岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「アカモノ」の果実に寄せる想い / カメラを持たない登山 (3)

2010-08-01 04:45:12 | Weblog
 (今日の写真は、ツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木「アカモノ(赤物)」である。裏岩手縦走時には、多くはないがまだ咲いていたり、既に結実したりしていたものが目についた。これは、岩木山で撮ったものである。
 「アカモノ」は北海道から本州の山地に生育する常緑の小低木で、主に日本海側の山地に分布する。岩場や道沿いの斜面など、日当たりのいい場所に小さな群落をなして生えている。低山から亜高山や高山、原野や草原、岩場や礫地などとあまり場所を選ばない順応性を見せる植物でもある。
 また、結構、生育している場所の標高は山頂付近などの急峻な地形の場所から、中腹部までと、その範囲は広い。このように、小型で、陽生の矮性低木の生存は広範で可能なのである。
 早いものでは5月から、雪田近くの遅いものは7月頃に、葉腋から2、3cmの花柄を出し、先端に白くて小さな1個の花を咲かせる。萼は赤色で、まるで「帽子をかぶっている」ように見えて、よく目立つのである。その「帽子」には腺毛が密生している。
 花冠は長さが7mmほどで、先端は5つに分かれている。花柄には小さな苞葉があり、赤褐色の長毛が多いのも特徴だ。
  秋に熟した果実も鮮やかな赤色でよく目立つ。萼が成長して果実を包み、中心部からわずかに覗いている。果実の味はほのかに甘く、食べることが出来るのである。
 「アカモノ」の葉は、長さが1.5~3cmである。新しい葉は、花が終わる初夏に出始め、互生する。革質で、新葉は表面に光沢があるが、古い葉は光沢があまりない。縁には小さな鋸歯があり、先端は長い毛になっている。
 名前の由来は「果実」の形状にあるようだ。最初は赤い果実を「赤桃」と呼んでいたようだが、それが「アカモノ」に転訛したようである。)

◇◇「アカモノ」の果実に寄せる想い ◇◇

 果実の色を見ただけでは、「アカモノ」と「シラタマノキ」が同科同属の矮性低木だとはどうしても思えない。
 日本に自生しているシラタマノキ属は、「アカモノ」、「シラタマノキ」、「ハリガネカズラ」の3種類である。ただし、「ハリガネカズラ(針金葛)」をツツジ科ハリガネカズラ属とする説もある。
 この3種類は、いわゆる色彩豊かな「ツツジ科」の中では目立つものではない。「アカモノ」も「シラタマノキ」も、その名に果実の色彩を負うている。「ハリガネカズラ」は「針金のような茎で他の樹木などを這いながら成長する様子が葛に似ている」ことが名前の由来だ。
 「アカモノ」の実は赤いのである。だが、後者2つの実は白いのである。「ハリガネカズラ」は、関東から中部地方と「早池峰山」に分布するので、私にとってはなかなか会えないものだが、「早池峰山」で1回だけ、その白くて球形の果実を見ているが「採って香り」を嗅いだことはない。だからどのような香りをするのかは知らない。花の色は白で、花冠は4裂している。亜高山の針葉樹林下によく見られる。
 「シラタマノキ」は、「アカモノ」よりも、一回り大きい白い花をつけ、そして、一回り大きい白い実をつけるのだ。花は「アカモノ」ほどは目立たない。
 岩木山では「シラタマノキ」の生息地は限られているので、「山歩きをする人にとっては定番の植物」とされている「シラタマノキ」にはなかなか出会えないのが現実である。採取して、潰して嗅ぐと「サロメチールの香り」がする白い実、それが「シラタマノキ」なのである。もちろん食べる気には誰もならないだろう。
 「アカモノ」と「シラタマノキ」は同属であるということは理解するが、果実を視覚的に捉えた時には、私はにわかに信じられない思いが渦巻くのだ。

 「アカモノ」の別名を「イワハゼ(岩櫨)」という。これも、「アカモノ」の果実が名前の由来にありそうである。つまり、ウルシ科ヌルデ属の落葉小高木「ハゼノキ(櫨の木)」の実に似ているということかららしいのだ。「岩場に生える櫨」という意味であろう。日本では昔から現在の「ヤマウルシ」や「ヤマハゼ」など、自生するウルシ科の樹木を、「ハゼ」と呼んでいたのである。そして、人々にとってそれらは生活に「欠くべからざるもの」であり、特別に「親しみ」を持った樹木であったのである。
 人々は「ハゼ」から「木蝋」をとって「ロウソク」にしたのである。「ハゼ」は秋になると扁平な球形の果実が熟し、淡褐色になる。中果皮は粗い繊維質で、その間に高融点の脂肪を含んだ顆粒が充満しているのだ。これが種子であり、飴色で強い光沢がある。この種子から「高融点の脂肪」を濾し採って「ロウソク」にしたのである。
 「俳句の世界」では、秋に美しく紅葉する「ハゼノキ」を「櫨紅葉(はぜもみじ)」と呼び、秋の季語としている。「櫨の実」も秋の季語だそうだ。
 この「ハゼ」の実は人々に恵みを与えるだけではない。冬になると、ツグミやキツツキなどの鳥が、高カロリーの餌として好んで食べるのだ。

◇◇ カメラを持たない登山 (3)◇◇

(承前)…「激しく厳しい登山をする」ことを自分に課していた。スピードと荷重への挑戦は続いた。そして、その次は、ある登山口から山頂を経由してある別の登山口に下山して、そこから同じ日に、登り返して登った登山口に降りるということをした。1日に2回山頂を通過するということだ。
 その次も、1日に2回山頂を通過するということなのだが、山頂経由である登山口に降りてから、別の登山口に徒歩で移動してもう一度登り、山頂経由で別の登山口に降りるということを繰り返した。これは、別な登山口への「移動」する分だけ「歩く」距離が長くなるのである。「激しく厳しい登山をする」ことに「距離」を加えたのである。
 次もアプローチするための距離の長さを「激しく厳しい登山をする」ことに加えたものだが、登山口までの「アプローチ」距離は絶対的に長くなった。それは、我が家の玄関から登山口までを徒歩で移動して、そこから登り降りをするということである。
 帆布製の横型、そのキスリング型のザックを背負って、百沢登山道まで、弥生登山道まで、時には松代登山道まで歩くのである。街中の徒歩時には「好奇」な目で見られることが嫌だったが、その格好で「歩く」ことが目的なので、恥ずかしがってはいられない。
そのような「行動」にカメラは不要だった。不要なものを持つこと自体が、登山者の条件を損なうことだったのである。(明日に続く)