岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「わかんじき(輪樏)」のこと / 拾ったワカン…この「わかんじき」は誰のものですか

2010-05-06 05:14:58 | Weblog
 (今日の写真はワカンである。正しくは「輪樏」と書いて「わかんじき」と読む。日本人は「言葉」を省略したり簡便形にしたりして読むことが好きなようだ。
 私は何でもかんでも「省略形」で表現することに違和感を持っている。それは「嫌悪感」に近いもので、どこかで「許されない」という思いすら抱いているのである。
 今に始まったことではない。高校生の頃、英語の先生とやり合ったことがある。それはその先生から「ゲンカン」と「カカン」という言葉が飛び出した時だ。
 私にはそれらが何のことか理解出来なかった。だから、訊いた。そうしたら「ゲンカン」は現在完了形のことであり、「カカン」は「過去完了形」のことであった。
 そこで、言った。「『省略形』や『縮めた言い方』は止めて下さい。ちゃんとした日本語で教えて下さい」と。そうしたら、その先生「いいんだ、こう覚えても間違いではないから」というのだ。
 私は納得がいかない。「少なくとも先生は語学を扱う英語の先生でしょう。英語を日本語に置き換えて、和訳をして私たちに読本を読み聞かせてくれているはずです。その先生が日本語にないような言葉を使うことは間違っていると思います」と、「生意気」なことを言ったのである。
 それ以来、その先生との関係は妙に「ぎくしゃくしたもの」になってしまったものだ。)

◇◇「わかんじき(輪樏)」のこと◇◇

 冒頭で「ワカン」とカタカナ書きをした。これは、日本語でないからである。何処の国の言葉か分からないからだ。外来語は慣用的に「カタカナ」を用いる。日本語でないものは「カタカナ」表記ということで「カタカナ」にしたのだ。
「ワカン」とは「わかんじき」のことである。「輪」と「樏・橇」という連語で構成されている。つまり、「輪樏」または「輪橇」と書くのである。外来語ではなくれっきとした和語であり、漢語だ。古い時代から在ったようで「太平記」には「兵を皆馬より下ろし樏を懸けさせ」という表記がある。
 「わかんじき」とは、本来、「雪の中への足の踏み込みを少なくしたり、滑ったりしないように靴・藁靴などの下に履くもので、木の枝や竹、それに蔓などを輪形に曲げて造ったもの」である。その「輪」の底部には木の爪をつけたものもある。「かんじき」は「橇」であるから、「滑らせる」という機能も持たせていたのだろう。
 ここまで、分かると、やはり「ワカン」はいただけない。漢字で「輪樏」と書くのが大変ならばせめて、平仮名で「わかんじき」と表記したいと思うのである。
 そんなことがとても、億劫な人はアメリカやヨーロッパ製の「スノーシュー」を購入して使えばいい。こちらは、その機能と外形からの命名であるから、実に単純な名称だ。
 ところが、「輪樏」の方は「外形」は「輪」の一語であるが、「樏」には機能と材質、履く、滑る、踏み抜く、踏み固める、雪を捌くという用途性まで含まれているのである。意味深長であり、複雑にすべてが凝縮されているのだ。
 私は、「スノーシュー」が国内に入って来た当時に手に入れた。それは現在も、私の手元にある。今季も2回使用した。だが、どうしても、「スノーシュー」が好きになれない。日本人の血がそうさせるのかも知れない。私は同じ「輪樏」を、すでに30数年間、使い続けている。
 「爪」は何回か「削って尖らし」た。だが、それ自体が摩耗して、「低く」なってしまった。硬い雪面にこの「爪」が食い込まなくなっているのだ。新しい爪に換えると、まだまだ使えるだろう。

◇◇ 拾ったワカン…この「わかんじき」は誰のものですか ◇◇

 今日の写真は、実は5月4日に岩木山で拾ったものである。材質は「アルミ」のようだ。平板で楕円形の「アルミパイプ」で構成されていて、底部には「鉄製かステンレス製」の爪がついている。楕円形の「アルミパイプ」の前方には「上部への傾斜」はない。これでは「樏」の役割は果たしようがないものと考えられる。
 靴底が載せられる部分もすごく広い。これだと、踝の動きが自在にならないなどとついつい考えてしまう。私の「わかんじき」とは格好は似ているが、ずいぶんと違うなあと思えた。

 これを拾った場所は、姥石の近くである。帰りに「その場所」を通るという保証がないので、私はこれをザックに括り付け、登り続けて、鳥海の山頂まで行った。これが、腐敗して土に還る有機質のものならば、持ち帰りはしなかったかも知れない。
 だが、「アルミ」と「化繊」のロープは腐食しない。そのまま「放置すると不燃ゴミ」を山中に「捨てる」ことと同じではないかと考えたからである。
 それに、「遺失」した人は、岩木山を愛している人だろうから、「岩木山」関係の「ホームページ」に掲載したら、きっと読んでくれるに違いない。そうしたら、返すことも可能だろうと考えたからでもある。
 
 この「わかんじき」は誰のものですか。心当たりのある方は私が現在預かっていますの連絡下さい。電話、メールいずれでも結構です。これには「黒のマジックインク」で名前が記されています。電話、メールの場合は、その「名前」を知らせて下さい。