岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

少し整備すると使える道路があるのに…「新道」敷設は税金の無駄?観察会参加者の発言から

2010-05-04 05:17:06 | Weblog
 (今日の写真は、県道30号線(環状線)から毒蛇沢に入るところからの600mほどを整備・修復し、そこから、右折(東側)して姥人沢右岸にいたる約560mを新たに敷設した工事用の道路だ。)

◇◇ 少し整備すると使える道路があるのに…「新道」敷設は税金の無駄使い?◇◇ 

 ミズナラ林と大凡20m以上に育って幹周りが1mはあろうかというスギ植林地のスギを伐採して造られてある。
 もちろん、沢に向かった山側の斜面は、重機によってほぼ直角に開鑿され、地ならしをして、その表面に「砕石」を敷いて敷設したものである。
 この道路を敷設したことは、次に掲げる点で「生物多様性」を無視した「自然破壊」そのものである。
 先ずは「樹木の伐採」だ。次いで斜面、つまり山の地肌を掘り起こし剥ぎ取り削ぎ落とすことで、その場所の「植生を殺し」、「昆虫や土壌生物、バクテリアなどを死滅」させた。土中に棲む「小型のほ乳類、蛙などの両生類の生息域を奪い」取った。
 つまり、この道路が造られる前にそこで生きていた多くの命を奪い取ったということである。
 さらに、自然破壊といわれる可視型的な事象として、地形の改変をした。加えて、この場所にこれまでなかった「異物」としての「砕石」を持ち込んだ。土壌を剥ぎ取ったあとの法面補強に「網状」のものを貼りつけた。表土の崩落を防ぐためだろう。これも岩木山にはない「異物」である。
 もしこの「網状」のものが、化石燃料を原材料とするものであるならば腐食することはないので、これも半永久的な「異物」となる。
 この「網状」は「鉄釘」で法面に留められている。その数は夥しい。いずれは「酸化」して土に帰るだろうが、これももともと岩木山にはない「異物」である。
 自然破壊とはその場に本来ないものや生えていないものを「持ち込む」ことでもあるのだ。
 おそらく、この「網状」のもので覆われた表土には、イネ科の「草の種」が蒔かれているだろう。そして、その草も岩木山には本来生育していない「草」であろう。これまでの事例では「外国種」であることが多い。「外国産」の草を岩木山に持ち込むのである。岩木山の本来の植生を無視し、改変させてしまうということである。
 まさに二重、三重、四重、五重、六重に「自然破壊」なのである。もう一度まとめてみよう。
「斜面を開鑿して地形を変える」、「そこに生育していた植物を死滅させる」、「バクテリアなどを含んだ土壌生物を死滅させる」、「小型のほ乳類を追い出す」、「樹木の伐採をする」、「道路によって生物多様性が分断される」、「道路の側溝などによって水の流れが変わることで周囲の植生に変化が生ずる」などなどといくらでも挙げることが出来るのだ。

 このような「自然破壊の権化のような工事用道路」が、全長は約1.16kmで続いているのだ。道路の幅員は路肩部分を入れると4mだ。「普通車」の走行が可能である。
 さらに、ご丁寧にも、途中には4ヶ所の「待避所」までが設けられている。「自然保護」ということが少しでもあったら「道路は出来るだけ狭く、短く」が原則となるだろう。この「道路」は21年度の予算で敷設されたものだから今冬も継続され、3月の段階で工事は完了している。
 だが、県土整備部河川砂防課と面談した時の話しの中ではただの一言も「自然破壊」という言葉は出てこなかった。この種の工事に関しては「行政」側には「自然保護」という概念などまったくないようである。

◇◇ 観察会参加者の発言から…(その1) ◇◇

 5月2日は「青森県自然観察指導員連絡会(ウォッチング青森)」と「岩木山を考える会」の共催、「岩木山石切沢早春の森と堰堤工事の観察会」を実施した。参加者は総計で20名を越えた。本会の会員およびその家族は15名を数えた。
 26日の事前調査の時は「積雪」があり、花の種類や咲いているものの数は限られていたが、その後の5日間で「自然」は見違えるような「春」になっていた。
 そのことを見越して、26日の事前調査だけでは恐らく「不足」であろうと考えて、「相棒」さんと前日にも「下見」をしたのである。

 観察会というものには「マニアル」は必要であるがそれは、極めて基本的で大まかな「アウトライン」的なものであっていいのだ。それよりも、実際は「臨機応変」な対応が大事なのだ。これが出来なければ「観察会」と銘打って「人集め的な催事」は出来ないし、するべきではない。「マニアル」があり、それに従うことから一歩も出ることの出来ない「観察会」ほど参加者にとってつまらないものはないだろう。
 ところで、春という季節は1日として待ってはくれないものであることを実感した。花も「咲き出す」と実に早い。このような点でも「臨機応変」は重要なのである。すでに花は終わっていた。そのような場合どうするか。主催者の力量が問われるところだ。

 私たちは百沢スキー場駐車場の右岸から入って、石切沢5号砂防堰堤を確認し、石切沢を渡り、クルミ長根沢を渡り、姥人沢の「4号砂防堰堤」建設予定地下部を渡って「今日の写真の工事用道路」に出たのだ。
 そして、この「工事用道路」を通り、既存の「小森山山麓」を回って県道30号線に出る道路を辿って「百沢スキー場駐車場」に帰ってきたのである。小さな沢を含めると5つの沢を渡り、一巡して帰ってきたことになる。
 百沢スキー場駐車場の右岸から、姥人沢の「4号砂防堰堤」建設予定地までは幅が5m以上も伐採されている「林道」らしきものが続いている。かなり旧いものである。途中、沢を跨ぐが「整備」すると使用が可能であろうと思われる。
 また、「工事用道路」は小森山から姥人沢へ抜ける一部コンクリート舗装道路を横切って敷設されていて、少なくとも、小森山方向からは、この既存の道を辿っての進入は「普通車」では可能である。(明日に続く)