昨夜は、前線の通過ですごい雷鳴と雨で大変でした。
今はすっかり落ち着いていますが、真冬並みの寒気が南下して、今夜
は吹雪との予報が出ています。
2008年第139回芥川賞受賞作、楊逸さんの「時が滲む朝」を読みました。
在日の中国人が日本語で書いた小説が芥川賞を受賞したというので、
話題になった本です。
あらすじ
・高校時代からの親友である梁浩遠と謝志強は、1988年に同じ名門の
秦漢大学に入学する。まだ若い大学教授である甘凌洲や多くの学生
達と 議論を重ねるうちに、”愛国”や”民主化”、”アメリカ”といった
ことを深くに考えるようになり、民主化運動に参加する。
民主化運動が挫折した直後、二人は運動を侮辱した労働者たちと
口論のすえ乱闘を起こし傷害罪と器物損壊罪で3ヶ月の拘留となり、
退学処分となる。
学生を指導した甘凌洲は外国へ亡命し、女性学生リーダーである
白英露は行方不明となる。結婚後、日本へ渡り、民主化運動を続け
ていた梁浩遠は、10年後、日本で3人と再会する。
民主化運動に参加した大学生が、運動の高揚の中で世の中の矛盾
に目覚めて行きます。しかし、青年たちは天安門事件を契機とした運
動の挫折と失意を経験しますが、その後の人生の苦悩や哀歓を通し
て、たくましく成長していきます。
民主化運動への参加の動機や、運動の挫折などは、さらっと描かれ
ていて切迫感に欠けるのですが、退学処分を受け、日雇い労働など
で食べることにも事欠く生活を通して、たくましく成長していく若者たち
への筆者の暖かい眼差しに好感が持てます。一読をお勧めします。