岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

金子みすゞの詩/みんなちがって、みんないい/あかい椿がさいていた、郵便局がなつかしい(その2)

2007-10-10 05:04:25 | Weblog
(今日の花は、タデ科タデ属の多年草、サクラタデである。花の色が桜に似ていることからの命名である。秋のこの時季に、水辺や湿地に生える愛らしい花である。あまり自動車の走らない道をゆっくり歩き、立ち止まって路傍に目をやると出会える花だ。タデの仲間は一見すると地味だが、そばによってよく見ると、はっとするような美しさに出会って驚くことがある。)

☆ 金子みすゞの詩/みんなちがって、みんないい/あかい椿がさいていた、郵便局がなつかしい(その2) ☆

(承前)
    …みんなちがって、みんないい…

 組織や集団の中で「自己目的化」のみの活動や行動に走るようになると、時として、幹部たちは「寄り合い集団」や「寄りかかり、もたれ合い」の集まりを形成する。そして、「組織や集団」内にいる数少ない「異質」に対してのレッテル貼りに勤しむ。これは単純なことだが、逆に、それが「異質」なのかそうでないのか、複雑で理解が遠い時は不安になってきて、同じ思いの人同士ひとつ所に集まって「小集団」で特定の個人に対してレッテル貼りに勤しむようだ。
 面白いことに、傍目にはこれが「組織内の異質者を糾弾して正常化している」と見えるらしい。往々にしてレッテルを貼る側はそれを計算しているようで、私たちは「組織内に芽生えた悪を懲らす善者なのだ」というレッテルを自分たち自身にも貼るのである。
 ところが、レッテルとは「決まり文句」が常套語であることが多い。だから、「異質」の意味深長さや複雑性を表現することは不可能である。よってこのレッテルは多面多様な「異質」とされた人の「一面」だけを見ているに過ぎないものになるわけである。
 このような組織の中では、決して「価値観」の相違は立ち並ぶことはない。何故ならば、根底に「個性」というものの「本質」を考えたり、個性とは何か、人間にとって個性はどうして必要なのかということを学んだことのない事実があるからだろう。
 私は、人間にとって「個性」とは「命」と対等に大事なものであるように思われる。自分が自分を真剣に生きるためには、まずもって「個性的」であるべきだし、他人が真剣に生きる場合も、その人の「個性」を十分尊重するつもりである。
 民主主義とは一人一人の人間の個性が尊重されるところにしか存在しない「思想」である。この意味からも、ただ単なる「多数決」優先の組織体には、民主主義はないのである。
 「すずと、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい。」
この一節には真の民主主義までが詠い込まれている。「ひさの星」の「ひさ」にしろ、「金子みすゞ」にしろ女性は優しく強い。このような深い愛情の持ち主、個性を大切にしてくれる人に出会えたら、私の人生も少しは変わっていたかも知れない、などと考えることは欲張りというものだろう。

     …あかい椿がさいていた、郵便局がなつかしい…

 また、「金子みすゞ」は次のような詩を残している。これは大正年間に書かれたものだ。

 『あかい椿がさいていた、郵便局がなつかしい。いつもすがって雲を見た、黒い御門がなつかしい。
 ちいさな白い前かけに、あかい椿をひろっては、郵便さんに笑われた、いつかのあの日がなつかしい。
 あかい椿は伐(き)られたし、黒い御門もこわされて、ペンキの匂(にお)うあたらしい、郵便局がたちました。』
                          『郵便局の椿(つばき)』

 明治初年に郵便制度が出来た。その後、外形としての局舎は何度も改装や新建築を繰り返してきたが、制度そのものは、いい意味でといえるほどに「頑(かたく)なに」、それを堅持し、守ってきた。
 「郵便という字義」に忠実だったのである。特に、「本来の郵便業務」は「頑な」な、その制度と運用ゆえに、国民の信頼を得てきた。
 私は最近こそ、「メール」利用が多くなっているが、物心がついてから60余年、「手紙やハガキ」を愛してきた。
 「手紙やハガキ」を愛してきた心情の根底にあるものは、いや、愛し続けることが出来たことの根底にあるものはと言い換えたほうがいいかも知れないが、それは「郵便の集配業務」に対する信頼であった。
 「郵便の集配業務」の確実さに対する確固たる信用でもある。これまで投函した「封書やハガキ」はどのくらいになるであろうか。
 思い出すことも出来ないし、思い出そうとする気もない。それほど多くの「封書やハガキ」をそれぞれの宛先人に送ってきた。
 しかし、私の「宛先人に関する情報が不備」であることによって配達されなかったもの(これだってすべて「戻って」きたのである)を除いては、すべて配達された。これはすごいことであろう。(明日に続く)

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