの!?さっさとすればよかった!などと考えながら
てつづきをしますと

とりあえず、チケットのもうしこみがあるかをかくにんする
できたらチケットをきって入れる
ただし5500円支払う
後日郵送で忘れてしまったチケットを送ったら、この分は返金になる

ということで、
「それでおねがいします」
とお財布を確認したらば

おかねが足りない。

「すみません、おかねがたりません」
お姫様とはおもえません
「コンビニなどでおろされますか?」
「あ、はあ」

開演

土地勘ないのに!とはんべそをかきながら
挙句遅刻だなんて!ふてくされたいお姫様の眼にampmが!すぐに!
「セブンイレブンがすぐみつからないのに、手数料のかかるとこばかりすぐみつかる…」
お姫様は日頃ケチな生活をしているため、こういったことに激しくダメージをうけます。

そうしてなんとかうけつけを通り、観劇!
「たかいチケットなのにオープニングをみのがした」
ダメージをうけます。
そして返送用の手続きにあった

550円の送料切手を、書留に入れて郵送

「5500円かえってくるといっても、手数料差し引き1000円強とられる…つらい」

なかなか観劇に集中できない20分くらいをすごし、
どうにか気持ちをとりなおし、3時間に及ぶ芝居を観劇。

途中やすみで、うけつけであった他国のお姫様とはまた別の他国のお姫様に会いました。
「笑い方でいるのがわかったの」と話していました。

お姫様のお腹はぺこぺこでした、観劇前からぺこぺこだったのですから
もうそれはひとしおです。

劇場で販売されている食べものはもうたいがい100円くらいはみずまし金額で
ただでさえ
「クッキーをもってこなかった」ことを後悔していてチケットも忘れてもういろいろなお姫様が手をだすはずもありませんでした。

3時間に及ぶ観劇を終え、御姫さまは梅田の駅で551の肉団子を買いました。
そしてホームで食べました。
ストレートに完食していまいましたから、お姫様がどれほどうえていたか、またその後どれほどもたれたかはいうまでもありません。

電車をまっていると、友達ではないけど名前や顔を知っている王子様と、そのお姫様にでくわしました。
仲陸奥まじいさまが、
もたれた胃や、1000円ほどの無駄や、探さなければならないチケットや
お姫様の荷をさらにおもくしました。

「朝から誓いをぼっきり折ったのだから報いなのだわ
あの時点で本当ならさらにチケットを購入しなければこの公演はみれなかったのだもの
むだにした1000円といえば、先月高槻のお城でみつけた母上のへそくりと同じだけだわ、やはりまるもうけなんてあまいのね
日頃からチケットショップで切符を買ったりして節制している分、へんなゆとりが出来てしまったのかしら、「お前ちょっとやりくりすぎ」と神様が私にツケをまわしたのかしら
きっとお城のどこを探したってチケットはでてこないのよ、だってどこにやってしまったかまったくおぼえていないもの、4000円だってかえってきやしないのよ…」

何を考えてもばからしいことしかおもいうかびません。
完全にお姫様はおかねに心をやられてしまいました。

お姫様はでんしゃにのると、まず浅田次朗短編を一遍読み
さきほどうけとった返金手続きを確認するためお財布をみました







チケットがはいっていました


すぐ気づきました


そりゃあおぼえてないはずです。
さいふにしまったのが本当だったのですから。


何故…
もし思い切ってばらばら出したらみつけられたか
とちゅうきゅうけいでかくにんしてみたらちがったか
忘れました手続きの際にもっと財布の口をひろげていたら誰か気づいたかもしれない

「無駄よ、すべて過ぎたこと…」
遅刻すら、銀行手数料すら無駄でした。冷汗すら、半べそすら、これいじょうにきずつきたくないためにふくらました被害妄想すら


無駄無駄無駄無駄~!!

