岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

起伏に富んだ山並みゆえの不幸か / NHK文化センター講座、1年が終わった(6)

2009-12-25 05:11:21 | Weblog
(今日の写真は、岩木山の北西面である。この写真は北西側から南東を見ていることになる。左には起伏に富んだ山並みが続いている。実は右もそうなのだが、このポイントからは見えないのだ。
 もし、見えたなら「西法寺森」や「追子森」、それに「白沢源頭の爆裂外輪」などが「そこにある」のである。起伏に富むということはそれなりに深い沢も存在するということである。)

◇◇ 起伏に富んだ山並みゆえの不幸か ◇◇ 

 見えている左の山並みについて書いてみよう。写真やや中央にどっしりと聳えているのが「中央火口丘」である山頂だ。標高1200mより上は高木の限界となるから、低木の樹林帯となる。だから、降雪が続き、積雪が多くなると「真っ白」になってしまう。その「白い」部分が「山の高さ」を教えてくれる。この写真を撮った場所は「ブナ」など高木が生えているのだから、せいぜい標高は5、600mというところだ。
 左に見える白い山並みの中心にあるのが「烏帽子岳」である。その後ろに連なっているのが「赤倉沢源頭キレット」に続く山稜だ。「烏帽子岳」のずっと下部に、冬季アジア大会で「モーグルスキー」の競技が開かれ、その後、寂れに寂れて、うち捨てられているかのような「拡張ゲレンデ」がある。
 多くの強い反対を圧して、木村守男元知事と手を組んで「拡張」した「コクド(西武)」は、その後間もなく「自然の復元」などに手をつけることもなく、まったく「無責任」に撤退した。このゲレンデはまさに、その象徴であるがごとくに「うち捨てられて」いる風情が漂っている。
 今年の3月に「相棒」とこのゲレンデから、「烏帽子岳」を通り、「赤倉沢源頭キレット」の手前の1396mピークまで行ったが、登りの時は「皆無」、下りには僅かに2、3名のスキーヤーに会っただけだった。 
 地元の人の視認によると、休日でも、このゲレンデを滑っている人は、終日「パラパラ」でしかなく、スキーヤーの影が、まったく見えない日もある、という。

 とにかく山あり、長くてアップダウンの続く山稜あり、深い谷ありで、「流れるような」尾根姿を見せる東面とは段違いである自然地形ゆえに、10本近い尾根に「スキーゲレンデ」が造られてしまったのだ。大きくて深い谷は「大鳴沢」だ。
写真には見えないが、それが「鰺ヶ沢スキー場」である。
 この写真は古いものだ。12年ほど前のものである。2月に「クマゲラ」の調査に入り、西岩木山林道の上部の尾根を横切り、沢を渡り二子沼周辺まで行った時のものである。
 当然、「鰺ヶ沢スキー場」のゲレンデも横切らなければいけなかった。スキーヤーで「ゲレンデ」を横切るものは先ずいないだろう。「スキー」はあくまでも「ゲレンデ」を上方から下方に向かって「縦」に移動するものだ。
 ゴンドラ乗り場から近い「ゲレンデ」では、スキーヤーに出会ったが、そこから次第に離れて二子沼方向(西方向)に近づくにつれて、出会うスキーヤーの数はめっきり少なくなる。まさに、「横歩き王道」である。スキーヤーからはもちろん「怪訝そう」な顔をされた。
 スキー人口に比べて「ゲレンデの本数」が多すぎるのだ。その時既に、本会は「鰺ヶ沢スキー場」の行く末を「スキー場としては経営は成り立たなくなる」と予見していたものだ。だから、「拡張スキー場」反対の理由には、このことを加えていたのである。
 岩木山の北面、その起伏に富んだ自然地形が「多くの尾根にバリカン跡を残す」という不幸を招いたのであろう。だが、これは「岩木山の所為」では絶対にないのである。

◇◇ NHK弘前文化センター講座「岩木山の花をたずねて」が17日で1年が終わった(6) ◇◇
(承前)

 受講者の中には「短歌」をたしなむ人がいる。実は同じ文化センターの「短歌」の講座を受講していたのだそうだが、同じ受講者から「『花』に興味があるのなら『岩木山の花をたずねて』という講座ある。講師の先生が書いた本(拙著:岩木山・花の山旅)の中には花に関する俳句や短歌が多く出てくるから、そっちを受講したら」と勧められて、やってきた人だ。
 私にそのことを伝えた時、付け加えて「手紙に短歌の一首ぐらいは書き添えたいので」とも言ったのである。
 他の受講者は、そのことをしっかりと聞いていた。しかし、「短歌」に興味があるような雰囲気はなかった。
 だが、その後、その人が自作の短歌を「披露」する度に興味を示し始めて、次第に「共通題」である「同じ花」を見た時の、「自分の感動や感想」を発表するようになった。最近では「評価」の域に入っているのだ。
 これは、「五七五七七」という定型こそ保っていないが、「自由律の短歌」を作っていることでもあろう。私の講座は、その時、「短歌教室や俳句教室」へと変貌する。

 私は、この短歌を愛する人に先を越されないように、みんなが特別興味を示した「ホタルカズラ」を主題に、次の二首を作って、講座の合間に披露した。

・緑葉の幹撃つ陽光その下にほたるかずらの青き群れ花 (三浦 奨)
 「時は5月の下旬だ。若葉から夏緑の世界に変わろうとしている時季である。日ごとに陽光はその眩しさに暑さを加えていく。しかも、射し込む斜度は直角に近づいていく。まさに、夏緑の色濃い葉をつけた幹を鋭く突き刺すように照らすのだ。その反射光や輻射熱を浴びた根元のホタルカズラたち、彼女たちは一層身を引き締めてライトブルーに輝くのである。中にはホタルのような赤い模様をつけながらだ」という解釈でどうだろう。

・コバルトに交じりて光る紅一点ほたるかずらの若花けなげ (三浦 奨)
 「早く咲き出したものから順次、コバルトブルーの花弁を纏っていく彼女たち、その中に未だ、花の基部に紅一点をつけているものもある。これは、若い花の印でもある。だが、よく見ると、早くみんなと同じ花になろうとして、精一杯に命のすべてをかけて、燃えているようだ。何という健気さではないか。」というふうに読み取って貰えばいいだろう。(明日に続く)

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