岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「風力発電施設」風速等長期観測用タワー

2009-12-09 05:24:42 | Weblog
(今日の写真は、「あるがままの岩木山」からすると明らかに異物である。果たして、これは何か。これは「風力発電施設」建設のための風速、風向、風力長期観測用タワーだ。
 近いところで見ているから「岩木山を背景」とした「景観」を見ることが出来ないので、ただただ「その場所にある巨大な異物」なのである。
 「建石」集落辺りから見たらどう見えているのだろうか。また鰺ヶ沢町の中心部辺りかはどのように見えているのだろうか。
 そのような思いを持ったが、何せ自動車を持たない身である。この現場まで同乗させてくれ、案内してくれることだけも、私にとっては大変有り難いことなのである。ということは、同乗させてくれる人には逆に「迷惑」をかけていることになるなのである。
 だから、それ以上の「お願い」として、もう少し「下った」ところからこの「長期観測用タワー」を見てみたいなどということは「言い出せなかった」のだ。
 鰺ヶ沢町やつがる市からも見えているだろう。あれは何だろうと怪訝な面持ちで眺めているのではないだろうか。)

◇◇「風力発電施設」建設のための風速、風向、風力長期観測用タワー ◇◇

 実は11月27日に、この「風力発電用長期観測タワー」は建てられた。建てられている現場に、阿部会長、S幹事、それに私の3人で出かけたのである。
 場所は、岩木山環状線(県道30号線)を長平方向に向かって「長前川(沢)」を渡ってから200mほど進んで、「左折」して入るところだ。
 左折してから、林道ともつかない道、さりとて農道とも言えないような荒れた車道を4、500m直進(登る)するとこの「現場」に出る。

 そこはほぼ、100m四方に渡って「伐採」され、重機で表土が剥ぎ起こされ、山麓側が大きな窪地になっているが、その上方はほぼ平らに均されているのである。
 まるで、以前は「農地であったのではないか」という思いを持たせるような場所であった。だが、「原野化」していることは言うまでもないことだった。
 その時、「風力発電」を計画している会社の部長も同行した。「タワー」を建てる場所が「どこなのか」を知らない私たちを、この場所へ案内するために「先導」役を務めたのだ。私たちがこの「部長」の車に同乗したわけではない。
 
 そして、その時、しかも、20人ほどの作業員が「タワー」を建てる作業中の現場で、このタワーの役割を私たちに説明していた「部長」から、次のことを聞かされたのである。 それは、驚くようなこと、私たちにとっては初めて知らされる事実であった。

 先ず、この場所は林野庁のものではないということだった。私たちはこれまで、「スキー場」開発に伴う「森林伐採」なども、「林野庁」に対して「伐採許可」を与えないで欲しいと要求してきた。少なくとも、この環状線よりも岩木山側の上部は「林野庁」が管轄する地域だろう、または、そうであって欲しいと考えていたからである。
 だが、その考えは、部長の言う「民有地」であるという一言で、打ち砕かれてしまったのだ。だが、同時に、「そうだったのか。だからこの場所が選ばれたのか」という妙な納得も生まれていた。
 本会は「環状線よりも上部は手つかずのままで自然を残したい」と考えている。だが、現実的には「環状線」よりも上部には「リンゴ園」がある。農地もある。民有の植林地もある。その他に、スキー場を初めとし、「やよい憩いの広場」などのさまざまな施設がある。その中には、「幽霊屋敷」のように放置された「ホテル」や「旅館」まであるのだ。
 「岩木山の自然を保護」するという姿勢のなかった戦後の行政がなした「知的貧困」の結果であろう。だが、今からでも遅くはない。岩木山の自然を保護するために、「地勢的な線引き」をはっきりさせるべきだろう。

 詳しく書こう。この場所は、ここよりも下部の「環状線」よりも麓よりの場所で「農場を経営するS氏の所有地」なのだそうだ。以前にこの場所も「農地」にしようと「開墾」を手がけたのだが、それも出来ないまま放置された「場所」なのであった。これで、均されている理由がよく分かった。
 放置されて「原野」状態、土地は平らに均されている、しかも、周囲の樹木は皆伐の状態である。これらは、すべて「風力発電用長期観測タワー」の立地条件を「満たして」いたのである。
 「立地」するための交渉も「林野庁」相手よりも「民間人」となれば、与(くみ)しやすいであろう。極端にいうと「すべて金で解決」出来るからである。
 この会社は、本会にこの「計画」を話す前に、土地の所有者との間で借地契約を結び、借地料などの折り合いも既に、決めているのであった。
 周囲数kmには集落もないという「空間的」な「密室」で、3年間に渡る「観測」が開始されるのである。恐らく、このタワーは環状道路からはよく見えるはずだ。だが、「あれは何だろう」と思っても、この「場所」まで直接やって来る人はいないだろう。その意味では「ひっそり」と「風向、風力、積算風力など」の観測調査が、3年間出来るというものだ。
 因みに、このタワーは69mの高さがあるという。それに「風」に対するさまざまな計測機器が取り付けられているのだ。
 「高さ的」には「巨大」で「長大」なものである。弘前市には69m超の建造物は、NHKと青森放送のアンテナタワーだけしかないだろう。あのようなものだと思えばいいのだ。
 だが、タワー本体円柱の直径は20cm程度であり、細い。その分支線(ステー)が5段で4方向に張られているので、建造物を支え覆う建坪面積は非常に広くなるのである。
 立地条件を満たし、しかも、これだけの広さの土地は「環状線」より下部には簡単には見つかるまい。さすが、「蛇の道は蛇」である。うまく探すものである。
 この法人と個人との「契約」に、法律的には「本会」が割って入ることは出来ない。本会としては、あくまでも「環状線」より上部には人工物は持ち込まないということを要望するしかない。今回の、この「タワー建設」は3年間という時限的な約束であり、観測調査が終わると撤去するということなので、半ば、不承不承の対応であったことに変わりはない。   
 本会が反対したところで、この「建設」は中止にはならないのだ。あくまでも、これは土地所有者と会社の契約で事が済むからである。

 空しい話しである。だが、これが完成したからといって、「風力発電施設」が建設されるということではないのである。

 字数の関係で、「東北自然保護の集い」に参加して思ったこと…(4)は休載とする。

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