(今日の写真は、オミナエシ科オミナエシ属の多年草、「マルバキンレイカ(丸葉金鈴花)」だ。北海道と本州の新潟県以北に分布し、山地の湿りけのある斜面や樹林下、特に岩場の斜面などにに生える。
茎はやや太く高さ30~70cmで、葉は対生し、広卵形~卵状楕円形で、長さが7~15cmほどの羽状で浅い切れこみがあり、先は尖っている。
花は枝先の集散花序に、黄色で、小さく径が5mm程度だろうか、多数つける。花筒の基部には、半円形の小さな距(花弁の一部が袋状に突き出た部分)のあることが特徴だ。 花冠は短い円筒形で、5裂し、雄しべは4本、花冠から突き出ている。雌しべは1本である。花期は7月から8月にかけてであるが、今年は例年になく早く咲き出して、7月18日にはつぼみが中心だったが、中にはすでに、開いていたものもあった。
濃い緑の葉をバックにしているので、小さい花だがよく目立つのだが、つぼみの頃や花が咲き始めたばかりの頃は、それほど目立たず、初めての出会いの人は、よく見落とすのである。見落とさない「極意」、それは、「葉」の特徴をよく理解することだろう。「丸葉」と言われるが、そんなに丸い葉ではない。鋭い切れ込みが入っているので、「丸くない葉」の「キンレイカ」と覚えておけばいいだろう。
果実には、花の小ささからは想像出来ないような大きな翼がある。その翼で風を受け、風に乗って飛翔して、散らばるのだ。だが、その割には「あそこにも、ここにも」というように生えているわけではない。
初めて、「マルバキンレイカ」に出会った時、「あれ、こんな所にオミナエシが生えている」と思ったものだ。「オミナエシ」は岩木山の山麓の草原、採草地からすっかり姿を消してしまった。そのようなむなしい思いが、そのように「見え」させたのだろう。
ところが、その後、この「マルバキンレイカ」には、他の登山道沿いで出会うことはなかった。「マルバキンレイカ」には、「ある登山道沿い」でなければ出会えないことに気づいたのだ。それ以来、その愛しさは一入のものになった。
「マルバキンレイカ」は、その数の少なさと自生している場所が極めて限定されていることから、私は心密かに「岩木山の絶滅危惧種」と呼んでいる。
漢字で書くと「丸葉金鈴花」、黄金の鈴のような花、何とも優雅な名前である。名前の由来は、大体、丸い葉を持っていて、花冠が釣鐘形で黄金色であることによる。)
◇◇ 毎日新聞2010年8月15日付電子版 「余録:『65年後』の昔と今」に思う(4) ◇◇
(承前)…この「客観性無視」から始まったことに、戦後65年の「反省のない世論に迎合」という「社会全体の変革へと進めない」悲劇があるのである。
私は少なくとも、高校時代からは「終戦」を「敗戦」と置き換えて読み、何故に「敗戦」となり、その経過や内容をしっかりと学習してきたつもりである。その根底にあるものは、「戦争否定」である。何故か、単純なことだ。戦争とは「人殺し」であるからだ。
私はそれ以来、一途に「反戦」という姿勢で生きてきた。だが、1941年生まれの私には「戦争」という現実的かつ体験的な記憶は非常に少ないのである。
1941年12月8日に太平洋戦争が始まった。これも、「始まった」と書くと時間の推移に従った表現になってしまう。正しくは、「大日本帝国」が「始めた」のである。宣戦を布告し、「アメリカ」に仕掛けた戦争である。
私は戦中派でもなければ、戦後派でもない。実に宙ぶらりんな世代なのである。1945年以前の10数年間の生活体験もなければ、多くの日本人が体験した1941年から1945年までの辛苦に満ちた生きるための「体験的な記憶」がないのである。もちろん、「戦争」体験もない。私は自分よりも一世代早く生まれた者たちに、ずっと、その意味で「僻め」のような感情を抱いて生きてきたように思うのだ。
かといって、戦後の食糧難やすべてに渡る生活物資の不足から生じる困窮を徹底して味わったという記憶も薄くしか残っていない。これもまた、困窮に耐えて、「日本」の復興に寄与したかと考える時、そこには「それをしなかった」のではという悔いしか見出されないのである。
だからだろう。私は、少なくと高校生からは「1945年以前の65年間に見られた日本国民のあり方」や「1945年以来の日本国民の思考形態や生活パターン」に反省を加えた見方や考え方をしてきた。
中国・大連での生活は、1歳から4歳までの、わずか4年間である。その4年間で、おぼろげながら残っている記憶は、次の5つに過ぎない。
1.ロシア兵による拉致、数時間後に裏門に置き去りにされたこと
2.ロシア軍が管轄しているビルから、日本女性が瓦屋根伝いに逃げて来る。その間に鉄砲の音が聞こえていたこと。
3.正面玄関から出ると大きな通りがあり、そこには路面電車が走っていたこと。
4.大きな通りで、八路軍の食糧運搬馬車を多くの中国人や日本人の子供たちが襲っていたこと。
