徒然なるまままに

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狩野派誕生 ―栃木県立博物館コレクション―

2007-04-11 | 絵画
狩野派誕生 ―栃木県立博物館コレクション―
2007年4月1日から5月27日
前期4月1日から5月1日、後期5月2日から27日
大倉集古館

狩野派の初代・狩野正信が関東に縁があるということもあり、栃木県立博物館は、まとまった狩野派コレクションを有している。二代元信が大成した初期の狩野派絵画を中心に、江戸狩野の立役者・探幽らの作品を加えた、栃木県立博物館のコレクション40点が一挙に展観される。正信筆の「観瀑図」(重要文化財、栃木県・大祥山長林寺蔵)、個人蔵の二点に加え、大倉集古館の「探幽縮図」も参考出展。パンフレットは500円。

全般的に状態が(補修のためか)素晴らしいため、緊迫した空気がみなぎり、感嘆することしきり。
*は、前期のみ。

1.初代・狩野正信(1434-1530)
正信は、上総狩野家が直接の出身という説が唱えられえているそうだ。
  • 狩野正信「観瀑図」(重要文化財、栃木県・大祥山長林寺蔵);下野国足利庄の代官長尾氏が正信に描かせ長林寺に寄進したとされるという。縦に流れる瀑布の様子など締まった画面は迫力の有る名品。解説によると正信の娘が長尾氏に嫁いだという。
  • 伝狩野正信「松下二仙図」 近藤滋弥男爵旧蔵。かなりあくの強い人物。

    2.二代・狩野元信(1477?-1559)
    伝元信の作品しかないが、状態は(補修したのか)素晴らしく、緊迫感の有る作品が並ぶ。
  • 伝狩野元信 蕪菁図 策彦周良賛;伝牧谿「客来一味図」(宮内庁三の丸尚蔵館)を基にして描いたという。
  • *伝狩野元信 山水図屏風; 有馬伯爵家(久留米藩主)旧蔵;六曲一双だが、もともと別の作品を組み合わせているという。工房作というが、張り詰めた空気が伝わってくる優品。
  • 伝狩野元信 達磨慧可対面図 東渓宗牧賛;

    3.元信周辺
  • *右都御史 牧牛図;二幅; 右都御史(狩野玉楽)(16世紀後半)は、小田原狩野の画人。細部まで描かれた優品。
  • 官南 渡唐天神図;官南(16世紀後半)。正面を向き梅が枝をもった渡唐天神図。
  • 石樵昌安 鴛鴦図;信濃の画僧(16世紀後半)。東博にも時々出展されている覚えがある。彩色が施された鴛鴦図。
  • 狩野秀頼 布袋図;狩野秀頼(?-1534-1576-?)といえば、国宝「高雄観楓図屏風」。昨年東博の国宝室で楽しんだ。元信の次男または孫とされる人物。こちらは、墨による袋に寄りかかって足を投げ出して布袋図。

    4.狩野興以(?- 1623-1636)
    狩野興以は、三代・光信の高弟の一人。光信の死後、探幽などの後見にあたる。
  • * 狩野興以 月下猿猴図; 二幅; 猿の毛並みが見事。猿が月に手を伸ばす画題は、よく見る画題だが、猿が湖面に映る月を取ろうとして溺れ死んだ話に、自らの力に余る大望を抱くことのはかなさを説く禅画「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」に由来する画題という。二幅にしては、並べ方が少しあっていない気がしました。

    5.狩野山楽(1559-1635)
  • 伝狩野山楽 野馬図屏風;躍動感ある馬の表現、さまざまな斑の馬。馬に格段の興味のあった武将たちには、好まれた画題ではなかったのでしょうか?

    6.狩野探幽(1602-74)
  • 狩野探幽 瀟湘八景図巻;探幽壮年期にあたる斎書き時代の優品。ターナー様の墨をつかった抽象画。洞庭秋月を欠く。
    他には画巻としては本間美術館に2巻本がある。
  • 狩野探幽 富士三保清見寺図;三幅対;探幽は生涯に25作を超える富士図を描いたそうだ。本図は、日本平から見た富士三保清見寺図。淡墨、淡彩の日本画の源流のような作品。

    8.狩野安信(1613-85)
  • 狩野安信 東坡騎驢図;理知的な画面。前かがみで、ぴんと跳ねた驢馬の耳。

    9.その他
  • *衛藤良行「山水図屏風」;衛藤良行(1761-1823)は、肥後細川藩御用絵師。雪舟風の山水画
  • *矢野良勝「風景図屏風」;矢野良勝(1760-1821)は、矢野派第五代。遠近法的景色。

    10.狩野意信
  • 狩野意信 日光名所絵図巻;狩野意信(-1847);豪華絢爛

    この他に、下野ゆかりの美術として、「奈良絵本 俵藤太 17世紀」が展示されていた。豪華な絵本。

    後期には
    狩野正祐「鶉図」(前期)
    官南「高士観瀑図」(後期)
    伝狩野雅楽助「廿四孝図屏風」(後期)
    などが展示される。また訪れたい。

    (8日)
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