岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

第40回「岩木山自然観察会」観察場所の下見

2007-05-11 06:07:45 | Weblog
 自然観察会の受付は終わった。これまでの観察会では一番参加者が少なくなった。「すばらしいエリアなのに…」と思うと何だか残念だ。

 9日に第40回「岩木山自然観察会」観察場所の下見をしてきた。
 国民宿舎の前を通り、「宮様道路」と通称されている道を東に進む。後長根沢にかかる橋を少し行ったところで、自動車はストップだ。まだ、林道沿いに小低木が繁茂していない時季だから、そのまま自動車でかなり奥まで入ることは可能である。
 そこから、沢の左岸に沿って「緩やかな」登り道を進むことになる。だが、入り口では「沢」を確認することは出来ない。そこは沢本流から東に300m以上は離れている。しかもなだらかに「平原」状に広がっているのである。
 これがこの後長根沢の特徴なのだ。急峻な谷頭(断崖絶壁)にはじまる開析谷…これら「おおまぶ」や「倉窓」は晴れていると林道の途切れた林縁から、所々で眺めることが出来る。9日もよく見えていた。
 それに続く広い河原、低くて広い尾根が開いた扇のように区画されている。
 
 岩木山の上部東面は、広大な雪の吹き溜まり地帯で遅くまで積雪がある。吹き溜まりによる積雪と雪崩で集められた多雪が雪解け水となって、この沢に流れ込むのである。昔から多くの農家はこれを恵みの水として利用してきた。
 林道と書いたが、それは林道であり、一方で堰堤敷設(えんていふせつ)に使用された工事道路でもある。だから、林道の終着地点まで数本の工事道路が斜めに沢に入り込んでいて、その下には大きな「堰堤」が寝そべっている。
 この沢の堰堤は、土石流をくい止めるということよりも農業灌水を保持するためという面が濃厚である。だから高さがあり、水抜き抗がある。土石の堆積はほぼないし、灌水用としての役割を十分果たしているように見える。実用的な必要に迫られたものとしての堰堤とはこのようなものをいうのだろう。
 ところが、…赤倉沢のものは、「造営することが目的だけ」のものに見えてしようがない。つまり、業者に「仕事」を与えるための工事ということである。
 何しろ、上部に堰堤を造る時に、そこから出た土石を下部の堰堤前部に投棄して、人工的に堆積物を「造って」しまうのだ。
 これだと、いくら堰堤を敷設しても、堰堤としての役割を果たさないから、次から次へとどんどん造ることになる。これまで、歴史的にも「土石流災害」が発生したことのない赤倉沢では、堰堤は、このような工事手法で1年に一基のペースで12基も造られてしまった。しかも、工事を受注したのは10数年間継続して同じ業者であった。
 ちなみに、赤倉沢の堰堤工事の発注と管轄は林野庁であり、この農業用堰堤の発注と管轄は青森県である。どちらが「無駄金」を使っているかは明らかである。

 林道の両側沿いに、延々と里ではすでに影を潜めたカタクリが咲き乱れ、沢に下る両尾根斜面には自生のオオヤマザクラが咲き乱れ、今や満開であった。その背後と上部のブナの新緑とあいまって、濃淡の桃色花の何という鮮やかさと艶やかさだろうか。

 足許からは、えもいわれない芳香が漂う。それはかなりの距離があっても五月の微風に乗って漂うのだ。背丈が低く、しかも小さく目立たない花、それらはその存在をまずは「香り」で教えてくれる。
 一つはスミレサイシン、一つはアオイスミレである。これらは、道の法面(のりめん)など、日当たりのいいところに生える。しかも、法面から雪が消えると直ぐに咲きだす。だから、道に雪があっても、その直ぐ近くで咲いている。
 残雪期に濃霧で道を失っても、この「芳香」を辿ると道を探すことが可能なのである。この香りはまさに「ヴァイオレット」の何ものでもない。春は香りをも運んで来てくれるすばらしい季節である。
ツノハシバミの雄花は地味だが濃紅の雌花は小さいが、それ故に印象は強烈である。

 一つ一つの花について書いていったらきりがないので、実際出会ったものだけを次に書き記そう。
・ナガハシスミレ(テングスミレ)・タチツボスミレ・オオタチツボスミレ・キジムシロ・エンレイソウ・カタクリ・キクザキイチリンソウ・ウスバサイシン・フユワラビ
・キブシ・オオヤマザクラ・ツノハシバミ・オオバクロモジ・ウワミズザクラ・ヤドリギ・バッコヤナギ・ハンノキ・タムシバ・マルバマンサク・アブラチャン・オオカメノキ
 ほかにも沢山あったが思い出せないのでこれくらいにしておこう。

 野鳥にも沢山出会ったし、鳴き声を聴いた。まずは、ヤブサメである。林道沿いは藪が濃い。その縁ではウグイス、コルリだ。林の木々にはヒガラ、ヤマガラ、コガラ、シジュウカラ、キビタキなどがさえずっていた…。
 
 ところで、またまた天気の話しで恐縮だが13日はどうだろう。参考までに調べてみたら、「曇り時々雨、降水確率は70%、気温は19℃」であるという。今度は参考にしながら自分で「予想して」ことに望むつもりだ。