娘が2月5日土曜日、エジプトから帰還した。
駅に現れた娘の姿を見た時は力が抜けるほどホッとしたが、その表情にはいつもの笑顔は無かった。
カイロ空港へ向かう車から見たタハリール広場の変貌に、少なからず衝撃を受けたようだ。
タハリール広場は通勤や友達との待ち合わせ、乗り合いタクシーのお兄さん達とのおしゃべりなど
娘にとって思い出深い場所だった。
慣れ親しんだ店や通りの破壊が想像していたよりもひどく
「大切な彼氏が理不尽に傷を負わされたみたいで辛い…」と表現した。
お世話になった方々や友人達にも、満足に別れが言えずに帰ってきてしまった事も気がかりだったようだ。
マンションの部屋の大部分の荷物もそのままだった。
「情勢が安定したら戻ればいい。」と言ったら、少し明るい表情に戻ったが、
もうひとつ、娘にとっては辛い現実が待っていた。
愛猫アリーナの容体は伝えていたものの、亡くなったことは心が折れないよう帰国してから伝えようと思っていた。
車の中では言い出せないまま我が家へ到着。
娘は玄関ですぐに気づいたようだ。アリーナの日用品が無くなっていたからだ。
「やっぱり、間に合わなかったんだ…」と泣き出したが、看護には手を尽くしたこと、安らかな最期だったことを話したら、
「アリーナ幸せだったね…」とつぶやいた。
人生にはいろいろなことが起こる。
今回のことは、辛い体験であったことは確かだが、
無事帰国出来たこと、帰国に尽力してくださった方々や多くの方が見守ってくださったこと、
アリーナが天寿を全うしたことは、幸福なことだったといえる。
今晩は温かいしゃぶしゃぶとお風呂で、心と身体をしっかり癒しぐっすり眠ってほしい。
そうすれば、きっと明日はそのことに気がついてくれるはず。