と言ったのはディオだったか…






今はかえりみち自転車で豪速を出したので、すこしふっきれたようです。

「人生、たまにはすごくあほなことをしなくちゃね。人生が豊かにならないもの」

と、自身を励ますことにしました。















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お姫様のおはなし2

2011-02-21 23:02:48 | お姫様のおはなし
ある夜、お姫様はふらりとお城を出ました。

誰に誘われたわけでもなく、夜の街へくりだしたのです。


タッタタッタと両腕をふってこぎみよく、東をめざしました。

フッフ、ハッハと息を整えて、はやさをまもって

「めざすはらーめん屋のとおりよ」



お城かららーめん屋のとおりまでは緩やかな坂が続いており

日頃あまり運動をしないお姫様のからだにはこたえました。


「毎朝きちんと腹筋、背筋、側筋、腕立て、少々のヨガをやっているのに…、どうして…」
あまりにも早いデッドゾーンのおとずれに、お姫様は不甲斐無さを感じました。

「言うが易しね」
お姫様はつい最近こどもたちとはなしたことをおもいだしました。

「デッドゾーンに入ったら、くるしいけれど速さを守り続けることよ。
 もしもそこでやぶったりなんかしたら、そのあとはもうくるしくてたまらなくなるんだから」

思いだしながらお姫様は恥ずかしい気持ちになりました。
「ああ、言うが易し…こういうことを言うのね。言うが…」

また一つ賢くなりました。

お姫様はにがしょっぱい気持ちになりながら言葉を繰り返し、そして速さを破りました。


歩き始めたのです。


「まあ…!こんなに楽だなんて…」
ある種のカルチャーショックが起こったように感じたのもつかの間
「これが諦めるということ…」
お姫様はつばをのみました。


お姫様は速さを破ってなお、目的地まで撤回してしまいました。
細い川のところで北に向って歩き始めました。
「まあいいわ、この川が大好きだし」

そうです。
別にらーめん屋に行ってラーメンを食べたかったのではないのです。
走ってダイエットをしてみよう、そう思ってお城を飛びだしたのですから
お財布も持たずに



「北に向って、川のとぎれるところまで行ってやろうじゃない」

お姫様は心に決めました。





「…でもやっぱり北大路通まででいいわ」

と思いなおしました。



北大路通を西にむかって歩いて行くと、ミスタードーナツがまぶしくひかります。
その西側にある薬局も閉店しているのにまぶしくひかります。

川端通りまで行くと暗くすこしおちつきました。

「やっぱり川はいいわね」
お姫様はひとりでにうれしくなりました。

そうです。
さっきからずっとひとりで居るのだけれど、なんだかたのしくてたまらないのです。

そとの空気がおいしく感じるのはどうしてでしょう。

けしてお城が金魚の餌臭いからではないはずです。それだけではないはずです。






「とっても大きな舞台にいるみたい、わくわくしちゃう」



お財布も、
やくそくも、
お仕事も、
ようじも、

なにももたずに

お姫様はただ外にでてきました。

お城の鍵だけ携えて


走ったり
歩いたり
段の上にのぼってみたり
ただ夜の街をみたり

なにもかんがえずに
なににもおわれずに

じぶんでたてたやくそくも、すきなように破っては作って

とても楽しいのです。



「これはいいわ、ぜひ毎日とりくみたいところだけれど」


「きっと、あしたにはわたし、これに今よりもなれてしまうのよ」

























とことことすっかり歩きながら

あまりよくない本ばかりだと言われている本屋の店頭に、
桂枝雀のCD本が売られており、お姫様はたいへん欲しくなりました。
「420円だなんて…」
チラと横にめをやるとそこには15年以上も前に卒業した「なかよし」が売られています。
「このような画風がいまの流行りなのね…」

時の流れを感慨深く思いながらお姫様は軽く信号無視をしました。
その途端ふみきりがなり始めたので、すこし驚きました。


お姫様はお城のすぐ近くの神社で滑り台をしました。

小さな旅の終わりに。

滑り台は、のぼるとすぐ斜面になっており、すわるところが少ないちょっと危ないものでした。




お城にもどると1時間も経っていました。

そしてそのことをいっしょうけんめい書いていたら1時間経ってしまいました。





ちょっと、「しまった」と思いました。


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お姫様の話1

2011-02-10 21:38:47 | お姫様のおはなし
あるところにお姫様がいました

このお姫様はいつもフガフガ文句を言っていました

「どうして私には王子様が現れないのかしら、なんの嫌がらせかしら、手違いにも程があるわ」

そういってぶすくれているのです。

ある日隣国の王様とお話をしました。

王様にはとっても素敵な王妃様が居て、お姫様はいつも二人を羨んでいましたから、

王様とお話していてもまた
「どうして私には…」と同じ話を何度もします。

王様はやれやれと言った様子でお姫様にいいます。

「君は君で素敵じゃないか。そんな王子様が現れないからって一体全体なにが不満なんだい」

お姫様はぎっと王様を睨みつけ

「そんなことは王様が素敵な王妃様を見つけているから言えるのよ」

と言い放ちました。


王様は
「確かにきみの言う通りだ」
と言って嬉しそうにしました。

お姫様は舌打ちしたい気持ちと王様の幸せを喜びたい気持ちとが五分五分でしたから、どんな顔をしたらよいのかわからなくなりました。

帰り道、お姫様は呟きました。
「畜生」

気持ちを何度も確認するうちに羨ましさが勝ってしまったのです。

お姫様はとぼとぼ帰りました。


お城に帰るとお姫様は

「これはうだつのあがらないことなのよ」とことわってから、またフガフガと言いはじめました。

お城にはもう一人お姫様が居て、このお姫様も同じようなことで悩んでいましたから

二人のお姫様が揃うと
「うだつのあがらないお話」が
まるで楽しいパーティーのように続くのです。
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