岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

幸運にも熊に逢える人のために (1)

2007-05-23 05:51:24 | Weblog
幸運にも熊に逢える人のために(1)
 20日はNHK弘前文化センターの講座「津軽富士・岩木山」で、野外観察として岩木山麓にある寄生火山・森山に「春の雑木林とその樹下に咲く花々の散策」に出かけた。
 その時、山菜の「ユキザサ、ウルイ(ギボウシの若芽)、ウド、タランボの芽、ソデコ(シオデ)、フキノトウ、ワラビ、ゼンマイ、タケノコ、ボンナ」などに出会った。時期的にすでに終わっているものもあるだろうが、今年の山は全体として少雪だったが、4月から5月の「低温」のため、残雪が多く、その消え方次第で、今のこの時季に、早い・遅いを取り混ぜて「多くの山菜」が一斉に「熟れ時」となったようである。
 その中で、まだ早いはずの「タケノコ」の繁茂には驚いた。山頂付近の「竹藪」は例年の6月、「タケノコ」シーズンを思わせるような成長ぶりで、参加者の大半が一食分ぐらいは採ったようである。

 「タケノコ」採りシーズンで思いつくことは「クマ」との遭遇である。クマも人も夢中になってタケノコを追い求めて「鉢合わせ」をしたという話しは毎年のように聞く。「鉢合わせ」だけならいいのだが、不幸にも「どちらかが負傷する」という事態になれば、「聞き置く」だけのことにはならない。
 人が傷つくと、その「クマ」は即、「害獣」とされ「駆除(殺されること)」の対象とされてしまうからだ。                   
 そこで、今や希少種と言われている「クマ」をこれ以上、有害獣にしないためのあれこれ、つまり「自然の諸相の一側面としての熊」に気を配った対応の仕方について述べてみることにする。
 私は熊の研究者でもない。特別に熊が好きで、ペットとして愛玩したいと考えている者ではもちろんない。私は熊に関しては、ずぶの素人であり門外漢である。このことを断わったうえで、熊と出会った時にどう対処すべきかについて述べることにする。

 熊は本来、小心でおとなしい動物である。熊のほうから気を使い、人間を避けてくれる。私は四十数年山歩きをしているが、この点では熊を深く信頼している。
 熊は視覚はあまりよくないが、聴覚と嗅覚は人間より数倍優れており、大体の場合、熊のほうが先に人を発見して、姿を消してくれる。
 だから、滅多に人が熊に出会わないことも当然だと思う。出会うのは、熊が食餌に夢中であり、人も熊の餌である竹の子採りなどに我を忘れている時に多いのだそうだ。
 私は、これまでに「残雪期の岩木山」で三回熊を見ている。対面したり鉢合わせをしたことはない。背を向けて逃げていくものと距離をとりながら同じ方向にゆっくりと一緒に歩いたということである。

 一回目は頂上付近である。頂上から赤倉尾根に降りようと下を見たところ、直下の鞍部に黒いものが二点見える。それは鞍部を横切り、斜めに大鳴沢に下って行った。親子連れの熊である。瞬く間にその二つの影は視界から消えた。周囲を見回したところ足跡があり南面から頂上を経て今、見た方向に続いている。
 私は鳳鳴小屋の方から登って来たのである。風は弱かったが、登って来た方向から吹いていた。熊は私の匂いを嗅ぎ付け、いち早く立ち去ったのだ。子連れの熊は怖い。赤倉尾根に降りるのは止めにして、百沢にすたこらと下山した。

 二回目は、大沢を横切って、後長根沢の源頭の方向に走って行ったものを見たのである。これは一頭だけであった。この時も、風は登って来た方向から吹いていたし、私は鈴もぶら下げていなかったし、ラジオをも鳴らしてはいなかった。
 しかし、熊は風に運ばれた私の気配を感知して、早々と移動して行ったのである。

 三回目は「桜まつり」の時で、春スキーシーズンの真っ最中だった。頂上付近はスキーヤーでにぎやかなはずである。その騒然さと煩わしさから逃れるためもあり、「人」には会えないはずの後長根沢を選んだ。
 予想どおり人にはまったく会わなかった静かな山歩きだったし、その所為(せい)なのか「すばらしいもの」に出会えて、ひとときの幸福感を満喫した。
 もちろん、源頭部の真ん中の沢を登り詰め、アルパイン的な登攀気分を満喫したいとの思いもあった。日差しは強く、晴れ渡ってはいるが東から沢源頭に吹き込む「やませ」は冷たかった。
 沢左岸沿いに走る古い林道入口付近にはカタクリ、キクザキイチリンソウ、エンレソウが、咲き乱れている。その傍らで、なにやらヴァイオレットの香りが漂っている。得も言われぬ芳香だ。やっと見つけることが出来た。背が低くて気をつけないと踏みつけてしまいそうな小さな花、アオイスミレの小群落が足元にあった。
 その芳香に送られて沢の奥へと入って行ったは10時近かったのである。
(この稿、明日に続く。)

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