岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

山頂を目指すだけが「登山」ではない(4)

2009-02-13 05:22:35 | Weblog
(今日の写真は何だろう。題を付けるとすれば「雪面に散らばるダイアモンド」とでもなるだろうか。写真の上部に偏在しているように見えるが、実際は一面に見られるのである。
 写真が小さくて、散らばっているダイアモンドは見えないかも知れない。だから説明が必要だろう。)

 岳登山道尾根は標高600mから800mにかけて、ブナの巨木に覆われている。百沢登山道を除いた他の登山道を持つ尾根沿いにブナは生えているが、ここのブナが一番「巨木」然としていて樹高もあり、見事である。
 長平登山道尾根にも立派なブナがあったが、その多くは「鰺ヶ沢スキー場」のゲレンデを造ったために伐られてしまった。ただ、この尾根のブナはスキー場ゲレンデの上部、標高を1000m越えた辺りでも十分な高木で、そのしっとりと落ち着いた風情の中に「豪放」さを見せてくれるので、救われる気持ちになる。
 弥生登山道尾根のブナ、赤倉登山道尾根のブナはそれぞれ、高度による明確な「ブナ帯」を形成している。登山道口の里山「ミズナラやアカマツを中心とした二次林的な雑木林」に始まり、「ブナ帯」を抜けて「低木高原」や針葉樹「コメツガ」帯に至るという区画がはっきりしている。ただし、ここの「ブナ帯」では見上げるほどの高木は多くはない。かなり、昔に大幅に伐採されたのかも知れない。
 岩木山でもっともポピュラーな登山道である百沢登山道沿いには「ブナ帯」はない。今では「ポピュラー」と言われる登山道は「スカイライン自動車道路・リフト」であろうが、それを利用しない「登山者」からすれば、やはり、百沢登山道は「ポピュラー」なのである。だから、ブナ林の中を登るという風情を味わうことが出来ない。ブナ林縁に咲くシラネアオイに出会うことも、この登山道では先ずないのである。
 「ブナ帯」がない理由は自然的なことではない。植生的なことではない。これは人手による「人工的なブナの皆伐」であった。詳しいことは、すでにこのブログで書いているので省略する。

  登るに従い、ブナの高木は影を潜める。代わって中低木が現れる。そうなると陽光を遮蔽する度合いも少なくなる。影は長いが、影全体が少なくなってくるのだ。
 陰影の少ない、なだらかな雪面、そこには「厳寒の朝に、空中を漂う霧の微少な一つ一つがダイアモンドのように輝いて飛翔する」という「ダイアモンドダスト」の欠片が落ちているのかも知れない。まるで、その一つ一つが、陽光に反射して「キラキラ」と輝くのだ。
 しかも、今登っている斜面は、かつての「ゲレンデ」である。だから広くて、斜面には凹凸も少なく「なだらか」だから、ますます、この「燦めき」は拡散していく。だが、この輝きは見る角度と太陽の高度によって瞬く間に消えてしまうのだ。
 この尾根はかつてスキー場だった。全国でたった一つの「ゴンドラ」も「リフト」もないスキー場、「スキー客を雪上車で滑降起点まで運びます」が売り文句のスキー場であったが、わずかに15年間営業をしただけで「廃業・撤退」してしまった。残されたのは「ブナなどが伐採された広い裸地」だけである。夏場の登山道は、この古い「ゲレンデ」跡地の右岸を通っている。
 今日の写真はゲレンデ跡地の裸地、その雪面で一瞬ではあるが、ばらまかれたダイアモンドのように燦めきを放つ「微細な雪のひとひら、結晶」たちである。)

          山頂を目指すだけが「登山」ではない(4)

 昨日は「テント設営場所」について書いたので、今日は「積雪期のテントの張り方」について、相棒のTさんとしたことを書くことにしよう。
 設営場所が決まったからといって、即その場所にテントを張れるものではない。家屋の「新築工事」と同じように、先ずは「整地」をする。テントの底部面積よりも縦横約50cmほど広めに「土間固め」をしなければいけない。私と相棒は肩を組んで、「一、二」と声を掛け合いながら「雪を踏み固める」。膝以上に雪は深い。新雪の積雪中層の雪は、湿りがなくサラサラしているので、まるで「砂場」を踏んでいるようで、固まらない。それでも、「もういい加減いいだろう」と思えるまで踏み固める。しかし、凹凸はなくならない。その上、「山」に斜面はつきものだ。テントの中で体が転げないようにその「斜面」を削いで水平にしなければいけない。スコップの出番だ。雪洞にしろ、幕営にしろ冬山では「スコップ」は必携だ。
 設営場所にも因るが、「整地」が終わったからといって、直ぐにテントを「張って」はいけない。より高い場所で、「雪温」よりも外気温が低い場合は、その限りではない。直ぐに張ってもいい。だが、「寝床」の背当て部分の「異物感や突起感」に悩まされて「安眠」出来ないことは保証しよう。
 その日は外気温が高かった。弘前では7~8℃まで上がったそうだ。だから、幕営地でも2~3℃だったろう。「サラサラ」した新雪の積雪中層の雪は雪温が0℃だから、外気温に触れて溶け出す。そして、砂のような「結晶」と「結晶」の間の空気層を埋めていく。その結果、「雪」に粘りが出てきて「固まる」のである。外気温が高い時ほど、固まる時間は短くなる。
 スコップで水平に均された「寝床敷地」は、ものの10分も立たないうちに、しっかりと「砂漠」から「芝地」へと変身した。
 そこで、袋から「テント本体」、「フライシート」「支柱用ポール」を出して、相棒に設営の手順を説明する訳である。出した「袋」は紛失しないように特定個人が責任を持って管理しなければいけない。
 その時、相棒Tさんが言った。『「ペグ:張り綱やテント本体と地面と固定する金属製やプラスチック製の差し込むための器具」がないんですが』と。そのとおりである。忘れたわけではない。最初から持ってきていないのだ。相棒は夏場にテントを使った経験があり、その経験則から「ペグ」を捉えているようだ。(明日に続く) 

最新の画像もっと見る