岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

今、樹木の葉と花が可愛い(2)

2010-05-21 05:19:35 | Weblog
 (今日の写真は、カエデ科カエデ属の落葉高木「ハウチワカエデ(羽団扇楓)」の花である。出初めなので、まだ「雄花なのか雌花」なのかの区別は出来ない。だが、感じから言うと、垂れ下がった花柄の長さに注目すると雄花かも知れない。
 この樹木の学名には「japonicum」という一語が入っているので、その学名どおり、日本を代表する「カエデ」でり、本州に分布する日本固有種なのだ。
 これは、18日に岩木山後長根沢沿いに遡上した時に、延びていた下枝が垂れ下がって、丁度目の高さになってものに出会ったので撮ったものだ。
 高木であることが多い樹木なので、なかなか「目の高さ」で「水平にカメラを構えて」は写し辛い「花」でもある。まさに、「ラッキー」以外の何ものでもない。)

◇◇ 今、樹木の葉と花が可愛い(2)◇◇

 「ハウチワカエデ」は低山帯から亜高山の下部に生育する。分布の中心はブナ林域であるように思う。ブナ林などの夏緑広葉樹林の尾根筋など、明るい林に生育していることが多い。
 花も「モミジ類」の中では大きく、雄しべが長いので、よけい美しく見える。雄花と両性花とをつけるが、房の先端が雄花になることが多い。つまり、上部には翼果が出来る両性花が付き、先(下端)の方には雄しべの目立つ雄花がつくのだ。最初に「雄性花」が咲き、少し遅れて「雌性花(両性花)」が咲くようだ。
 
 この時季、花ももちろんいいのだが、瑞々(みずみず)しさの点では、出初めの「若葉」というか「幼葉」と言おうかに勝るものはないと思うのだ。出初めの葉は透明感が溢れている。真下から覗くと葉脈が透けて見える。その間から晴れている日には「太陽」までが見えるような感じになる。そして、すべてが明るい色彩だ。
 手を伸ばして触れることが出来るものには、「そっと触ってみる」。その柔らかさは、はっきり、いって「愛(いと)しい。優しく柔らかいのである。
 葉身は長さ4~9cm、幅は5~11cmである。葉柄は長さが2~4cmで葉の大きさに比べて短い。
 葉の縁には鋸歯があり、これは9から11ほどで浅かったり、中裂したりしている。今日の写真でも、その様子が分かるが、もっと完全に開ききるとよく分かるのだ。
 若葉では両面に白色の軟毛があるが、やがて脱落し、裏面の主脈上と脈腋にわずかに毛が残る。
 やがて秋、大きな葉を真紅や金色に染めて紅葉する。山地で見る「モミジ類」の王様である。
 名前の由来は、葉の形を「天狗が持っている団扇に例えたこと」による。「メイゲツカエデ」の別名もある

 これと花が「特に似ているもの」にカエデ科カエデ属の落葉高木「ヤマモミジ(山紅葉)」がある。これも、日本の固有種だ。「ヤマモミジ」の花は、散房花序に両性化と雄花が咲いて、花弁は淡紅色、ガク片は濃紅色である。花の色が特に鮮やかだ。
 日本海側の山地に生える落葉高木である。雪深い日本海側や雪が多い山に生える。もちろん岩木山にも生えている。
 太平洋側に生息している「イロハモミジ」の変種で、葉が大きく縁に粗重鋸歯(葉の切れ込みがぎざぎざ)がある。
 花は今が盛りだ。「イロハモミジ」の変種(亜種)なので「イロハモミジ」によく似ているが、葉はやや大きく、葉の基部は心形で分かれている。
 紅葉期の10~11月には美しく紅葉する。なお、「イロハモミジ」は川沿いや渓谷に生える。
 「イロハモミジ」と同じように紅葉が美しいので、庭木や公園樹、盆栽などに植えられる。「イロハモミジ」とよく似ているが、葉や翼果が「イロハモミジ」よやや大きい。7裂した葉のふぞろいの重鋸歯が特徴となっている。
 名前の由来は「園芸種でないところの、原種の山のモミジという意味」による。

 ところで、「モミジ」という名を持つ樹木は、全てカエデ科の植物で、植物分類上では、「モミジ」という植物はないのである。つまり、一般的には、「モミジ」と「カエデ」は、同じ植物ということである。「観楓会」という言葉があった。今でいう「紅葉狩り」のことだ。「黄葉」は「もみつ」と呼ばれていた。これは「モミジ」と転訛する前の語源である。

 次に掲げることが参考になるだろう。
 …楓(カエデ)という名前の由来は万葉集巻八の大伴田村大嬢の歌「わが屋戸に黄変(モミ)つかえるで見るごとに妹をかけつつ恋ひぬ日はなし」にある。
 「黄葉(もみつ)」する楓の葉の形が、カエルの手に似ていることから「かえるで」と歌に詠まれていたのだ。

 万葉時代はほとんど「黄葉」と記されていた。これは、秋の深まりとともに葉の色が変わっていくことを「黄変(もみ)つ」という動詞で表現したからである。何も「黄葉」だけでなく赤い葉、褐色の葉、すべてを「黄変つ」するとしていたのだ。
「モミジ」は、華麗な花をつけるわけではないのだが、秋山を美しく彩ることから、万葉集には多くの歌に詠み込まれている。(明日に続く)