5.裏口には石畳の道が続き、アカシアの並木が続いていたこと。
(明日に続く)
茎はやや太く高さ30~70cmで、葉は対生し、広卵形~卵状楕円形で、長さが7~15cmほどの羽状で浅い切れこみがあり、先は尖っている。
花は枝先の集散花序に、黄色で、小さく径が5mm程度だろうか、多数つける。花筒の基部には、半円形の小さな距(花弁の一部が袋状に突き出た部分)のあることが特徴だ。 花冠は短い円筒形で、5裂し、雄しべは4本、花冠から突き出ている。雌しべは1本である。花期は7月から8月にかけてであるが、今年は例年になく早く咲き出して、7月18日にはつぼみが中心だったが、中にはすでに、開いていたものもあった。
濃い緑の葉をバックにしているので、小さい花だがよく目立つのだが、つぼみの頃や花が咲き始めたばかりの頃は、それほど目立たず、初めての出会いの人は、よく見落とすのである。見落とさない「極意」、それは、「葉」の特徴をよく理解することだろう。「丸葉」と言われるが、そんなに丸い葉ではない。鋭い切れ込みが入っているので、「丸くない葉」の「キンレイカ」と覚えておけばいいだろう。
果実には、花の小ささからは想像出来ないような大きな翼がある。その翼で風を受け、風に乗って飛翔して、散らばるのだ。だが、その割には「あそこにも、ここにも」というように生えているわけではない。
初めて、「マルバキンレイカ」に出会った時、「あれ、こんな所にオミナエシが生えている」と思ったものだ。「オミナエシ」は岩木山の山麓の草原、採草地からすっかり姿を消してしまった。そのようなむなしい思いが、そのように「見え」させたのだろう。
ところが、その後、この「マルバキンレイカ」には、他の登山道沿いで出会うことはなかった。「マルバキンレイカ」には、「ある登山道沿い」でなければ出会えないことに気づいたのだ。それ以来、その愛しさは一入のものになった。
「マルバキンレイカ」は、その数の少なさと自生している場所が極めて限定されていることから、私は心密かに「岩木山の絶滅危惧種」と呼んでいる。
漢字で書くと「丸葉金鈴花」、黄金の鈴のような花、何とも優雅な名前である。名前の由来は、大体、丸い葉を持っていて、花冠が釣鐘形で黄金色であることによる。)
◇◇ 毎日新聞2010年8月15日付電子版 「余録:『65年後』の昔と今」に思う(4) ◇◇
(承前)…この「客観性無視」から始まったことに、戦後65年の「反省のない世論に迎合」という「社会全体の変革へと進めない」悲劇があるのである。
私は少なくとも、高校時代からは「終戦」を「敗戦」と置き換えて読み、何故に「敗戦」となり、その経過や内容をしっかりと学習してきたつもりである。その根底にあるものは、「戦争否定」である。何故か、単純なことだ。戦争とは「人殺し」であるからだ。
私はそれ以来、一途に「反戦」という姿勢で生きてきた。だが、1941年生まれの私には「戦争」という現実的かつ体験的な記憶は非常に少ないのである。
1941年12月8日に太平洋戦争が始まった。これも、「始まった」と書くと時間の推移に従った表現になってしまう。正しくは、「大日本帝国」が「始めた」のである。宣戦を布告し、「アメリカ」に仕掛けた戦争である。
私は戦中派でもなければ、戦後派でもない。実に宙ぶらりんな世代なのである。1945年以前の10数年間の生活体験もなければ、多くの日本人が体験した1941年から1945年までの辛苦に満ちた生きるための「体験的な記憶」がないのである。もちろん、「戦争」体験もない。私は自分よりも一世代早く生まれた者たちに、ずっと、その意味で「僻め」のような感情を抱いて生きてきたように思うのだ。
かといって、戦後の食糧難やすべてに渡る生活物資の不足から生じる困窮を徹底して味わったという記憶も薄くしか残っていない。これもまた、困窮に耐えて、「日本」の復興に寄与したかと考える時、そこには「それをしなかった」のではという悔いしか見出されないのである。
だからだろう。私は、少なくと高校生からは「1945年以前の65年間に見られた日本国民のあり方」や「1945年以来の日本国民の思考形態や生活パターン」に反省を加えた見方や考え方をしてきた。
中国・大連での生活は、1歳から4歳までの、わずか4年間である。その4年間で、おぼろげながら残っている記憶は、次の5つに過ぎない。
1.ロシア兵による拉致、数時間後に裏門に置き去りにされたこと
2.ロシア軍が管轄しているビルから、日本女性が瓦屋根伝いに逃げて来る。その間に鉄砲の音が聞こえていたこと。
3.正面玄関から出ると大きな通りがあり、そこには路面電車が走っていたこと。
4.大きな通りで、八路軍の食糧運搬馬車を多くの中国人や日本人の子供たちが襲っていたこと。
5.裏口には石畳の道が続き、アカシアの並木が続いていたこと。
(明日に続く)