岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

異変、ワックスが効かない…(その2)

2009-03-21 05:18:18 | Weblog
 (今日の写真は岩木山東面の大雪原である。遠目には真っ白で混じりけのない、汚れのない雪面だが、積雪はすべて「酸性雪」だ。この雪は酸性物質である「窒素酸化物」や「硝酸」、それに、「硫黄酸化物」や「硫酸」を含んでいる。
 このまま、降雪がなければ、間もなく、「黄砂」が降ってこの表面をうっすらと黄変させながら覆うだろう。
 この雪層の表面直下は「溶け出し」て水が滲んでいる。その水も、もちろんph(ペハー)が7以下の酸性だろう。
 ワカンを使って、この時季に登山する者にとっては余り問題にならないことでも、「スキー」や「スノーボード」を使用して、「滑走」する者にとっては、表面直下の溶け出した水分やその水分に含まれている成分は、問題になる。
 今日の話題は、そのようなことに触れている。毎年見るこの時季の、この尾根の風情には変化はない。しかし、季節推移のずれと、雪面に浮いている油煙とそれに含まれているタール成分は確実に「異変」の兆しを暗示している。
 黄砂も「スキーヤー」や「スノーボーダー」にとっては厄介なものだろう。)

       ◇◇ 異変、ワックスが効かない(その2) ◇◇
(承前)

 酸性雨は自然物だけではなく、人工物にも被害を与える。それは建造物への被害だ。
これが降ると、酸性雨がコンクリートにしみ込み、コンクリートの成分であるカルシウムを溶かしながら外に出る。
 外に出てきたカルシウムと空気中の炭酸ガスと反応して「炭酸カルシウム」が出来て「氷柱」のようになって伸びる。空間の鍾乳洞のようなものだ。これが、「酸性雨」が降っている証拠なのである。
 他には、国宝級の建物や彫刻が、酸性雨によって溶けていく現象が起こっている。これ以上に深刻なのは、「鉄道などのレールの腐食」である。放置していると電車や汽車が脱線し、大きな事故になる可能性もあるのだ。
 これは、当然、人体にも影響がある。北欧で、髪の色が緑色になるという事件が多発した。これは、酸性雨が人間の髪の毛に当たり髪の毛を変色させたというものである。

 元々、雪は雨が氷化したものであるから、当然、岩木山の積雪もこの酸性物質である「窒素酸化物」や「硝酸」、それに、「硫黄酸化物」や「硫酸」を含んでいる。

 『(雪の)匂いの源は、この空気に含有された微粒子なのであろう。こう考えると、雪の匂いが、妙に埃りっぽいことも、煙り臭く、灯油ぽいことにも頷くことが出来る。
 冬山では、雪を溶かして水を作る。泊まるところは、雪洞だったりテントだったり小屋だったりして、いずれも中は暗い。それゆえに、作られた水は、その含有物を隠し果せる。ある時、余った水を捨てるために外に出て、明るい陽光の下でそれを見て、思わず呻(うな)ってしまった。
 表面には油煙がたくさん浮いている。中にはウールや木綿の繊維が漂っている。切れ切れになった枯葉の破片が泳いでいる。眼に見えているだけでもこれほどである。眼に見えない微粒子は、きっと数を知らないほど多いだろう。
 空気はいろいろなものを運ぶ。雪のひとひらはその空気を伴ない地上に降りる。濃霧の中の雪の匂いは、とりわけ煙り臭く、それは化石燃料のものだ。
 毎年毎年、雪の匂いから木材燃料の芳香が遠のいていく。二十数年前の雪の匂いには、はっきりと木酢酸や木の煙りの燻りがあった。
 大気汚染はこんなところの、こんなことでも証明が出来るものだ。今はまだ、匂いの範囲だが、そのうちに雪が味覚される時が来るかもしれない。
 いくら白くても、無味であるという保証を、もはや自然はしないだろう。酸性雨はいつでも、その名称を酸性雪に変えることが出来るはずだ。』と、拙著「陸奥の屹立峰・岩木山P16~17」に書いている。
 これは20年ほど前に体験したことが素地になっている。

「異変、ワックスが効かない…」ということは端的な解釈をすると「滑らない」ということだろう。私はこの酸性物質と「ワックス」の関係から「滑らない」原因を考えてみたいのだ。
 スキーにしろスノーボードにしろ「滑らない理由や原因」は沢山あるだろう。色々と言われているが、元を質(ただ)せば「摩擦」という問題である。「摩擦」が少ないほどスキーはスムーズに「滑る」のである。 
 滑っている間には、「キネティックエネルギー」というエネルギーが発生している。このエネルギーが発生すればするほど動きはより速くなる。
 そのエネルギーの一部は、摩擦によって失われたり、熱に変わったり、スキーの振動で失ったりする。エネルギーは、また雪が圧縮されたり、スキーの動きで押しのけられた時にも消費される。消費されるエネルギーが少ないほど、「キネティックエネルギー」が保たれるのだ。その結果として、スピードが増すのである。
 エネルギーを妨げる最大なものが「摩擦」なのだ。
 その「摩擦」には…
1.乾燥摩擦: 乾燥した雪の結晶が滑走面に突き刺さり、擦れあって起きる。
2.水分摩擦: 水滴が滑走面に張り付いた状態になると、吸引効果から出来る。
3.静電気摩擦:滑走面やエッジと雪面により生じる静電気によってもたらせられる。
…などがある。
 なお、今回問題にするのは「2.水分摩擦」と、ここには挙げられていない「ワックスの成分と雪面に布置された物質」との化学的、かつ物理的な摩擦についてである。
 静電気は汚れを誘い込み、その汚れが摩擦の原因となると言われているが、「乾燥」と「静電気」摩擦については、今回の論が岩木山の斜面を滑るということであって、「スピード競技」ではないので割愛する。

 つまり、「ワックス」とはこれらの「摩擦を軽減させる」ために必要なものなのである。(明日に続く)

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